辻新之助
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ねえ、辻ちゃん。私のこと、好き?」
ぽつりと呟くと、隣から「へっ?!」と酷く驚いた声が聞こえた。そのままじぃっと見つめ続ければ、その顔はみるみる内に真っ赤に染まっていく。
「えっと、その…………うん」
今にも消え入りそうな声で、隣の彼が小さく頷く。相変わらず目は合わない。でも、その言葉に嘘がないことは見ればわかるようになった。
私の彼氏でありながら、女子が苦手な辻ちゃん。付き合ってそれなりに経つけれど、彼はいまだに異性相手に余裕がない。私にはだいぶ慣れてくれたと思うけど、ほかの女子相手だと目を逸らしたまま会話するのが精一杯。そんな彼が演技をしたり嘘をついたりなんてできっこないのだ。
だからこそ、私は辻ちゃんの肯定を手放しで信じられる。好きと直接言われたわけではないけれど、彼も私と同じ気持ちなんだと嬉しくなってしまう。
「ふへへ」
「どうしたの?」
「んー、嬉しくて……じゃなかった! 大事なこと聞き忘れてた!」
はっとして向き直ると辻ちゃんは反射的に半歩後ずさった。
「ずっと聞きたかったんだけど、辻ちゃんはなんで私の告白OKしてくれたの?」
私が「好きです、付き合ってください!」というどストレートな告白をしたのは、一年ほど前のこと。
辻ちゃんは当時から見た目に反して反応がかわいいと女子の間で密かに話題になっていて、私は定期的にちょっかいをかけにいっていた一人だった。辻ちゃん的には嫌だったかもしれないけれど、何回見ても反応がかわいいのだから仕方ない。逃げられれば逃げられるほどいじめたくなって、真っ赤な顔を見れば胸の内に高揚感が広がって。
予想外だったのは、私の感情がそれだけにとどまらなかったことだ。辻ちゃんの反応はかわいい。もっと、ずっと、見ていたい。でもほかの女子に顔を赤くしているのを見るのは、なんだかすごくモヤモヤする。
かわいい顔も、声も、反応も、全部私に向けてほしい。辻ちゃんの全部を、独り占めしたい。
どうしたらーーと考えた私の行動は速かった。
辻ちゃんを呼び出し、その日のうちに告白したのだ。辻ちゃんは今までにないくらい顔を真っ赤にしていた。でも返事は「ごめん」の一言。理由は私のことをよく知らないのに付き合うのはよくないからとのことだった。その誠実さに、また好きになる。
「私、最近ハマってるドラマがあって……」
「え?」
「屋台で買うならイチゴ飴! あと、好きな色は青色全般」
「う、うん……」
「辻ちゃんも教えて!」
「へっ?」
「だってお互いのことをよく知らないからダメなんでしょ? だから知ってからまた告ろうと思って」
あの時の辻ちゃんはすっごくびっくりしてた。あれから告白しては振られを何度か繰り返して、「よろしくお願いします」って言われた時は信じられなくて「絶対ウソ!」って叫んじゃって。
最初は断るのが面倒になったのかとも思ったけれど、今ならそうじゃないとわかる。でもOKしてくれた理由は聞いたことがなかった。聞くのがちょっとこわかったのもある。
「何でって、すき……だから、だけど」
辻ちゃんがまごまごしながら言う。その言葉だけで充分嬉しい。でも、今日はもう少し踏み込みたい。
「どういうところが?」
「えっ」
「私の、どういうところが好き?」
じり、と辻ちゃんのほうへとにじり寄る。迫る私から逃げるように辻ちゃんは後ずさったけれど、後ろにあるベッドにぶつかってそれ以上は下がれない。ここが辻ちゃんの部屋でよかった。彼氏があわあわする姿を眺めながら、私はにんまり笑った。学校だったらきっと逃げられてたけど、ここなら逃げ場はない。
そっと辻ちゃんの太もも辺りに手を添えると、ぴくりと身体が震えた。
「顔? 性格? ね、教えて」
「っ、それは……」
追い詰められた彼から、今にも泣きそうな声が漏れる。それがどうしようもなくかわいくて、もっといじめたくなってしまう。
「辻ちゃん恐竜好きだよね。あ、もしかして私が恐竜っぽいからだったり?」
