保科・鳴海
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第1と第3の合同演習、その休憩中。
ぽちぽちとスマホを弄っていた最中「えっ」と思った以上に大きな声が出てしまい、私は慌てて片手で口を押さえた。けれど近くにいた二人、保科副隊長と鳴海隊長には聞こえていたようで、彼らは揃ってこちらに怪訝な顔を向けた。
「びっくりしたぁ。どないしたん急に」
「はっ、この程度で驚いたのか保科」
「あれ、隣でえらいビクッてなっとったの、僕の見間違いでした?」
「なっ、なってない! 大体お前、目開いてないだろ!」
「細いだけで開いとります。鳴海隊長がビクゥなってゲーム機のボタン押し間違えたの、この目でちゃーんと見てましたし」
「うぐっ」
日頃の鬱憤を晴らすかのように嬉々として会話の端々で刺す保科副隊長と、それが全てクリティカルヒットして胸を押さえて膝をつく鳴海隊長。残念なことに今この近くに慰めてくれそうな第1部隊の人たちは一人もいない。
ああ、このままでは鳴海隊長が拗ねてより面倒なことになってしまう。
私はちらりとスマホ画面を見て、唇を噛んだ。できれば二人には見せたくなかったけど、空気を変えるならこれしかない。
「あの、これ知ってます?」
私は意を決してスマホ画面を二人のほうへと向けた。思ったとおり、言い合っていた二人の興味がこちらに移る。
「なんやのこれ?」
「相性占いです。すごく当たるって今人気があって」
「ああ。最近SNSでよく見かけるやつだな」
さすがは鳴海隊長、普段からエゴサーチしまくっているのもあってか私よりずっと情報の入手が早い。本人は占い自体に興味がないのか、くだらんと鼻で笑っていたけれど。
私はついさっき中之島小隊長に「色々と使えるわよ。色々と」と意味深な笑みとともに教えてもらったばかりだ。色々と、の詳細については聞かなかったけれど、確かに話題を変えるのに一役買ってくれた。
「自分の名前と相手の名前を入れるだけで、二人の相性が何パーセントか占ってくれるんです。試しに第3の人たちの名前入れてみたら結構当たってて、侮れないなって」
「……ほーん」
私の話に相槌を打つ保科副隊長に嫌な間があった。
「僕は?」
「へっ⁈」
「僕とはやったん?」
「は……あ、えっと……まだ、です」
「ほんなら今やってみよか。僕、君との相性気になるし」
「でも……」
「ほら、貸してみい」
渋る私の手からスマホが奪われる。保科副隊長は素早く名前を打ち込んで、そしてーー。
「……三〇パーセント」
画面を見てそう呟く保科副隊長の表情は上手く読み取れない。ただそれを聞いた鳴海隊長は「ひっく! いやいやいや、低すぎるだろ!」と爆笑していた。
ーーやっぱり何度やっても数字は変わらないか。
本当は保科副隊長との相性はすでに調べ終えていた。そしてその結果が三〇パーセントとあまりに低くて私は「えっ」と驚きの声を上げてしまったのだ。
普段の私なら占いだし、と信じなかっただろう。けれど先に調べていた他の隊員たちとの相性がそれなりに良く、書かれている内容が当たっていたのもあって、保科副隊長との結果はそれなりに堪えた。一番とまではいかないにしても、保科副隊長とは信頼の置ける関係だと信じていたから。
「あー笑った笑った。よし、次はボクの番だな」
空気が読めないのか、あえて読まなかったのか。重たい雰囲気を蹴散らすように鳴海隊長が言った。私のスマホが保科副隊長から鳴海隊長の手に渡る。
「えーっと、なになに……」
占いに興味なさそうだったのに、その顔は割と楽しそうだ。
「アーッ‼︎」
「ちょっと、急に大きな声出さないでくださいよ」
「みみみ、見ろこれを!」
わなわなと震えながら鳴海隊長がスマホ画面近づけてくる。そこにはおめでとうという文字と、相性一〇〇パーセントという数字が大きく表示されていた。
「え、」
何これ、初めて見た。いやいや、そんなことよりも。鳴海隊長との相性がいいことがまず信じられなかった。そもそも第1と第3はあまり仲良くないし、会うのも年に数回程度。こうやって話すようになったのもつい最近のことで、第3の人たちと比べても仲が良いとは言い難い。
「バグですかね?」
「なんでそうなる⁈ 現実を見ろ! 当たるって有名なんだろ。そうだ、相性三〇パーセントの保科の部下なんかやめて、一〇〇パーセントのボクのとこに来い! 絶対にそのほうがいい!」
この人、さっきまで占いなんてくだらんって鼻で笑ってなかったっけ? すっかり占い結果を信じた鳴海隊長は私の言葉を聞こうともせず「そうと決まれば早速転属願いだな! 長谷川ァ!」と話を進めていく。
「鳴海隊長、勝手に話を進めないでくださ……わっ⁈」
