相模屋紺炉
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澄んだ青空にはらはらと桜の花びらが舞う。隅田川に沿って植えられた桜並木。満開の時期はとっくに過ぎてしまったけれど、葉桜へと変わっていく今の時期も風情があって悪くない。
「綺麗ですね」
土手に腰を下ろし、老舗和菓子屋で買ってきた花見団子を頬張りながらそう告げると、隣に座っていた紺炉さんが「そうだなァ」と頷いた。でもその顔は何か言いたげに笑っている。
「どうせ花より団子だなって思ってるんでしょ」
「そんなこたァねェよ」
「嘘。顔にそう書いてあります」
「そうかい? そんなつもりはなかったんだが」
紺炉さんは困ったように眉を下げ、掌で口元を覆った。しかし目尻はきゅっと皺が寄ったままで、笑っているのは隠せていない。
まあ食い意地が張っているのは確かだし、お花見よりお団子を楽しんでいるのも事実だから別にいいけど。
「紺炉さんはそのままお花見を楽しんでてください。その間に最後の一本は私がいただいちゃいますから」
むっと唇を尖らせたまま、私は花見団子の入った包みに手を伸ばした。一包み三本入りの、最後の一本。二人で割り切れないからどうしようかと思っていたけど、もういい。花より団子、大いに結構。食い意地の張った私が美味しくいただこうじゃないか。
しかし伸ばした手が花見団子に届くことはなかった。紺炉さんの大きな手に阻まれたせいで。
「紺炉さん?」
もしかして、最後の一本を食べたかったとか?
不思議に思いながら顔を上げると、眦を下げた紺炉さんがきゅっと私の手を握り込んだ。
「お前さんは俺が花見を楽しむような男に見えンのかい」
「え?」
今日お花見に誘ってくれたのは他でもない紺炉さんだ。仕事が忙しくてお花見に行く機会を逃してしまったとぼやいていたら、「なら一緒に行くかい?」と言ってくれて。彼も今年はまだ花見に行けていないと話していたから、てっきりそれが目的なのだとばかり思っていたけれど。
「紺炉さんも花より団子派ってことですか?」
彼は大の甘いもの好きだ。あり得ない話じゃない。なんだ、紺炉さんも私と同類じゃないか。
そう思ったら何だか可愛く思えてきて、最後の一本は半分こしてもいいかななんて気になってくる。
しかし紺炉さんは「違ェよ」と告げて、クツクツ笑うばかり。
お花見に来て、桜や団子の他に一体何を楽しむというのだろう。
「花より団子よりいいものなんてあります?」
私の質問に紺炉さんは一層目元の皺を深くした。
「ああ、あるぜ」
それから掴んでいた私の手に指を絡め、軽く引き寄せて言った。
「ここに、な」
「綺麗ですね」
土手に腰を下ろし、老舗和菓子屋で買ってきた花見団子を頬張りながらそう告げると、隣に座っていた紺炉さんが「そうだなァ」と頷いた。でもその顔は何か言いたげに笑っている。
「どうせ花より団子だなって思ってるんでしょ」
「そんなこたァねェよ」
「嘘。顔にそう書いてあります」
「そうかい? そんなつもりはなかったんだが」
紺炉さんは困ったように眉を下げ、掌で口元を覆った。しかし目尻はきゅっと皺が寄ったままで、笑っているのは隠せていない。
まあ食い意地が張っているのは確かだし、お花見よりお団子を楽しんでいるのも事実だから別にいいけど。
「紺炉さんはそのままお花見を楽しんでてください。その間に最後の一本は私がいただいちゃいますから」
むっと唇を尖らせたまま、私は花見団子の入った包みに手を伸ばした。一包み三本入りの、最後の一本。二人で割り切れないからどうしようかと思っていたけど、もういい。花より団子、大いに結構。食い意地の張った私が美味しくいただこうじゃないか。
しかし伸ばした手が花見団子に届くことはなかった。紺炉さんの大きな手に阻まれたせいで。
「紺炉さん?」
もしかして、最後の一本を食べたかったとか?
不思議に思いながら顔を上げると、眦を下げた紺炉さんがきゅっと私の手を握り込んだ。
「お前さんは俺が花見を楽しむような男に見えンのかい」
「え?」
今日お花見に誘ってくれたのは他でもない紺炉さんだ。仕事が忙しくてお花見に行く機会を逃してしまったとぼやいていたら、「なら一緒に行くかい?」と言ってくれて。彼も今年はまだ花見に行けていないと話していたから、てっきりそれが目的なのだとばかり思っていたけれど。
「紺炉さんも花より団子派ってことですか?」
彼は大の甘いもの好きだ。あり得ない話じゃない。なんだ、紺炉さんも私と同類じゃないか。
そう思ったら何だか可愛く思えてきて、最後の一本は半分こしてもいいかななんて気になってくる。
しかし紺炉さんは「違ェよ」と告げて、クツクツ笑うばかり。
お花見に来て、桜や団子の他に一体何を楽しむというのだろう。
「花より団子よりいいものなんてあります?」
私の質問に紺炉さんは一層目元の皺を深くした。
「ああ、あるぜ」
それから掴んでいた私の手に指を絡め、軽く引き寄せて言った。
「ここに、な」