優一郎黒野
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今日九月六日は黒野先輩の誕生日だ。何で覚えてるかって? そんなの入社一年目の時に何もせずにいたら、散々な目に遭ったからだ。あれは酷かった。思い出すだけで涙が出そう。
ーーともあれ、私は入社してから今日に至るまで、毎年欠かさず黒野先輩の誕生日を祝い続けている。今年ももちろん色々と準備してきた。
有名パティスリーのやわらかムースケーキに、新調したいと言っていたエプロン、開発部に出向いて作ってもらった煤汚れの落ちやすいワイシャツと包帯に、最近能力に目覚め近々施設に来る予定の子どもたちのリスト等々。
我ながらよく計画し、よく準備したと褒めてやりたい。これだけあれば黒野先輩も満足するだろう。
しかし、私の見立ては甘かったようだ。
なんと黒野先輩は私の用意したプレゼントを悉く気に入ってくれなかったのだ。「やり直せ」言いながらプレゼントはちゃっかり懐に入れてるし。
はあ、これでテイク何度目だろう。そもそも誕生日ってやり直すものだっけ。
今年で入社四年目。黒野先輩の誕生日を祝うのも四度目のはずなのに、もう何十回と「おめでとうございます」を言わされている。どうして。
「誕生日おめでとうございます」
再度、あらかじめ用意しておいたプレゼントの一つを渡す。けれど黒野先輩の反応は芳しくなかった。「駄目だな。もう一度やり直せ」一体何がだめなのか、逆に何ならいいのか。いい加減はっきり言ってほしい。黒野先輩が何を気にいるかなんて、私にはわかりっこないんだから。
そしてとうとう準備しておいたプレゼントも底をついてしまった。でもこのまま何もしない訳にはいかない。何もしなければ……入社一年目の二の舞になってしまう。それだけは、絶対に嫌だ。
すぐに用意できそうなものといえばコンビニスイーツだろうか。柔らかいものなら気に入ってくれるかもしれない。新作、それでいて黒野先輩が食べたことのないようなものであればなお良し。ダッシュで行けば昼休憩中に戻って来れるかも。
しかし私の意気込みとは裏腹に、身体の疲労はピークに達していたらしい。ここ数か月仕事と黒野先輩のプレゼント集めに奔走していたのが仇になったのか、立ち上がった瞬間にくらりと眩暈に襲われた。
あ、倒れる。
力が抜けて、身体が後ろに傾く。けれど受け身を取れなかった割に痛みはなかった。倒れた先が床ではなく、黒野先輩だったのが不幸中の幸いか。いや床のがマシだったかもしれない。
「す、すみません。すぐ退きます」
私はさぁっと血の気が引くのを感じながら、背後の黒野先輩からすぐさま離れようとした。けと、おかしい。動けない。
「あの、黒野先輩?」
先輩の片腕が私のお腹をがっちりホールドしていた。そしてもう片方の手は私の二の腕に。もにもにと贅肉を揉んでいる。……いや、なんで? 訳がわからず身を捩ると、諌めるようにホールドがきつくなった。
「これでいい」
「ぐっ、くるし……何がですか?」
「誕生日プレゼント」
「へ? どれですか?」
先輩の手がぐにっと強く二の腕を摘んで、私は思わず悲鳴を上げた。それがさらに先輩の機嫌を良くしてしまったようで、その日は暇さえあればデスクワークで育ちに育ったたぷたぷの二の腕をやわく、強く、揉まれ続けることとなった。
二の腕なら、まぁいっか。
何なら安いくらい、なんてこの時は思ったけども。黒野先輩がそれで満足するはずもなく、年々揉む範囲が増えて泣き喚く羽目になることを、まだ未来の私しか知らない。
ーーともあれ、私は入社してから今日に至るまで、毎年欠かさず黒野先輩の誕生日を祝い続けている。今年ももちろん色々と準備してきた。
有名パティスリーのやわらかムースケーキに、新調したいと言っていたエプロン、開発部に出向いて作ってもらった煤汚れの落ちやすいワイシャツと包帯に、最近能力に目覚め近々施設に来る予定の子どもたちのリスト等々。
我ながらよく計画し、よく準備したと褒めてやりたい。これだけあれば黒野先輩も満足するだろう。
しかし、私の見立ては甘かったようだ。
なんと黒野先輩は私の用意したプレゼントを悉く気に入ってくれなかったのだ。「やり直せ」言いながらプレゼントはちゃっかり懐に入れてるし。
はあ、これでテイク何度目だろう。そもそも誕生日ってやり直すものだっけ。
今年で入社四年目。黒野先輩の誕生日を祝うのも四度目のはずなのに、もう何十回と「おめでとうございます」を言わされている。どうして。
「誕生日おめでとうございます」
再度、あらかじめ用意しておいたプレゼントの一つを渡す。けれど黒野先輩の反応は芳しくなかった。「駄目だな。もう一度やり直せ」一体何がだめなのか、逆に何ならいいのか。いい加減はっきり言ってほしい。黒野先輩が何を気にいるかなんて、私にはわかりっこないんだから。
そしてとうとう準備しておいたプレゼントも底をついてしまった。でもこのまま何もしない訳にはいかない。何もしなければ……入社一年目の二の舞になってしまう。それだけは、絶対に嫌だ。
すぐに用意できそうなものといえばコンビニスイーツだろうか。柔らかいものなら気に入ってくれるかもしれない。新作、それでいて黒野先輩が食べたことのないようなものであればなお良し。ダッシュで行けば昼休憩中に戻って来れるかも。
しかし私の意気込みとは裏腹に、身体の疲労はピークに達していたらしい。ここ数か月仕事と黒野先輩のプレゼント集めに奔走していたのが仇になったのか、立ち上がった瞬間にくらりと眩暈に襲われた。
あ、倒れる。
力が抜けて、身体が後ろに傾く。けれど受け身を取れなかった割に痛みはなかった。倒れた先が床ではなく、黒野先輩だったのが不幸中の幸いか。いや床のがマシだったかもしれない。
「す、すみません。すぐ退きます」
私はさぁっと血の気が引くのを感じながら、背後の黒野先輩からすぐさま離れようとした。けと、おかしい。動けない。
「あの、黒野先輩?」
先輩の片腕が私のお腹をがっちりホールドしていた。そしてもう片方の手は私の二の腕に。もにもにと贅肉を揉んでいる。……いや、なんで? 訳がわからず身を捩ると、諌めるようにホールドがきつくなった。
「これでいい」
「ぐっ、くるし……何がですか?」
「誕生日プレゼント」
「へ? どれですか?」
先輩の手がぐにっと強く二の腕を摘んで、私は思わず悲鳴を上げた。それがさらに先輩の機嫌を良くしてしまったようで、その日は暇さえあればデスクワークで育ちに育ったたぷたぷの二の腕をやわく、強く、揉まれ続けることとなった。
二の腕なら、まぁいっか。
何なら安いくらい、なんてこの時は思ったけども。黒野先輩がそれで満足するはずもなく、年々揉む範囲が増えて泣き喚く羽目になることを、まだ未来の私しか知らない。