相模屋紺炉
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「……以上が報告になります」
「ああ、ありがとよ」
浅草で白装束の一件があってから、私は情報共有という名目で定期的に第七を訪れている。
定期報告を終えて第七の詰所を後にしようとすると、報告書に目を通していた紺炉中隊長に呼び止められた。
「美味い花見団子が手に入ったんだが、茶でもどうだ? いつも来てもらってる礼がしたいんだが」
花見団子と聞いてごくりと喉が鳴る。ちょっとくらいなら火縄中隊長にもバレないかなと心が揺れる。いや、紺炉中隊長の厚意を断る方が失礼だ。だから大丈夫と言い聞かせて、ご相伴にあずかることにした。
縁側に腰を下ろして、温かい緑茶と一足先に春を感じる花見団子を頬張る。やさしい甘さにもっちりとした食感、白団子には黒胡麻が、緑団子にはよもぎの葉が入っていて、なるほどこれは絶品だ。
「気に入ってもらえたかい?」
「はい、すごく美味しいです!」
急須を傾けながら紺炉中隊長が目を細めた。
「そうかい、そりゃあ良かった。今日はいつもより元気がねェみてェだったから、どうしたのかと思ってたんだが」
それを聞いて慌てて顔に手を当てる。
「そんなに顔に出ちゃってましたか」
「ああ、お前さんはわかりやすいからな」
ポーカーフェイスには自信があったのだが、紺炉中隊長には通じなかったみたいだ。
「笑わないでくださいね。実は今週健康診断がありまして、その、私……採血が怖くて」
恥ずかしくて紡ぐ言葉が尻すぼみになってしまう。子供の頃から。大人になっても。あれだけは慣れない。
ちらりと紺炉中隊長の反応をうかがうと、手で口を押さえて肩が小刻みに震えている。
「わ、笑わないでって言ったじゃないですか! 」
「悪かった悪かった。そう怒んなさんな。お前さんが神妙な顔するもんだから何事かと思っていたんだが、あんまりにも可愛い理由だったんで、ついな」
「ちっとも可愛いくなんかないですよ。健康診断が近付くにつれて憂鬱になるんです。ご褒美でもなきゃ頑張れない。終わったらとびきり甘い物食べてやるんです」
せっかく美味しいお団子を食べて幸せな気分だったのに、あの瞬間を思い出して顔をしかめてしまう。嫌だなぁ採血。
「とびきり甘ェ褒美がありゃいいのかい?」
言葉の意味を聞き直すより先に置いていた手にするりと武骨な指が絡みついた。
反射的に身を引こうとするも、紺炉中隊長の腕が背に回されて逃げることを許さない。簡単に身体を引き寄せられて視界が紺炉中隊長でいっぱいになる。
「紺炉中隊ちょ……」
熱を孕んだ瞳に吸い込まれてしまいそうだ。紺炉中隊長の顔が近付いてきて思わずぎゅっと目を閉じると、唇に熱いものが触れた。
それは感触を楽しむように唇の上を這っていく。
恐る恐る目を開けると意地悪そうな笑みを浮かべた紺炉中隊長が、親指の腹でふにふにと私の唇に触れていた。
「あ、あの……」
「採血頑張ったら、この続きが褒美ってのはどうだ?」
この続きというのは、つまり。
言わんとしていることを想像してしまってぶわりと身体中の血液が駆け巡る。
「紺炉中隊長、何言って……」
「褒美がありゃいいんだろ。お望み通りとびきり甘ェのを用意しとくぜ」
唇の輪郭をなぞっていた紺炉中隊長の指が名残惜しそうに離れていく。
「頑張れるかい?」
そう耳元で低く囁かれて抵抗できる人間はいるのだろうか。とろりと甘い誘惑に私は小さく頷くことしかできなかった。
「ああ、ありがとよ」
浅草で白装束の一件があってから、私は情報共有という名目で定期的に第七を訪れている。
定期報告を終えて第七の詰所を後にしようとすると、報告書に目を通していた紺炉中隊長に呼び止められた。
「美味い花見団子が手に入ったんだが、茶でもどうだ? いつも来てもらってる礼がしたいんだが」
花見団子と聞いてごくりと喉が鳴る。ちょっとくらいなら火縄中隊長にもバレないかなと心が揺れる。いや、紺炉中隊長の厚意を断る方が失礼だ。だから大丈夫と言い聞かせて、ご相伴にあずかることにした。
縁側に腰を下ろして、温かい緑茶と一足先に春を感じる花見団子を頬張る。やさしい甘さにもっちりとした食感、白団子には黒胡麻が、緑団子にはよもぎの葉が入っていて、なるほどこれは絶品だ。
「気に入ってもらえたかい?」
「はい、すごく美味しいです!」
急須を傾けながら紺炉中隊長が目を細めた。
「そうかい、そりゃあ良かった。今日はいつもより元気がねェみてェだったから、どうしたのかと思ってたんだが」
それを聞いて慌てて顔に手を当てる。
「そんなに顔に出ちゃってましたか」
「ああ、お前さんはわかりやすいからな」
ポーカーフェイスには自信があったのだが、紺炉中隊長には通じなかったみたいだ。
「笑わないでくださいね。実は今週健康診断がありまして、その、私……採血が怖くて」
恥ずかしくて紡ぐ言葉が尻すぼみになってしまう。子供の頃から。大人になっても。あれだけは慣れない。
ちらりと紺炉中隊長の反応をうかがうと、手で口を押さえて肩が小刻みに震えている。
「わ、笑わないでって言ったじゃないですか! 」
「悪かった悪かった。そう怒んなさんな。お前さんが神妙な顔するもんだから何事かと思っていたんだが、あんまりにも可愛い理由だったんで、ついな」
「ちっとも可愛いくなんかないですよ。健康診断が近付くにつれて憂鬱になるんです。ご褒美でもなきゃ頑張れない。終わったらとびきり甘い物食べてやるんです」
せっかく美味しいお団子を食べて幸せな気分だったのに、あの瞬間を思い出して顔をしかめてしまう。嫌だなぁ採血。
「とびきり甘ェ褒美がありゃいいのかい?」
言葉の意味を聞き直すより先に置いていた手にするりと武骨な指が絡みついた。
反射的に身を引こうとするも、紺炉中隊長の腕が背に回されて逃げることを許さない。簡単に身体を引き寄せられて視界が紺炉中隊長でいっぱいになる。
「紺炉中隊ちょ……」
熱を孕んだ瞳に吸い込まれてしまいそうだ。紺炉中隊長の顔が近付いてきて思わずぎゅっと目を閉じると、唇に熱いものが触れた。
それは感触を楽しむように唇の上を這っていく。
恐る恐る目を開けると意地悪そうな笑みを浮かべた紺炉中隊長が、親指の腹でふにふにと私の唇に触れていた。
「あ、あの……」
「採血頑張ったら、この続きが褒美ってのはどうだ?」
この続きというのは、つまり。
言わんとしていることを想像してしまってぶわりと身体中の血液が駆け巡る。
「紺炉中隊長、何言って……」
「褒美がありゃいいんだろ。お望み通りとびきり甘ェのを用意しとくぜ」
唇の輪郭をなぞっていた紺炉中隊長の指が名残惜しそうに離れていく。
「頑張れるかい?」
そう耳元で低く囁かれて抵抗できる人間はいるのだろうか。とろりと甘い誘惑に私は小さく頷くことしかできなかった。