ワンピース
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いつだって夢に見るのはあたたかな記憶。大好きな兄ちゃんがおれを呼んで、抱き上げて、頬ずりをしてくれて。けれどその声も、ぬくもりももう朧げで、確かめようと手を伸ばしたところで決まって目が覚める。いつものことだった。
「ベーポッ!」
とすん、と軽い衝撃が来て、顔を上げる。
「何だよもー、せっかく良い気持ちで寝てたのに」
本当はとっくに起きていた。けど、わざとらしく目を擦って上体を起こすと、俺のお腹に飛び乗ってきた彼女は「ごめんごめん」と少しも悪びれず笑って言った。同じハートの海賊団のクルーである彼女は、おれの眠りを妨げる常習犯。キャプテンがおれと一緒に寝てない時を見計らって、度々こうして突撃してくる。といっても、体重の軽い彼女の突撃なんて正直屁でもない。なんか当たったな、くらいで文句は言えど、二度寝に突入することがほとんどだった。
久々の海上、天気は晴れ。そよそよと吹く潮風は心地よく、陽光はやわらかい。まさに絶好のお昼寝日和で、すぐに眠気が戻ってくる。
ふわあ、と欠伸をすると、彼女の手が頬を撫でた。
「ベポ、寝るの?」
「うん、まだ眠いし」
「じゃあ私も寝よっかな」
よいしょ、と彼女が上のほうへと上がってくる。そのまま頬ずりをされて、寝るんじゃなかったの? と目を閉じたまま訊けば、これやってから! と元気な返事が返ってきた。くすぐったくて、おれが寝れないんだけど。
「ふふ、ベポはお日様の匂いがするね」
「なんだよそれ」
「いい匂いってこと」
太陽に匂いはないのに、変なことを言う。でも不思議と嫌な感じはしなくて、おれはふーんとだけ返した。こっそりひくつかせた鼻には、潮の匂いと彼女の花みたいな匂いがした。彼女の言うお日様の匂いとやらは、やっぱりよくわからない。
「ねえ、まだやるのー?」
「もうちょっと、もうちょっとだけ」
これは長くなりそうだ。彼女のもうちょっと、が言葉通りでないことをおれは知っている。だって、ふわふわしたものが好き、という彼女の欲は底知れないのだ。この前だって急に「キャプテンの帽子を触ってみたい」とか恐ろしいことを言い出して、ペンギンとシャチ、おれの三人で止めたけど聞かずに飛び込んで行っちゃったし。あの時は、読書の邪魔をされて怒ったキャプテンに綺麗に首を落とされて帰ってきたけど、反省はこれっぽっちもしてなかった。それどころか隙あらばリベンジしてやると意気込んでいたものだから、ペンギンに追い説教までされていて。何がそんなに彼女を突き動かすのか、おれにはさっぱりわからないかった。
「なんでそんなにしたいんだよ」
「頬ずりのこと? ベポだってキャプテンによくしてるじゃん」
「それは、そうだけど」
確かにキャプテンにはよく頬ずりをする。でもそれはキャプテンがふらっとどこかに行っちゃうからで、久々に帰ってきたら嬉しくなって、身体が勝手に動いちゃうからで。でもなんで頬ずりなんだろう。ぐるぐると頭で考えていると、彼女が「私は……」と言葉を続けた。
「好きだから、かな」
「好き?」
「うん。こう好きって気持ちが溢れちゃって、全身で伝えたくなるっていうか」
「……そっか」
彼女のその言葉に妙に納得してしまった。おれもそうだ。おれがキャプテンに頬ずりしたくなるのは、キャプテンのことが大好きだから。
兄ちゃんもそうだった? だからいっぱいしてくれた?
