相模屋紺炉
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あの人に少しでも近付けるなら、大人の階段を一段飛ばし、二段飛ばしで駆け上がる。
それくらいしてやるんだって、そう思ってた。
「ん、ふっ……」
何度も唇に押し付けられる熱に頭がくらくらする。息ができなくて厚い胸板を軽く叩くともう一度唇が押し当てられて、ゆっくりと、名残惜しそうに離れていった。
「すみません、苦しくなっちゃって」
「だから息止めるなって何度も言ったろ」
肩で息をする私の頬を無骨な指が優しくなぞる。紺炉さんは簡単そうに言うけれどこれがなかなか難しい。今日こそはと思うのにキスをするうちに何も考えられなくなって、呼吸することすら忘れてしまう。
頬をなぞっていた指が今度は唇に移動する。ふにふにと感触を楽しむように動いたかと思えば顎を軽く持ち上げられて、ぶつかった視線の熱さにぞくりと体が震えるのがわかった。
「なァ、もう一回。いいかい?」
そんな風に言われて断れる人はいるのだろうか。小さく頷くと再び熱い口づけが降ってきた。
触れては離れ、時折わざとらしく音を立てて。今度こそ鼻で息をしなければと思うのに、はあ、と紺炉さんの吐息を間近に感じて体が強張ってしまう。
ダメ。も、苦しい。
離してほしいと伝えようとした瞬間、べろりと唇を舐められた。そのまま下唇を食まれ、こじ開けるように舌が入り込む。
「っ⁈ はぁ、ん、ぅ……」
出そうとした声は音になる前に飲み込まれた。そのまま分厚い舌がより深く入ってくる。息はできているのかいないのか、けれどさっきよりもだいぶ頭の奥がふわふわした。体中の力が抜けていく感覚に流されそうになって、このままではいけないと何とか踏みとどまる。
ドンドンと二回。反応がないのでもう二回。いつもより強く叩いてようやく解放された。
「お願い、待って紺炉さん……」
腰に回された腕が緩んだのを見計らって力なく紺炉さんを押す。言葉を言い終える前にぽろりと涙が零れてしまい、紺炉さんが「すまねェ」と謝るのが聞こえた。
「お前さんの気持ちも考えずに突っ走っちまった」
「違うんです。ちょっとびっくりしただけで」
心配させまいと慌てて目元を拭う。強めに擦ったせいでヒリリと痛んだけれど、もう涙が溢れることはなさそうだ。
紺炉さんは何も悪くない。さっきみたいなキスも恋人同士なら普通のことだ。むしろ私が慣れていないせいでたくさん我慢させているはずだ。恋人がするのはキスだけではないのだから。
だから私が早く紺炉さんに釣り合うような大人になればいい。それだけのことなのだけど。
「……ごめんなさい紺炉さん、決して嫌なわけじゃないんです。ただ、さっきは少し……怖くなってしまって」
目の前に伸びる階段をがむしゃらに駆け上がればいいと思っていた。ちょっとくらい無理しないと遠くにいる紺炉さんには到底追いつけないと。
でも今の気持ちを抱えたまま進んだら、いつか大事なものを落としてしまいそうな、そんな気がした。
「さっきのは階段というよりエレベーターで」
「えれべーたー?」
「えっと、さっきのキスは私にはまだ早かったみたいで、少しずつ練習してもいいですか? あとする前に言ってもらえると助かります。できれば心の準備がしたいので」
私の我儘は紺炉さんを今まで以上に我慢させてしまうかもしれない。それでも紺炉さんは聞かなくてもいいお願いを真剣に聞いてくれて、「分かった」と了承までしてくれた。
「俺もまたさっきみてェに大人げねェとこ見せちまうかもしれねェ。嫌だったら絶対に言ってくれ」
「紺炉さんが大人げない?」
「可笑しいかい? お前さんのこととなると年甲斐もなく欲しがりになっちまう」
余裕があってずっと大人だと思っていた紺炉さんは、そういうわけではなかったようで。
「お前さんさえ良ければもう少し練習するかい?」
「じゃあ、少しだけ」
