優一郎黒野
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私は時々、鼻歌を歌っているらしい。
それを指摘したのは黒野くん……じゃなくて(今は私も黒野だった)優一郎くんだ。
一緒に住むようになったある日、突然「何の歌だ」と訊かれて、「うそ、歌ってた⁈」と。そこで初めて、自分が無意識に色んな歌を口ずさんでいることを知った。
うう、恥ずかしい。穴があったら入りたい。と当時は両手で顔を覆ったものだったが、それもすぐに優一郎くんに引っぺがされた。嬉々とした表情を浮かべる彼は、きっと私の弱った顔を見たかったのだと思う。そして羞恥に赤く染まる私をじっくり眺めて、トドメを刺すように「さっきの、もう一回歌ってくれ」とアンコールしてくるのだ。
もう絶対に優一郎くんの前で歌うものかと心に誓い、けれど自分でも気付いてなかった癖だ。恐らく実家にいた頃から無意識に歌っていて、家族の誰も指摘してくれないまま今に至っている。長年体に染み付いたその癖はそう簡単に直らない。それを身をもって知るのにそう時間はかからなかった。
*
休日のゆったりとした午後のひととき。優一郎くんとソファに並んで座って、テーブルにはコーヒーとチョコレート。冬限定のチョコレートをひとつ口に放り込んでから、はたと止まる。
「私、今歌ってた?」
「ああ。歌ってたな」
またやってしまった。今回は指摘される前に自分で気付けたけど、やっぱり恥ずかしい。
きっと流し見でつけていたテレビとこのチョコレートのせいだ。ちょうどこのチョコのCMが流れたからつられるように歌ってしまった。
恥ずかしさと自分の学習能力のなさに居たたまれなくなって両手で顔を覆うと、例のごとく優一郎くんがそれを許してくれなかった。今日もこの前みたいに彼の気が済むまで見られるに違いない。
けれど私をよく見るために近付いてきた彼の顔は途中で止まらなかった。少しかさついた彼の唇が私のに触れ、食むように何度も何度もキスされる。急にどうしたのだろう。そんな雰囲気ではなかったはずなのに。
息苦しくなって酸素を求めた口に舌をねじ込まれ、口づけがより深くなる。ただそれも貪るというよりは、確かめるみたいな。いつもより執拗でゆっくりと長い口づけに頭が回らなくなっていく。
ようやく解放された頃には食べたチョコレートの味はすっかりなくなっていて、優一郎くんは肩で息をする私を眺めながら「どうだった」と首を傾げた。
どうって、キスの感想を求められても。何て答えていいのか言葉にできずにいると、優一郎くんはもう一度私に軽いキスをした。
「雪みたいだったか?」
「雪?」
「冬のキスは雪みたいな口どけなんだろう」
その瞬間に頭の中にさっき歌っていた歌が流れ出す。そういえばそんな歌詞だったっけ。優一郎くんはそれを確かめたくて急にこんなことを……。
「うーん、雪ではないかなぁ」
何が正解かはわからないけれど、少なくともCMみたいに降る雪が手のひらでじわりと溶ける、なんて穏やかなものじゃなかったのは確かだ。
それを指摘したのは黒野くん……じゃなくて(今は私も黒野だった)優一郎くんだ。
一緒に住むようになったある日、突然「何の歌だ」と訊かれて、「うそ、歌ってた⁈」と。そこで初めて、自分が無意識に色んな歌を口ずさんでいることを知った。
うう、恥ずかしい。穴があったら入りたい。と当時は両手で顔を覆ったものだったが、それもすぐに優一郎くんに引っぺがされた。嬉々とした表情を浮かべる彼は、きっと私の弱った顔を見たかったのだと思う。そして羞恥に赤く染まる私をじっくり眺めて、トドメを刺すように「さっきの、もう一回歌ってくれ」とアンコールしてくるのだ。
もう絶対に優一郎くんの前で歌うものかと心に誓い、けれど自分でも気付いてなかった癖だ。恐らく実家にいた頃から無意識に歌っていて、家族の誰も指摘してくれないまま今に至っている。長年体に染み付いたその癖はそう簡単に直らない。それを身をもって知るのにそう時間はかからなかった。
*
休日のゆったりとした午後のひととき。優一郎くんとソファに並んで座って、テーブルにはコーヒーとチョコレート。冬限定のチョコレートをひとつ口に放り込んでから、はたと止まる。
「私、今歌ってた?」
「ああ。歌ってたな」
またやってしまった。今回は指摘される前に自分で気付けたけど、やっぱり恥ずかしい。
きっと流し見でつけていたテレビとこのチョコレートのせいだ。ちょうどこのチョコのCMが流れたからつられるように歌ってしまった。
恥ずかしさと自分の学習能力のなさに居たたまれなくなって両手で顔を覆うと、例のごとく優一郎くんがそれを許してくれなかった。今日もこの前みたいに彼の気が済むまで見られるに違いない。
けれど私をよく見るために近付いてきた彼の顔は途中で止まらなかった。少しかさついた彼の唇が私のに触れ、食むように何度も何度もキスされる。急にどうしたのだろう。そんな雰囲気ではなかったはずなのに。
息苦しくなって酸素を求めた口に舌をねじ込まれ、口づけがより深くなる。ただそれも貪るというよりは、確かめるみたいな。いつもより執拗でゆっくりと長い口づけに頭が回らなくなっていく。
ようやく解放された頃には食べたチョコレートの味はすっかりなくなっていて、優一郎くんは肩で息をする私を眺めながら「どうだった」と首を傾げた。
どうって、キスの感想を求められても。何て答えていいのか言葉にできずにいると、優一郎くんはもう一度私に軽いキスをした。
「雪みたいだったか?」
「雪?」
「冬のキスは雪みたいな口どけなんだろう」
その瞬間に頭の中にさっき歌っていた歌が流れ出す。そういえばそんな歌詞だったっけ。優一郎くんはそれを確かめたくて急にこんなことを……。
「うーん、雪ではないかなぁ」
何が正解かはわからないけれど、少なくともCMみたいに降る雪が手のひらでじわりと溶ける、なんて穏やかなものじゃなかったのは確かだ。