相模屋紺炉
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朝起きたら、俺はあいつになっていた。
……なんてことはありえねェ。あっちゃならねェ。だってそういうのは"どらま"の中だけの話だろう?
だが鏡に映る姿はどっからどう見てもあいつで俺は頭を抱えた。まさか現実にこんなことが起こるとは。どうしたものかと考えて、ふと気づく。
ーー俺があいつになってるってことは、あいつは俺になってるンじゃねェか?
それがどらまでいうところの、お決まりの展開だ。
こうしちゃいられねェ。他の奴らに見つかる前に何とかしねェと。
俺は慌ててあいつがいるであろう俺の部屋へと向かった。
「おい、大丈夫か⁈」
いつもは一声かけてから襖を開けるところを、今はその時間すら惜しいとすぐさま開ける。
「きゃ、紺炉さん⁈」
野太い悲鳴が聞こえた。俺の声だ。
部屋には寝間着姿のままの俺が髪も纏めず突っ立っていて。中身は予想通りあいつのようだった。呆然とした様子でこっちを見ていて、わかるぜ、俺もそうだった、とあいつに頷いて見せる。正直今も何がどうなってるのかわからねぇが、こういう時こそ年長者の俺がしっかりしねェとな。
俺は少しでも落ち着かせようと、ぴしりと固まるあいつに近づき、
「おい」
「はい」
「お前さん、今何してた?」
「な、なにも?」
その割に視線が面白いくれェに泳いでいる。
「じゃあ何だいその手は」
「これは……」
ゆっくりとあいつが目線を下げた。ちょうど胸の辺り、そして何故かそこには両手が添えられていた。そう、まるで裸を見られた女が胸を隠すような格好で。
「入れ替わったことにびっくりして、心臓を押さえてました」
「そんな押さえ方する奴ァ見たことねェよ」
「えっと……胸が痛くて?」
「へぇ、そうかい」
存外低い声が出た。あいつはびくりと巨躯を震わせて、俺がしたこともねェ面を晒す。
「ご、ごご、ごめんなさい。本当は……」
揉んでました、とあいつは尻すぼみに言った。
わかりきっていたことだが、溜め息しか出てこねェ。何が楽しくて野郎の胸なんか揉むのか。何が悲しくて自身の胸を揉む自分の姿を見なきゃならねェのか。
「ったく、お前さんは。何でまたそんなこと」
「だって、揉んでくださいとばかりに立派な胸が目の前にあるんですよ! 揉まないという選択肢はないでしょう!」
力強く言い放ち、むにゅとあいつが俺の胸を揉む。頼むからやめてくれ。
「紺炉さんだって、どうせ揉んだんでしょう?」
「…………ンなことしねェよ」
しん、と沈黙が流れる。
「え、揉んだんですか」
「揉んでねェ」
「揉んだんですね」
「揉んでねェって」
「何で私ばっかり咎められなきゃいけないんですか。紺炉さんだけずるい!」
怒る理由はそこなのか。癇癪を起こしたあいつにガクガクと肩を揺すられて、その拍子に二人して倒れ込む。思いの外痛みが少なかったのは運良く敷かれたままの布団の上だったからか。
「おい、落ち着けって」
「うう、私も好きなだけ揉みたい」
「まだそんなこと言ってンのか」
「だってぇ」
ぐ、と押さえ込まれて身動きが取れねェ。あいつは情けねェ面で「揉みたい」と零すばかりで、今の状況をわかってねェようだった。
こりゃ落ち着くまでこのままだな。
端から見たら俺が押し倒しているようにしか見えねェが、まあ無断で俺の部屋に入ってくるような若衆はいねェからそこらへんは安心して……。
「おい、朝っぱらからドタバタとうるせェぞ」
「あ」
「ア?」
この部屋に無断で入るような奴はいねェ。が、それは若衆に限っての話。うちには勝手に入ってくる奴もいるってことを、俺はすっかり忘れていた。
「わ、若……」
違ぇんだこれは、と手を伸ばすも、布団の上で男女二人がもつれ合う状況を何て説明したらいいのかわからねェ。
俺たちを見た若は「あー……」と頭を掻いて、ばつが悪そうに目を逸らした。
「なんだ、その……ほどほどにしとけよ」
それだけ言い残して若はスッと襖を閉めた。
嗚呼、クソ。絶対勘違いしてやがる。
「どうしたんでしょうね、若」
「どうしたもこうしたもねェよ」
俺を押し倒しながらきょとんとするあいつに、戻ったらどういうことか、きっちり教え込んでやろうと、それだけを考えた。
……なんてことはありえねェ。あっちゃならねェ。だってそういうのは"どらま"の中だけの話だろう?
