相模屋紺炉
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「私も名字が相模屋だったらよかったのに」
余って仕方がないという大福と温かな緑茶を縁側で頂きながら、ふとそんなことを呟く。
湯飲みの中ではゆらりと茶柱が揺れていて、今日は良いことがありそうだななんて思っていると、隣に座っていた紺炉中隊長が盛大にむせていた。
「大丈夫ですか!?」
「ああ、悪いな。変なとこに入っちまったみてェだ」
何度か大きな背中を摩ると落ち着いたらしい紺炉中隊長が訝しげな顔をこちらに向けた。
「嬢ちゃんこそどうした急に。俺と同じ名字になりてェのか?」
「だってかっこいいじゃないですか、相模屋って」
私の名字はどこにでもある普通のもので、何なら皇国に多い名字ランキングトップスリーに入るごく平凡なものだ。そんな私からしたら『相模屋』なんて珍しいしかっこいいし、憧れるに決まってる。報告書の押印を見る度にいいなと思っていた。
「桜備とか、火縄とかもいいんですけど、やっぱり一番は相模屋ですね。響きが越後屋みたいで」
「はは、そいつは喜んでいいのかねェ。だが俺も同感だ。嬢ちゃんに一番合うのは相模屋に違いねェ」
「紺炉中隊長もそう思いますか! でも今生は無理なので来世に期待します」
「いや、嬢ちゃんが望むならいつでも相模屋になれるぞ」
「本当ですか⁈」
期待に胸を膨らませる私に、紺炉中隊長はくっと唇を持ち上げた。
「ただし一度変えたら二度と変えられねェ。嬢ちゃんに一生相模屋で生きていく覚悟ができたら教えてやるよ」
大きな手が伸びてきて子どもに言い聞かせるように撫でられる。
でも私、もう子どもじゃないんです。
「……ます」
「ん?」
「そんなのとっくにできてますよ、紺炉中隊長」
いただけますか相模屋の姓、と笑顔で続ければ、目の前の彼は見る見る赤く染まっていき、本日二度目のむせ返りが縁側に響き渡った。
余って仕方がないという大福と温かな緑茶を縁側で頂きながら、ふとそんなことを呟く。
湯飲みの中ではゆらりと茶柱が揺れていて、今日は良いことがありそうだななんて思っていると、隣に座っていた紺炉中隊長が盛大にむせていた。
「大丈夫ですか!?」
「ああ、悪いな。変なとこに入っちまったみてェだ」
何度か大きな背中を摩ると落ち着いたらしい紺炉中隊長が訝しげな顔をこちらに向けた。
「嬢ちゃんこそどうした急に。俺と同じ名字になりてェのか?」
「だってかっこいいじゃないですか、相模屋って」
私の名字はどこにでもある普通のもので、何なら皇国に多い名字ランキングトップスリーに入るごく平凡なものだ。そんな私からしたら『相模屋』なんて珍しいしかっこいいし、憧れるに決まってる。報告書の押印を見る度にいいなと思っていた。
「桜備とか、火縄とかもいいんですけど、やっぱり一番は相模屋ですね。響きが越後屋みたいで」
「はは、そいつは喜んでいいのかねェ。だが俺も同感だ。嬢ちゃんに一番合うのは相模屋に違いねェ」
「紺炉中隊長もそう思いますか! でも今生は無理なので来世に期待します」
「いや、嬢ちゃんが望むならいつでも相模屋になれるぞ」
「本当ですか⁈」
期待に胸を膨らませる私に、紺炉中隊長はくっと唇を持ち上げた。
「ただし一度変えたら二度と変えられねェ。嬢ちゃんに一生相模屋で生きていく覚悟ができたら教えてやるよ」
大きな手が伸びてきて子どもに言い聞かせるように撫でられる。
でも私、もう子どもじゃないんです。
「……ます」
「ん?」
「そんなのとっくにできてますよ、紺炉中隊長」
いただけますか相模屋の姓、と笑顔で続ければ、目の前の彼は見る見る赤く染まっていき、本日二度目のむせ返りが縁側に響き渡った。