不意に後ろから引っ張られ、私は思わず短い悲鳴を上げた。そのまま軽く肩を引き寄せられ、聞き慣れた声が耳に降ってくる。
「僕も直属の上司の前で引き抜くんはどうかと思いますねえ」
「ほ、保科副隊長……」
「なんだ保科、負け惜しみか」
相性一〇〇パーセントを叩き出した鳴海隊長はいつになく強気だ。私の手首を掴んでこっちに来いとばかりに引っ張ってくる。
「負け惜しみ……? ああ、相性占いのことですか」
一方の保科副隊長は至極冷静だった。冷静に私の肩を抱き、次の一手を考えている、そんな顔つきだ。
「鳴海隊長、この子と相性一〇〇パーセントだったそうですねえ。僕、この子と結構仲良うしとるのに三〇パーでちょっとショックでしたわ」
「はっ、それは残念だったな。けどお前よりボクのが彼女と相性がいいのは紛れもない事実だ」
だから諦めてその手を離せ! と言われても保科副隊長は聞かなかった。それどころかきゅっと肩を抱き寄せる力が強くなって、さっきよりもさらに距離が近くなる。
「あ、あの……?」
「なあ、僕と君の相性、まだ三〇パーセントなんやって。おかしいなあ、こんなに仲良うしとるのに」
耳元で低く囁かれてびくりと肩が震えた。けれどがしりと肩を掴まれていて逃げることもできない。
「けどあと七〇パーは上がる余地があるってことやんなあ。相性一〇〇パーになったら僕ら、どうなってしまうんやろ」
すっと薄く開かれた瞳と目がかち合ってドキリとする。これは鳴海隊長を煽っているだけ。そう何度も自身に言い聞かせるも、心臓はそれを無視してばくばくと早鐘を打つ。この距離の近さだ、下手したら保科副隊長に心音が伝わってしまうかもしれない。どうか、聞こえてませんように。恐る恐る顔を上げると、保科副隊長ににこりと微笑まれてしまった。それはどっち……?
「あ、鳴海隊長は今の時点で相性一〇〇パーセントでしたっけ。なら下がることはあっても、もう上がることはないですねえ」
「んなっ」
保科副隊長のとどめの一撃。そして煽りは見事に成功していた。
「お前が一〇〇パーセントになる頃にはボクたちの相性は一〇〇〇パーセントだ!」
もう訳がわからない。
遠くに長谷川副隊長を見つけ、助けてくださいと目で訴えるも、自分で何とかしろとこれまた目だけで返された。
休憩終了まで、残り三分。こんなにもこの時間を長いと感じたのは、カップラーメンの出来上がりを待つ以外で初めてだった。
ぽちぽちとスマホを弄っていた最中「えっ」と思った以上に大きな声が出てしまい、私は慌てて片手で口を押さえた。けれど近くにいた二人、保科副隊長と鳴海隊長には聞こえていたようで、彼らは揃ってこちらに怪訝な顔を向けた。
「びっくりしたぁ。どないしたん急に」
「はっ、この程度で驚いたのか保科」
「あれ、隣でえらいビクッてなっとったの、僕の見間違いでした?」
「なっ、なってない! 大体お前、目開いてないだろ!」
「細いだけで開いとります。鳴海隊長がビクゥなってゲーム機のボタン押し間違えたの、この目でちゃーんと見てましたし」
「うぐっ」
日頃の鬱憤を晴らすかのように嬉々として会話の端々で刺す保科副隊長と、それが全てクリティカルヒットして胸を押さえて膝をつく鳴海隊長。残念なことに今この近くに慰めてくれそうな第1部隊の人たちは一人もいない。
ああ、このままでは鳴海隊長が拗ねてより面倒なことになってしまう。
私はちらりとスマホ画面を見て、唇を噛んだ。できれば二人には見せたくなかったけど、空気を変えるならこれしかない。
「あの、これ知ってます?」
私は意を決してスマホ画面を二人のほうへと向けた。思ったとおり、言い合っていた二人の興味がこちらに移る。
「なんやのこれ?」
「相性占いです。すごく当たるって今人気があって」
「ああ。最近SNSでよく見かけるやつだな」
さすがは鳴海隊長、普段からエゴサーチしまくっているのもあってか私よりずっと情報の入手が早い。本人は占い自体に興味がないのか、くだらんと鼻で笑っていたけれど。
私はついさっき中之島小隊長に「色々と使えるわよ。色々と」と意味深な笑みとともに教えてもらったばかりだ。色々と、の詳細については聞かなかったけれど、確かに話題を変えるのに一役買ってくれた。
「自分の名前と相手の名前を入れるだけで、二人の相性が何パーセントか占ってくれるんです。試しに第3の人たちの名前入れてみたら結構当たってて、侮れないなって」
「……ほーん」
私の話に相槌を打つ保科副隊長に嫌な間があった。
「僕は?」
「へっ⁈」
「僕とはやったん?」
「は……あ、えっと……まだ、です」
「ほんなら今やってみよか。僕、君との相性気になるし」
「でも……」
「ほら、貸してみい」