だが鏡に映る姿はどっからどう見てもあいつで俺は頭を抱えた。まさか現実にこんなことが起こるとは。どうしたものかと考えて、ふと気づく。
ーー俺があいつになってるってことは、あいつは俺になってるンじゃねェか?
それがどらまでいうところの、お決まりの展開だ。
こうしちゃいられねェ。他の奴らに見つかる前に何とかしねェと。
俺は慌ててあいつがいるであろう俺の部屋へと向かった。
「おい、大丈夫か⁈」
いつもは一声かけてから襖を開けるところを、今はその時間すら惜しいとすぐさま開ける。
「きゃ、紺炉さん⁈」
野太い悲鳴が聞こえた。俺の声だ。
部屋には寝間着姿のままの俺が髪も纏めず突っ立っていて。中身は予想通りあいつのようだった。呆然とした様子でこっちを見ていて、わかるぜ、俺もそうだった、とあいつに頷いて見せる。正直今も何がどうなってるのかわからねぇが、こういう時こそ年長者の俺がしっかりしねェとな。
俺は少しでも落ち着かせようと、ぴしりと固まるあいつに近づき、
「おい」
「はい」
「お前さん、今何してた?」
「な、なにも?」
その割に視線が面白いくれェに泳いでいる。
「じゃあ何だいその手は」
「これは……」
ゆっくりとあいつが目線を下げた。ちょうど胸の辺り、そして何故かそこには両手が添えられていた。そう、まるで裸を見られた女が胸を隠すような格好で。
「入れ替わったことにびっくりして、心臓を押さえてました」
「そんな押さえ方する奴ァ見たことねェよ」
「えっと……胸が痛くて?」
「へぇ、そうかい」
存外低い声が出た。あいつはびくりと巨躯を震わせて、俺がしたこともねェ面を晒す。
「ご、ごご、ごめんなさい。本当は……」
揉んでました、とあいつは尻すぼみに言った。
わかりきっていたことだが、溜め息しか出てこねェ。何が楽しくて野郎の胸なんか揉むのか。何が悲しくて自身の胸を揉む自分の姿を見なきゃならねェのか。
「ったく、お前さんは。何でまたそんなこと」
「だって、揉んでくださいとばかりに立派な胸が目の前にあるんですよ! 揉まないという選択肢はないでしょう!」
力強く言い放ち、むにゅとあいつが俺の胸を揉む。頼むからやめてくれ。
「紺炉さんだって、どうせ揉んだんでしょう?」
「…………ンなことしねェよ」
しん、と沈黙が流れる。
「え、揉んだんですか」
「揉んでねェ」
「揉んだんですね」
「揉んでねェって」
「何で私ばっかり咎められなきゃいけないんですか。紺炉さんだけずるい!」
怒る理由はそこなのか。癇癪を起こしたあいつにガクガクと肩を揺すられて、その拍子に二人して倒れ込む。思いの外痛みが少なかったのは運良く敷かれたままの布団の上だったからか。
「おい、落ち着けって」
「うう、私も好きなだけ揉みたい」
「まだそんなこと言ってンのか」
「だってぇ」
ぐ、と押さえ込まれて身動きが取れねェ。あいつは情けねェ面で「揉みたい」と零すばかりで、今の状況をわかってねェようだった。
こりゃ落ち着くまでこのままだな。
端から見たら俺が押し倒しているようにしか見えねェが、まあ無断で俺の部屋に入ってくるような若衆はいねェからそこらへんは安心して……。
「おい、朝っぱらからドタバタとうるせェぞ」
「あ」
「ア?」
この部屋に無断で入るような奴はいねェ。が、それは若衆に限っての話。うちには勝手に入ってくる奴もいるってことを、俺はすっかり忘れていた。
「わ、若……」
違ぇんだこれは、と手を伸ばすも、布団の上で男女二人がもつれ合う状況を何て説明したらいいのかわからねェ。
俺たちを見た若は「あー……」と頭を掻いて、ばつが悪そうに目を逸らした。
「なんだ、その……ほどほどにしとけよ」
それだけ言い残して若はスッと襖を閉めた。
嗚呼、クソ。絶対勘違いしてやがる。
「どうしたんでしょうね、若」
「どうしたもこうしたもねェよ」
俺を押し倒しながらきょとんとするあいつに、戻ったらどういうことか、きっちり教え込んでやろうと、それだけを考えた。