寺島雷蔵
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「おはよー、寺島」
朝、大学に行く前に開発室に寄ったら、そこにはヨレヨレの同僚がいた。彼女の目の下にはうっすらと隈があり、徹夜したであろうことは一目瞭然。けれどそれをあえて言わないのは、開発部あるあるだからだ。
「おはよ。今から帰んの?」
「いや、仮眠室行こうかなって」
「大学は?」
「んー、午後から行く。寺島は?」
「俺もそのつもり」
「じゃあ三時間後に起こしてよ」
「は? やだよ」
「いいじゃん別に。寺島のケチー」
ぶぅと拗ねたように唇を尖らせた彼女が俺の腹に手を伸ばす。そのまま腹肉をむにむにと揉まれ、「やーん、えっち」と抑揚のない声で言えば、堪えきれず吹き出した彼女がその場にしゃがみ込んだ。
「ちょ、笑わせないでよ」
「俺は心のままに言っただけだよ」
「すっごい棒読みだったんですけど」
ひーひー言いながら立ち上がった彼女は、満足したのか「寝るわ!」と言い残して去っていった。途中で思い出したように「三時間後ねー!」と付け加えて。
「おい。なんだよあれは」
デスクにつくなりまた声をかけられて、今日は朝からよく話しかけられる日だななんてぼんやり考えていると、「聞いてんのか」と苛立たしげな声が飛んできた。
「あれって?」
何のことかと訊ねれば、声の主エネドラッドはとぼけんじゃねえとつんと俺の腹を脚で突ついてくる。
「あのクソ女に腹揉まれてただろ。玄界じゃ普通のことなのか?」
「あー、あれね」
どうやらエネドラッドはさっきの彼女とのやりとりを目撃していたらしい。こちらの映画に興味を持ったエネドラッドは気になることがあればすぐあれはどういうことだと訊いてくるようになったけど、俺たちの何でもないやりとりもその目には奇異なものに映ったのだろう。
しかし、どう説明したものか。俺と彼女は同い年で、開発部の同僚でそれなりに付き合いも長く、諏訪たちも交えてふざけたことも……まあまあやってきた。彼女が俺の腹肉を摘まむのも、摘まれた俺がふざけた返しをするのも、友達同士の軽いノリ。……だけで済ますには、少々回数が多い気もするけれど。顔合わせるたびに揉んでくからな、あいつ。そう、言うなれば、
「仲良いやつ同士の挨拶、的な……?」
俺の答えにエネドラッドが大きく目を開く。それからゆっくりと俺の腹から後ずさった。
「……マジかよ、この前観た映画のキスシーンの時もそう言ってたじゃねーか。玄界の猿どもの考えることはわからねえな」
まさかそこまで引かれるとは思わなかった。言い方を間違えたかもしれない。でもそれ以外にしっくりくる言葉が見つからないのだから仕方がない。だって俺と彼女のふざけたやりとりは、もはや挨拶と同じくらい定着してしまっているのだから。
朝、大学に行く前に開発室に寄ったら、そこにはヨレヨレの同僚がいた。彼女の目の下にはうっすらと隈があり、徹夜したであろうことは一目瞭然。けれどそれをあえて言わないのは、開発部あるあるだからだ。
「おはよ。今から帰んの?」
「いや、仮眠室行こうかなって」
「大学は?」
「んー、午後から行く。寺島は?」
「俺もそのつもり」
「じゃあ三時間後に起こしてよ」
「は? やだよ」
「いいじゃん別に。寺島のケチー」
ぶぅと拗ねたように唇を尖らせた彼女が俺の腹に手を伸ばす。そのまま腹肉をむにむにと揉まれ、「やーん、えっち」と抑揚のない声で言えば、堪えきれず吹き出した彼女がその場にしゃがみ込んだ。
「ちょ、笑わせないでよ」
「俺は心のままに言っただけだよ」
「すっごい棒読みだったんですけど」
ひーひー言いながら立ち上がった彼女は、満足したのか「寝るわ!」と言い残して去っていった。途中で思い出したように「三時間後ねー!」と付け加えて。
「おい。なんだよあれは」
デスクにつくなりまた声をかけられて、今日は朝からよく話しかけられる日だななんてぼんやり考えていると、「聞いてんのか」と苛立たしげな声が飛んできた。
「あれって?」
何のことかと訊ねれば、声の主エネドラッドはとぼけんじゃねえとつんと俺の腹を脚で突ついてくる。
「あのクソ女に腹揉まれてただろ。玄界じゃ普通のことなのか?」
「あー、あれね」
どうやらエネドラッドはさっきの彼女とのやりとりを目撃していたらしい。こちらの映画に興味を持ったエネドラッドは気になることがあればすぐあれはどういうことだと訊いてくるようになったけど、俺たちの何でもないやりとりもその目には奇異なものに映ったのだろう。
しかし、どう説明したものか。俺と彼女は同い年で、開発部の同僚でそれなりに付き合いも長く、諏訪たちも交えてふざけたことも……まあまあやってきた。彼女が俺の腹肉を摘まむのも、摘まれた俺がふざけた返しをするのも、友達同士の軽いノリ。……だけで済ますには、少々回数が多い気もするけれど。顔合わせるたびに揉んでくからな、あいつ。そう、言うなれば、
「仲良いやつ同士の挨拶、的な……?」
俺の答えにエネドラッドが大きく目を開く。それからゆっくりと俺の腹から後ずさった。
「……マジかよ、この前観た映画のキスシーンの時もそう言ってたじゃねーか。玄界の猿どもの考えることはわからねえな」
まさかそこまで引かれるとは思わなかった。言い方を間違えたかもしれない。でもそれ以外にしっくりくる言葉が見つからないのだから仕方がない。だって俺と彼女のふざけたやりとりは、もはや挨拶と同じくらい定着してしまっているのだから。
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