辻ちゃんの膝に乗り上げて、大きく口を開ける。見せつけるように人差し指でそれを広げれば、人よりも鋭い犬歯が顔を覗かせた。
チャームポイントとは言い難い、鋭い歯。垂れ目メイクをしても吊り上がってみえる目つきも私は好きじゃない。だって爬虫類みたいだし。かわいくないし。
でもこんな見た目でも、恐竜好きな辻ちゃんの目にとまったなら悪くない。
「そういうところも好き、だよ」
「ふぅん、そうなんだ」
「でも、それだけじゃなくて……っ?!」
辻ちゃんの身体がびくりと大きく揺れた。それからゆっくりと弛緩する。
「な、何して……」
「だって、辻ちゃんがかわいすぎるんだもん」
彼の肩口に埋めていた頭を起こし、つっと首筋を指でなぞる。ふるりと震える白い肌にうっすらと浮かぶ赤。それはキスマークなんてかわいらしいものではなく、独占欲丸出しの歯形だった。
「よかったね、辻ちゃん。私が本物の恐竜だったら一口でぺろりだったよ」
そんな冗談を言いながらくすくす笑うと、辻ちゃんは私に噛まれたところを押さえながら恥ずかしそうに俯いた。
「それは、困るかも」
「え?」
その瞬間、ぐるりと世界が反転した。違う、押し倒されたんだ、と気付いたのは赤い顔をした辻ちゃんが、熱っぽい瞳で私を見下ろしてきたから。
「俺も一応男だから、最初くらいは大人しく食べられて」
「っ、」
手のひらでするりと頬を撫でられて、その熱さに驚いた。でも無性に心地よくて、気を抜いたらうっかり身も心も委ねかねない。
「あ、待って、辻ちゃん……」
残った理性で恋人を止めに入る。ゆくゆくはそういうことも思うものの、今日はまだ心の準備ができていない。でも辻ちゃんはもうスイッチが入ってしまったらしい。制止した私の手を優しく取り払い、指を絡めてそのまま床へと縫いとめる。
「好きだよ、全部。でも俺にペース乱されて真っ赤になってるのを見るのが一番好き」
女子が苦手なくせに、こういう時は絶対に目を逸らさないからずるい。注がれる熱に私のほうが耐えられなくなって顔を逸らせば、無防備になった首筋に、仕返しとばかりにやわく歯を立てられた。
ぽつりと呟くと、隣から「へっ?!」と酷く驚いた声が聞こえた。そのままじぃっと見つめ続ければ、その顔はみるみる内に真っ赤に染まっていく。
「えっと、その…………うん」
今にも消え入りそうな声で、隣の彼が小さく頷く。相変わらず目は合わない。でも、その言葉に嘘がないことは見ればわかるようになった。
私の彼氏でありながら、女子が苦手な辻ちゃん。付き合ってそれなりに経つけれど、彼はいまだに異性相手に余裕がない。私にはだいぶ慣れてくれたと思うけど、ほかの女子相手だと目を逸らしたまま会話するのが精一杯。そんな彼が演技をしたり嘘をついたりなんてできっこないのだ。
だからこそ、私は辻ちゃんの肯定を手放しで信じられる。好きと直接言われたわけではないけれど、彼も私と同じ気持ちなんだと嬉しくなってしまう。
「ふへへ」
「どうしたの?」
「んー、嬉しくて……じゃなかった! 大事なこと聞き忘れてた!」
はっとして向き直ると辻ちゃんは反射的に半歩後ずさった。
「ずっと聞きたかったんだけど、辻ちゃんはなんで私の告白OKしてくれたの?」
私が「好きです、付き合ってください!」というどストレートな告白をしたのは、一年ほど前のこと。
辻ちゃんは当時から見た目に反して反応がかわいいと女子の間で密かに話題になっていて、私は定期的にちょっかいをかけにいっていた一人だった。辻ちゃん的には嫌だったかもしれないけれど、何回見ても反応がかわいいのだから仕方ない。逃げられれば逃げられるほどいじめたくなって、真っ赤な顔を見れば胸の内に高揚感が広がって。
予想外だったのは、私の感情がそれだけにとどまらなかったことだ。辻ちゃんの反応はかわいい。もっと、ずっと、見ていたい。でもほかの女子に顔を赤くしているのを見るのは、なんだかすごくモヤモヤする。
かわいい顔も、声も、反応も、全部私に向けてほしい。辻ちゃんの全部を、独り占めしたい。
どうしたらーーと考えた私の行動は速かった。