長く思える階段も彼が降りてきてくれるなら、一緒に並んで歩める日もそう遠くないのかもしれない。
それくらいしてやるんだって、そう思ってた。
「ん、ふっ……」
何度も唇に押し付けられる熱に頭がくらくらする。息ができなくて厚い胸板を軽く叩くともう一度唇が押し当てられて、ゆっくりと、名残惜しそうに離れていった。
「すみません、苦しくなっちゃって」
「だから息止めるなって何度も言ったろ」
肩で息をする私の頬を無骨な指が優しくなぞる。紺炉さんは簡単そうに言うけれどこれがなかなか難しい。今日こそはと思うのにキスをするうちに何も考えられなくなって、呼吸することすら忘れてしまう。
頬をなぞっていた指が今度は唇に移動する。ふにふにと感触を楽しむように動いたかと思えば顎を軽く持ち上げられて、ぶつかった視線の熱さにぞくりと体が震えるのがわかった。
「なァ、もう一回。いいかい?」
そんな風に言われて断れる人はいるのだろうか。小さく頷くと再び熱い口づけが降ってきた。
触れては離れ、時折わざとらしく音を立てて。今度こそ鼻で息をしなければと思うのに、はあ、と紺炉さんの吐息を間近に感じて体が強張ってしまう。
ダメ。も、苦しい。
離してほしいと伝えようとした瞬間、べろりと唇を舐められた。そのまま下唇を食まれ、こじ開けるように舌が入り込む。
「っ⁈ はぁ、ん、ぅ……」
出そうとした声は音になる前に飲み込まれた。そのまま分厚い舌がより深く入ってくる。息はできているのかいないのか、けれどさっきよりもだいぶ頭の奥がふわふわした。体中の力が抜けていく感覚に流されそうになって、このままではいけないと何とか踏みとどまる。
ドンドンと二回。反応がないのでもう二回。いつもより強く叩いてようやく解放された。
「お願い、待って紺炉さん……」
腰に回された腕が緩んだのを見計らって力なく紺炉さんを押す。言葉を言い終える前にぽろりと涙が零れてしまい、紺炉さんが「すまねェ」と謝るのが聞こえた。
「お前さんの気持ちも考えずに突っ走っちまった」
「違うんです。ちょっとびっくりしただけで」
心配させまいと慌てて目元を拭う。強めに擦ったせいでヒリリと痛んだけれど、もう涙が溢れることはなさそうだ。
紺炉さんは何も悪くない。さっきみたいなキスも恋人同士なら普通のことだ。むしろ私が慣れていないせいでたくさん我慢させているはずだ。恋人がするのはキスだけではないのだから。
だから私が早く紺炉さんに釣り合うような大人になればいい。それだけのことなのだけど。
「……ごめんなさい紺炉さん、決して嫌なわけじゃないんです。ただ、さっきは少し……怖くなってしまって」
目の前に伸びる階段をがむしゃらに駆け上がればいいと思っていた。ちょっとくらい無理しないと遠くにいる紺炉さんには到底追いつけないと。
でも今の気持ちを抱えたまま進んだら、いつか大事なものを落としてしまいそうな、そんな気がした。
「さっきのは階段というよりエレベーターで」
「えれべーたー?」
「えっと、さっきのキスは私にはまだ早かったみたいで、少しずつ練習してもいいですか? あとする前に言ってもらえると助かります。できれば心の準備がしたいので」
私の我儘は紺炉さんを今まで以上に我慢させてしまうかもしれない。それでも紺炉さんは聞かなくてもいいお願いを真剣に聞いてくれて、「分かった」と了承までしてくれた。
「俺もまたさっきみてェに大人げねェとこ見せちまうかもしれねェ。嫌だったら絶対に言ってくれ」
「紺炉さんが大人げない?」
「可笑しいかい? お前さんのこととなると年甲斐もなく欲しがりになっちまう」
余裕があってずっと大人だと思っていた紺炉さんは、そういうわけではなかったようで。
「お前さんさえ良ければもう少し練習するかい?」
「じゃあ、少しだけ」
長く思える階段も彼が降りてきてくれるなら、一緒に並んで歩める日もそう遠くないのかもしれない。