優一郎黒野
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昔からキラキラしたものが好きだった。
特に好きなのは宝石の類い。子どもの頃はおもちゃの宝石だけでは満足できなくて、お母さんのネックレスや指輪を勝手に持ち出しては「あんたにはまだ早いわよ」とよく怒られたっけ。
事実その通りで、キラキラ光る宝石は子どものお小遣い程度で手に入るものではなく、また大人もホイホイ買い与えてくれるものでもなかった。
でも子どもの好奇心と行動力というものは、時に恐ろしいもので。何としても宝石が欲しかった私は、買えないのならば自分で作ってしまえばいいのだ、という強引な結論に辿り着いた。
今になって思えば、あまりに幼稚で未熟で短絡的な思考だ。でも、私は成し遂げた。
ーー遺骨や遺灰からダイヤモンドを作る。
大災害で失われ、文献資料もほとんど残っていなかった技術を、私は復活させることに成功したのだ。もちろん独力ではなく、灰島重工という大企業の後ろ盾を得て。
その後、遺灰ダイヤモンド作りは灰島重工の一ビジネスとして立ち上げられた。キャッチコピーは確か「大切な人を、ずっと身近に」とかなんとか。
これが大々的に宣伝され、以来焔ビトになり鎮魂された人間の灰を掻き集めて持ち込む客が後を絶たなくなった。
なんだ、みんな言わないだけで宝石が好きなんじゃないか。
そう同僚に話したらお前と一緒にするなと呆れられたけれど、正直何が違うのかよくわからなかった。宝石じゃなければ欲しがる人も減るだろうに。
どうやらあのキャッチコピーの通り、故人を身近に感じていたい人は思いのほか多いらしい。なら専用のペンダントに遺灰を入れて持ち歩けばいいのに。遺灰ダイヤモンド作りは時間もお金もかかるし、昔からある遺灰ペンダントのほうがずっと安上がりだ。
「まあ、私は毎日のようにキラキラを拝めるからありがたいけど」
うっとりとピンセットで小さなダイヤモンドを摘み上げながらそう呟く。うん、良い出来だ。
専用の小箱に入れ、その後のことは別のスタッフに任せる。
ひと息ついてから次の仕事に取り掛かろうとすれば、「ひぃっ」とスタッフの悲鳴が聞こえてきた。何かと思って振り返ればそこにいたのは逃げ出すように部屋から出ていくスタッフと、見覚えのあるスーツ姿。
「なんだ、黒野くんか」
「なんだと失礼だな」
死神と恐れられる彼は、私にとって大事なビジネスパートナーだ。彼の出す大量の灰があったからこそ遺灰ダイヤモンドの安定供給が実現したと言ってもいい。
世の人々は、故人と彼の灰の混じった遺灰ダイヤモンドを、それはそれは大事にしているわけだけど。キラキラに隠された真実を知る必要はないだろう。
「今日の分、持ってきた」
「お、ありがとね」
黒野くんがずいと差し出してきた袋を受け取る。中身は灰だけどずしりと重い。今日も存分に働いてきたようだ。
彼の仕事内容を知っているのに良心が痛まないあたり、私も『死神』と同類なのだろう。この話を過去に黒野くん本人に話したことを、私は後悔している。
「帰らないの?」
「ああ」
「まだ何か用?」
「俺と結婚してくれ」
……またこれだ。
私は溜め息とともに頭を抱えた。
何が彼の琴線に触れたのか、あの話をして以来黒野くんは会うたびにプロポーズをしてくるようになった。付き合ってすらいないのにどうしてそうなるのか。
黒野くんは大事なビジネスパートナーに違いないけれど、正直それ以上でもそれ以下でもない。
懇切丁寧にそう伝えてきたけれど、まるで伝わらないので最近は返しも適当になってきている。
「お断りします。私はキラキラ……じゃなかった。仕事一筋で生きていくって決めてるの」
「とびきりキラキラな指輪を用意してもか」
「くっ、それでもだめ」
「俺と結婚したら、俺が死んだ後の灰全てを使って好きなようにダイヤを作っていいとしても?」
「それは……」
私にとってあまりにも魅力的な提案すぎる。黒野くんの残した灰は一体どんなキラキラになるだろう。気になる。気になるけども……。
「それでもだめ」
うっかり頷きそうになるのを何とか堪えて首を横に振る。
これからも私がキラキラに囲まれて生きるためには、黒野くんがいてくれないと困る。それにーー。
「……結婚する前から死んだ後のこととか考えないでよ」
黒野くんの耳に届かないほどの小さな呟きは、ビジネスパートナーを失うことへの寂しさか、それとも別の何かなのか。今の私には判断できなかった。