渋る私の手からスマホが奪われる。保科副隊長は素早く名前を打ち込んで、そしてーー。
「……三〇パーセント」
画面を見てそう呟く保科副隊長の表情は上手く読み取れない。ただそれを聞いた鳴海隊長は「ひっく! いやいやいや、低すぎるだろ!」と爆笑していた。
ーーやっぱり何度やっても数字は変わらないか。
本当は保科副隊長との相性はすでに調べ終えていた。そしてその結果が三〇パーセントとあまりに低くて私は「えっ」と驚きの声を上げてしまったのだ。
普段の私なら占いだし、と信じなかっただろう。けれど先に調べていた他の隊員たちとの相性がそれなりに良く、書かれている内容が当たっていたのもあって、保科副隊長との結果はそれなりに堪えた。一番とまではいかないにしても、保科副隊長とは信頼の置ける関係だと信じていたから。
「あー笑った笑った。よし、次はボクの番だな」
空気が読めないのか、あえて読まなかったのか。重たい雰囲気を蹴散らすように鳴海隊長が言った。私のスマホが保科副隊長から鳴海隊長の手に渡る。
「えーっと、なになに……」
占いに興味なさそうだったのに、その顔は割と楽しそうだ。
「アーッ‼︎」
「ちょっと、急に大きな声出さないでくださいよ」
「みみみ、見ろこれを!」
わなわなと震えながら鳴海隊長がスマホ画面近づけてくる。そこにはおめでとうという文字と、相性一〇〇パーセントという数字が大きく表示されていた。
「え、」
何これ、初めて見た。いやいや、そんなことよりも。鳴海隊長との相性がいいことがまず信じられなかった。そもそも第1と第3はあまり仲良くないし、会うのも年に数回程度。こうやって話すようになったのもつい最近のことで、第3の人たちと比べても仲が良いとは言い難い。
「バグですかね?」
「なんでそうなる⁈ 現実を見ろ! 当たるって有名なんだろ。そうだ、相性三〇パーセントの保科の部下なんかやめて、一〇〇パーセントのボクのとこに来い! 絶対にそのほうがいい!」
この人、さっきまで占いなんてくだらんって鼻で笑ってなかったっけ? すっかり占い結果を信じた鳴海隊長は私の言葉を聞こうともせず「そうと決まれば早速転属願いだな! 長谷川ァ!」と話を進めていく。
「鳴海隊長、勝手に話を進めないでくださ……わっ⁈」
不意に後ろから引っ張られ、私は思わず短い悲鳴を上げた。そのまま軽く肩を引き寄せられ、聞き慣れた声が耳に降ってくる。
「僕も直属の上司の前で引き抜くんはどうかと思いますねえ」
「ほ、保科副隊長……」
「なんだ保科、負け惜しみか」
相性一〇〇パーセントを叩き出した鳴海隊長はいつになく強気だ。私の手首を掴んでこっちに来いとばかりに引っ張ってくる。
「負け惜しみ……? ああ、相性占いのことですか」
一方の保科副隊長は至極冷静だった。冷静に私の肩を抱き、次の一手を考えている、そんな顔つきだ。
「鳴海隊長、この子と相性一〇〇パーセントだったそうですねえ。僕、この子と結構仲良うしとるのに三〇パーでちょっとショックでしたわ」
「はっ、それは残念だったな。けどお前よりボクのが彼女と相性がいいのは紛れもない事実だ」
だから諦めてその手を離せ! と言われても保科副隊長は聞かなかった。それどころかきゅっと肩を抱き寄せる力が強くなって、さっきよりもさらに距離が近くなる。
「あ、あの……?」
「なあ、僕と君の相性、まだ三〇パーセントなんやって。おかしいなあ、こんなに仲良うしとるのに」
耳元で低く囁かれてびくりと肩が震えた。けれどがしりと肩を掴まれていて逃げることもできない。
「けどあと七〇パーは上がる余地があるってことやんなあ。相性一〇〇パーになったら僕ら、どうなってしまうんやろ」
すっと薄く開かれた瞳と目がかち合ってドキリとする。これは鳴海隊長を煽っているだけ。そう何度も自身に言い聞かせるも、心臓はそれを無視してばくばくと早鐘を打つ。この距離の近さだ、下手したら保科副隊長に心音が伝わってしまうかもしれない。どうか、聞こえてませんように。恐る恐る顔を上げると、保科副隊長ににこりと微笑まれてしまった。それはどっち……?
「あ、鳴海隊長は今の時点で相性一〇〇パーセントでしたっけ。なら下がることはあっても、もう上がることはないですねえ」
「んなっ」
保科副隊長のとどめの一撃。そして煽りは見事に成功していた。
「お前が一〇〇パーセントになる頃にはボクたちの相性は一〇〇〇パーセントだ!」
もう訳がわからない。
遠くに長谷川副隊長を見つけ、助けてくださいと目で訴えるも、自分で何とかしろとこれまた目だけで返された。
休憩終了まで、残り三分。こんなにもこの時間を長いと感じたのは、カップラーメンの出来上がりを待つ以外で初めてだった。