辻ちゃんを呼び出し、その日のうちに告白したのだ。辻ちゃんは今までにないくらい顔を真っ赤にしていた。でも返事は「ごめん」の一言。理由は私のことをよく知らないのに付き合うのはよくないからとのことだった。その誠実さに、また好きになる。
「私、最近ハマってるドラマがあって……」
「え?」
「屋台で買うならイチゴ飴! あと、好きな色は青色全般」
「う、うん……」
「辻ちゃんも教えて!」
「へっ?」
「だってお互いのことをよく知らないからダメなんでしょ? だから知ってからまた告ろうと思って」
あの時の辻ちゃんはすっごくびっくりしてた。あれから告白しては振られを何度か繰り返して、「よろしくお願いします」って言われた時は信じられなくて「絶対ウソ!」って叫んじゃって。
最初は断るのが面倒になったのかとも思ったけれど、今ならそうじゃないとわかる。でもOKしてくれた理由は聞いたことがなかった。聞くのがちょっとこわかったのもある。
「何でって、すき……だから、だけど」
辻ちゃんがまごまごしながら言う。その言葉だけで充分嬉しい。でも、今日はもう少し踏み込みたい。
「どういうところが?」
「えっ」
「私の、どういうところが好き?」
じり、と辻ちゃんのほうへとにじり寄る。迫る私から逃げるように辻ちゃんは後ずさったけれど、後ろにあるベッドにぶつかってそれ以上は下がれない。ここが辻ちゃんの部屋でよかった。彼氏があわあわする姿を眺めながら、私はにんまり笑った。学校だったらきっと逃げられてたけど、ここなら逃げ場はない。
そっと辻ちゃんの太もも辺りに手を添えると、ぴくりと身体が震えた。
「顔? 性格? ね、教えて」
「っ、それは……」
追い詰められた彼から、今にも泣きそうな声が漏れる。それがどうしようもなくかわいくて、もっといじめたくなってしまう。
「辻ちゃん恐竜好きだよね。あ、もしかして私が恐竜っぽいからだったり?」
辻ちゃんの膝に乗り上げて、大きく口を開ける。見せつけるように人差し指でそれを広げれば、人よりも鋭い犬歯が顔を覗かせた。
チャームポイントとは言い難い、鋭い歯。垂れ目メイクをしても吊り上がってみえる目つきも私は好きじゃない。だって爬虫類みたいだし。かわいくないし。
でもこんな見た目でも、恐竜好きな辻ちゃんの目にとまったなら悪くない。
「そういうところも好き、だよ」
「ふぅん、そうなんだ」
「でも、それだけじゃなくて……っ?!」
辻ちゃんの身体がびくりと大きく揺れた。それからゆっくりと弛緩する。
「な、何して……」
「だって、辻ちゃんがかわいすぎるんだもん」
彼の肩口に埋めていた頭を起こし、つっと首筋を指でなぞる。ふるりと震える白い肌にうっすらと浮かぶ赤。それはキスマークなんてかわいらしいものではなく、独占欲丸出しの歯形だった。
「よかったね、辻ちゃん。私が本物の恐竜だったら一口でぺろりだったよ」
そんな冗談を言いながらくすくす笑うと、辻ちゃんは私に噛まれたところを押さえながら恥ずかしそうに俯いた。
「それは、困るかも」
「え?」
その瞬間、ぐるりと世界が反転した。違う、押し倒されたんだ、と気付いたのは赤い顔をした辻ちゃんが、熱っぽい瞳で私を見下ろしてきたから。
「俺も一応男だから、最初くらいは大人しく食べられて」
「っ、」
手のひらでするりと頬を撫でられて、その熱さに驚いた。でも無性に心地よくて、気を抜いたらうっかり身も心も委ねかねない。
「あ、待って、辻ちゃん……」
残った理性で恋人を止めに入る。ゆくゆくはそういうことも思うものの、今日はまだ心の準備ができていない。でも辻ちゃんはもうスイッチが入ってしまったらしい。制止した私の手を優しく取り払い、指を絡めてそのまま床へと縫いとめる。
「好きだよ、全部。でも俺にペース乱されて真っ赤になってるのを見るのが一番好き」
女子が苦手なくせに、こういう時は絶対に目を逸らさないからずるい。注がれる熱に私のほうが耐えられなくなって顔を逸らせば、無防備になった首筋に、仕返しとばかりにやわく歯を立てられた。
2/2ページ