特に好きなのは宝石の類い。子どもの頃はおもちゃの宝石だけでは満足できなくて、お母さんのネックレスや指輪を勝手に持ち出しては「あんたにはまだ早いわよ」とよく怒られたっけ。
事実その通りで、キラキラ光る宝石は子どものお小遣い程度で手に入るものではなく、また大人もホイホイ買い与えてくれるものでもなかった。
でも子どもの好奇心と行動力というものは、時に恐ろしいもので。何としても宝石が欲しかった私は、買えないのならば自分で作ってしまえばいいのだ、という強引な結論に辿り着いた。
今になって思えば、あまりに幼稚で未熟で短絡的な思考だ。でも、私は成し遂げた。
ーー遺骨や遺灰からダイヤモンドを作る。
大災害で失われ、文献資料もほとんど残っていなかった技術を、私は復活させることに成功したのだ。もちろん独力ではなく、灰島重工という大企業の後ろ盾を得て。
その後、遺灰ダイヤモンド作りは灰島重工の一ビジネスとして立ち上げられた。キャッチコピーは確か「大切な人を、ずっと身近に」とかなんとか。
これが大々的に宣伝され、以来焔ビトになり鎮魂された人間の灰を掻き集めて持ち込む客が後を絶たなくなった。
なんだ、みんな言わないだけで宝石が好きなんじゃないか。
そう同僚に話したらお前と一緒にするなと呆れられたけれど、正直何が違うのかよくわからなかった。宝石じゃなければ欲しがる人も減るだろうに。
どうやらあのキャッチコピーの通り、故人を身近に感じていたい人は思いのほか多いらしい。なら専用のペンダントに遺灰を入れて持ち歩けばいいのに。遺灰ダイヤモンド作りは時間もお金もかかるし、昔からある遺灰ペンダントのほうがずっと安上がりだ。
「まあ、私は毎日のようにキラキラを拝めるからありがたいけど」
うっとりとピンセットで小さなダイヤモンドを摘み上げながらそう呟く。うん、良い出来だ。
専用の小箱に入れ、その後のことは別のスタッフに任せる。
ひと息ついてから次の仕事に取り掛かろうとすれば、「ひぃっ」とスタッフの悲鳴が聞こえてきた。何かと思って振り返ればそこにいたのは逃げ出すように部屋から出ていくスタッフと、見覚えのあるスーツ姿。
「なんだ、黒野くんか」
「なんだと失礼だな」
死神と恐れられる彼は、私にとって大事なビジネスパートナーだ。彼の出す大量の灰があったからこそ遺灰ダイヤモンドの安定供給が実現したと言ってもいい。
世の人々は、故人と彼の灰の混じった遺灰ダイヤモンドを、それはそれは大事にしているわけだけど。キラキラに隠された真実を知る必要はないだろう。
「今日の分、持ってきた」
「お、ありがとね」
黒野くんがずいと差し出してきた袋を受け取る。中身は灰だけどずしりと重い。今日も存分に働いてきたようだ。
彼の仕事内容を知っているのに良心が痛まないあたり、私も『死神』と同類なのだろう。この話を過去に黒野くん本人に話したことを、私は後悔している。
「帰らないの?」
「ああ」
「まだ何か用?」
「俺と結婚してくれ」
……またこれだ。
私は溜め息とともに頭を抱えた。
何が彼の琴線に触れたのか、あの話をして以来黒野くんは会うたびにプロポーズをしてくるようになった。付き合ってすらいないのにどうしてそうなるのか。
黒野くんは大事なビジネスパートナーに違いないけれど、正直それ以上でもそれ以下でもない。
懇切丁寧にそう伝えてきたけれど、まるで伝わらないので最近は返しも適当になってきている。
「お断りします。私はキラキラ……じゃなかった。仕事一筋で生きていくって決めてるの」
「とびきりキラキラな指輪を用意してもか」
「くっ、それでもだめ」
「俺と結婚したら、俺が死んだ後の灰全てを使って好きなようにダイヤを作っていいとしても?」
「それは……」
私にとってあまりにも魅力的な提案すぎる。黒野くんの残した灰は一体どんなキラキラになるだろう。気になる。気になるけども……。
「それでもだめ」
うっかり頷きそうになるのを何とか堪えて首を横に振る。
これからも私がキラキラに囲まれて生きるためには、黒野くんがいてくれないと困る。それにーー。
「……結婚する前から死んだ後のこととか考えないでよ」
黒野くんの耳に届かないほどの小さな呟きは、ビジネスパートナーを失うことへの寂しさか、それとも別の何かなのか。今の私には判断できなかった。
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