遠い記憶の中にしかいない兄ちゃんに、訊ねる術はない。でも、きっとそうだ。兄ちゃんはおれにいっぱい「好き」をくれていた。愛おしそうに頬ずりをしてくれた。なんで、忘れてたんだろう。
身体を起こすと、俺の上に乗っていた彼女が驚いて小さく悲鳴を上げた。落ちそうになるのを片手で抱えて、頬ずりをする。
「ちょ、ベポ。どうしたの? くすぐったいよ」
けらけらと笑う彼女を無視してぐりぐり顔を擦り付けていると、「何してんだお前ら」と呆れたような声が聞こえてきた。
「キャプテン!」
すぐ後ろにペンギンとシャチもいる。おれは立ち上がって、三人を思い切り抱き締めた。ぐえ、と蛙が潰れたような悲鳴も聞こえてきたけど、多分大丈夫だ。三人まとめて遠慮なく頬ずりをする。
「や、やめろ痛ェ」
「ぐ、力加減なんとかしろ」
ペンギンとシャチがギブギブと呻いている。でも止めない。止めてやらない。
「どうした、ベポ?」
キャプテンが不思議そうにおれを見上げる。おれは笑って、いつか兄ちゃんがしてくれたようにもう一度頬ずりをした。
「気にしないで! おれがしたいだけだから」
おれはかつて兄ちゃんがしてくれたように、キャプテンに、クルーのみんなに、いっぱい好きを伝えたいのだ。
「ベーポッ!」
とすん、と軽い衝撃が来て、顔を上げる。
「何だよもー、せっかく良い気持ちで寝てたのに」
本当はとっくに起きていた。けど、わざとらしく目を擦って上体を起こすと、俺のお腹に飛び乗ってきた彼女は「ごめんごめん」と少しも悪びれず笑って言った。同じハートの海賊団のクルーである彼女は、おれの眠りを妨げる常習犯。キャプテンがおれと一緒に寝てない時を見計らって、度々こうして突撃してくる。といっても、体重の軽い彼女の突撃なんて正直屁でもない。なんか当たったな、くらいで文句は言えど、二度寝に突入することがほとんどだった。
久々の海上、天気は晴れ。そよそよと吹く潮風は心地よく、陽光はやわらかい。まさに絶好のお昼寝日和で、すぐに眠気が戻ってくる。
ふわあ、と欠伸をすると、彼女の手が頬を撫でた。
「ベポ、寝るの?」
「うん、まだ眠いし」
「じゃあ私も寝よっかな」
よいしょ、と彼女が上のほうへと上がってくる。そのまま頬ずりをされて、寝るんじゃなかったの? と目を閉じたまま訊けば、これやってから! と元気な返事が返ってきた。くすぐったくて、おれが寝れないんだけど。
「ふふ、ベポはお日様の匂いがするね」
「なんだよそれ」
「いい匂いってこと」
太陽に匂いはないのに、変なことを言う。でも不思議と嫌な感じはしなくて、おれはふーんとだけ返した。こっそりひくつかせた鼻には、潮の匂いと彼女の花みたいな匂いがした。彼女の言うお日様の匂いとやらは、やっぱりよくわからない。
「ねえ、まだやるのー?」
「もうちょっと、もうちょっとだけ」
これは長くなりそうだ。彼女のもうちょっと、が言葉通りでないことをおれは知っている。だって、ふわふわしたものが好き、という彼女の欲は底知れないのだ。この前だって急に「キャプテンの帽子を触ってみたい」とか恐ろしいことを言い出して、ペンギンとシャチ、おれの三人で止めたけど聞かずに飛び込んで行っちゃったし。あの時は、読書の邪魔をされて怒ったキャプテンに綺麗に首を落とされて帰ってきたけど、反省はこれっぽっちもしてなかった。それどころか隙あらばリベンジしてやると意気込んでいたものだから、ペンギンに追い説教までされていて。何がそんなに彼女を突き動かすのか、おれにはさっぱりわからないかった。
「なんでそんなにしたいんだよ」
「頬ずりのこと? ベポだってキャプテンによくしてるじゃん」
「それは、そうだけど」
確かにキャプテンにはよく頬ずりをする。でもそれはキャプテンがふらっとどこかに行っちゃうからで、久々に帰ってきたら嬉しくなって、身体が勝手に動いちゃうからで。でもなんで頬ずりなんだろう。ぐるぐると頭で考えていると、彼女が「私は……」と言葉を続けた。
「好きだから、かな」
「好き?」
「うん。こう好きって気持ちが溢れちゃって、全身で伝えたくなるっていうか」
「……そっか」
彼女のその言葉に妙に納得してしまった。おれもそうだ。おれがキャプテンに頬ずりしたくなるのは、キャプテンのことが大好きだから。
兄ちゃんもそうだった? だからいっぱいしてくれた?
遠い記憶の中にしかいない兄ちゃんに、訊ねる術はない。でも、きっとそうだ。兄ちゃんはおれにいっぱい「好き」をくれていた。愛おしそうに頬ずりをしてくれた。なんで、忘れてたんだろう。
身体を起こすと、俺の上に乗っていた彼女が驚いて小さく悲鳴を上げた。落ちそうになるのを片手で抱えて、頬ずりをする。
「ちょ、ベポ。どうしたの? くすぐったいよ」
けらけらと笑う彼女を無視してぐりぐり顔を擦り付けていると、「何してんだお前ら」と呆れたような声が聞こえてきた。
「キャプテン!」
すぐ後ろにペンギンとシャチもいる。おれは立ち上がって、三人を思い切り抱き締めた。ぐえ、と蛙が潰れたような悲鳴も聞こえてきたけど、多分大丈夫だ。三人まとめて遠慮なく頬ずりをする。
「や、やめろ痛ェ」
「ぐ、力加減なんとかしろ」
ペンギンとシャチがギブギブと呻いている。でも止めない。止めてやらない。
「どうした、ベポ?」
キャプテンが不思議そうにおれを見上げる。おれは笑って、いつか兄ちゃんがしてくれたようにもう一度頬ずりをした。
「気にしないで! おれがしたいだけだから」
おれはかつて兄ちゃんがしてくれたように、キャプテンに、クルーのみんなに、いっぱい好きを伝えたいのだ。
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