楡井秋彦
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マル秘と表紙に書かれた手帳片手に、楡井くんがずいとマイクのごとくペンを差し出してくる。
「身長、体重……は女性に訊くのはなしっすね。あとは血液型、誕生日、趣味、特技、得意技は……」
「と、得意技!? ないよ、そんなの」
「あはは、そうっすよね! 冗談っす」
矢継ぎ早な質問に頭が追いつかない。というか、質問相手が私でいいんだろうか。前に風鈴高校に通うお兄ちゃんについて似たような質問をされたことはあったけど。
「ねぇにれーくん、質問する相手間違ってない?」
確かあの手帳には楡井くんがかっこいいと思った人のデータが詰まってるはず。
「そんなわけないじゃないっすか! ちゃんと合ってるっすよ。ほら、答えて答えて」
合ってるんだ。いつの間に私は楡井くんにかっこいい判定されてたんだろ。
思い当たる節はないものの、催促されるままにさっきの質問にぽつぽつ答えていく。これが何になるのかわからないけれど、楡井くんはふむふむと頷きながら真剣な顔で手帳にペンを走らせていた。
「じゃあ最後の質問っす! ずばり、好きなタイプは?」
「えっ」
「あ、もしかして今好きな人いたりするっすか?」
「い、いないけど」
「ならよかったっす!」
私の言葉に楡井くんはほっとしたように顔を緩ませた。それにしても、
「うーん、好きなタイプか……」
ぼんやりとしたものはあるけれどいざ問われるとこれと言い切れるものがなかなか浮かばない。
「笑顔が素敵で、やさしい人かな」
「なるほど、あと喧嘩が強い人がいいとかあるっすか?」
「それは気にしたことないかも」
「でも、やっぱり強い人のがかっこよくないっすか?」
「うーん、どうだろ。何かに強い人は確かにかっこよく見えるけど、強いにも色々あるし」
楡井くんが言ったように喧嘩が強い人もいれば、心が強い人もいる。何に惹かれるかは人それぞれだ。
「にれーくんだって、喧嘩が強い人だけをその手帳にまとめてるわけじゃないでしょう?」
あれは言わば楡井くんの思う、かっこいいの詰まった手帳だ。
「これいつものとは違うんすけど」
「そうなの!?」
よく見れば確かに新品のように見える。けれど彼が普段使っているものとの違いまではわからなかった。てっきり前のを使い終えたから新しいのに変えたのかと。
「でも確かにそうっすね! 何をかっこいいと思うかは人それぞれ」
パタンと手帳を閉じてにっこりと笑う楡井くんに、うんうん頷く。
「じゃあオレはオレなりに、きみにかっこいいと思ってもらえるよう頑張るっす!」
再びうんうんと頷きかけて、えっ、と思った頃には楡井くんはパトロールに行くと遠くで大きく手を振っていた。
反射的にそれに応えるよう小さく手を振って、それから行き場のない手を頬に当てる。熱い。
「それはずるくない?」
上がる体温を手のひらで鎮めながら独りごちる。そして決めた。
あの言葉の意味を。楡井くんのことを。
今度会ったら絶対に、知りたいこと全部訊いてやるんだって。
「身長、体重……は女性に訊くのはなしっすね。あとは血液型、誕生日、趣味、特技、得意技は……」
「と、得意技!? ないよ、そんなの」
「あはは、そうっすよね! 冗談っす」
矢継ぎ早な質問に頭が追いつかない。というか、質問相手が私でいいんだろうか。前に風鈴高校に通うお兄ちゃんについて似たような質問をされたことはあったけど。
「ねぇにれーくん、質問する相手間違ってない?」
確かあの手帳には楡井くんがかっこいいと思った人のデータが詰まってるはず。
「そんなわけないじゃないっすか! ちゃんと合ってるっすよ。ほら、答えて答えて」
合ってるんだ。いつの間に私は楡井くんにかっこいい判定されてたんだろ。
思い当たる節はないものの、催促されるままにさっきの質問にぽつぽつ答えていく。これが何になるのかわからないけれど、楡井くんはふむふむと頷きながら真剣な顔で手帳にペンを走らせていた。
「じゃあ最後の質問っす! ずばり、好きなタイプは?」
「えっ」
「あ、もしかして今好きな人いたりするっすか?」
「い、いないけど」
「ならよかったっす!」
私の言葉に楡井くんはほっとしたように顔を緩ませた。それにしても、
「うーん、好きなタイプか……」
ぼんやりとしたものはあるけれどいざ問われるとこれと言い切れるものがなかなか浮かばない。
「笑顔が素敵で、やさしい人かな」
「なるほど、あと喧嘩が強い人がいいとかあるっすか?」
「それは気にしたことないかも」
「でも、やっぱり強い人のがかっこよくないっすか?」
「うーん、どうだろ。何かに強い人は確かにかっこよく見えるけど、強いにも色々あるし」
楡井くんが言ったように喧嘩が強い人もいれば、心が強い人もいる。何に惹かれるかは人それぞれだ。
「にれーくんだって、喧嘩が強い人だけをその手帳にまとめてるわけじゃないでしょう?」
あれは言わば楡井くんの思う、かっこいいの詰まった手帳だ。
「これいつものとは違うんすけど」
「そうなの!?」
よく見れば確かに新品のように見える。けれど彼が普段使っているものとの違いまではわからなかった。てっきり前のを使い終えたから新しいのに変えたのかと。
「でも確かにそうっすね! 何をかっこいいと思うかは人それぞれ」
パタンと手帳を閉じてにっこりと笑う楡井くんに、うんうん頷く。
「じゃあオレはオレなりに、きみにかっこいいと思ってもらえるよう頑張るっす!」
再びうんうんと頷きかけて、えっ、と思った頃には楡井くんはパトロールに行くと遠くで大きく手を振っていた。
反射的にそれに応えるよう小さく手を振って、それから行き場のない手を頬に当てる。熱い。
「それはずるくない?」
上がる体温を手のひらで鎮めながら独りごちる。そして決めた。
あの言葉の意味を。楡井くんのことを。
今度会ったら絶対に、知りたいこと全部訊いてやるんだって。
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