楡井秋彦
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オレには好きな子がいる。
けれど、その子には他に好きな人がいると知ってしまった。
人づてに聞いた話によると、その相手は「かっこよくて、ヒーローみたいな男の子」らしい。変なのに絡まれた時に助けてくれたんだとか。
ーーそりゃあ、そんなことされたら惚れちゃうっすよね。
ボウフウリンの一員なのにケンカの弱い自分とは大違いだ。もし相手がろくでなしだったら振り向いてもらえるかも、なんて都合よく考えていたのが恥ずかしい。そんなヒーローみたいにかっこよくて女の子の心を掻っ攫っていくような相手に、オレが勝てるはずないじゃないか。
失恋、かあ。
すんと勢いよく鼻をすすったせいか、奥がツンとする。景色もぼやけてきて、制服の袖で何度も目元を擦った。
「にれーくん?」
名前を呼ばれて思わずびくりと肩を揺らす。その声は、今、一番会いたくない人のものだった。オレの好きな子の声。いつもは呼ばれて嬉しくなるのに、今日ばかりは彼女の声を聴くたびに胸が苦しくなる。けどそれに気づかれるわけにはいかなくて、努めて明るく振る舞う。
「こんにちは! こんなところで会うなんて奇遇っすね」
上手く笑えてたかはわからないけれど、振り向いた先の彼女はいつもと同じように笑顔を返してくれた。しかしその手には可愛らしい小さな紙袋。
ああ、やっぱり。そうっすよねぇ。
「それ、チョコっすか?」
「えっ」
彼女の声が驚きで裏返る。
「今日、バレンタインですもんね」
きっと本命に、例のかっこよくてヒーローみたいな相手に渡すのだろう。嘘の吐けない彼女はみるみる顔を赤く染め、「うん」と小さく頷いた。
『上手くいくといいっすね!』
そう言って彼女の背中を押してあげられたらよかった。けれど、言葉は一向に声になってくれない。
ケンカも弱い。かっこよくない。ヒーローになんか絶対になれない。
そんなオレにできることといえば、彼女の恋を応援することくらいだったのに。
「あーもう! ほんとダサいっすね!」
突然の大声に驚いてアワアワする彼女の手をきゅっと掴む。
「に、にれーくん⁉︎」
未練がましくて、正直自分でもダサいと思う。でも何もしないまま、彼女を他の誰かに取られるのはもっとダサい。
「好きです」
かっこよく飲み込めなかった思いを彼女に伝える。
「ずっと前から君のことが好きです。大好きっす。そのチョコも、他の奴に渡してほしくない……んですけど?」
果たして彼女は困った顔をしているだろうか。それとも急に好きでもない奴に告白されて引いてるとか。反応が気になってちらりと様子を窺うと、耳まで真っ赤にした彼女がふるふると震えていた。
「え、あの」
「私も。私も楡井くんのことが好きです。実は今日チョコ渡すのと一緒に告白しようと思ってて……」
「えっ⁈」
おかしい、聞いていた話と全然違う。だって彼女の好きな人は、かっこよくてヒーローみたいな人だってーー。
「本当にオレでいいんすか⁈ 人違いじゃないっすか」
夢でも見てるんじゃないかと頬を抓るオレに、彼女は苦笑しながら告げた。
「私の好きな人は、自分の弱さを知っていてそれでも相手に立ち向かっていく、最高にかっこいいヒーローだよ」
けれど、その子には他に好きな人がいると知ってしまった。
人づてに聞いた話によると、その相手は「かっこよくて、ヒーローみたいな男の子」らしい。変なのに絡まれた時に助けてくれたんだとか。
ーーそりゃあ、そんなことされたら惚れちゃうっすよね。
ボウフウリンの一員なのにケンカの弱い自分とは大違いだ。もし相手がろくでなしだったら振り向いてもらえるかも、なんて都合よく考えていたのが恥ずかしい。そんなヒーローみたいにかっこよくて女の子の心を掻っ攫っていくような相手に、オレが勝てるはずないじゃないか。
失恋、かあ。
すんと勢いよく鼻をすすったせいか、奥がツンとする。景色もぼやけてきて、制服の袖で何度も目元を擦った。
「にれーくん?」
名前を呼ばれて思わずびくりと肩を揺らす。その声は、今、一番会いたくない人のものだった。オレの好きな子の声。いつもは呼ばれて嬉しくなるのに、今日ばかりは彼女の声を聴くたびに胸が苦しくなる。けどそれに気づかれるわけにはいかなくて、努めて明るく振る舞う。
「こんにちは! こんなところで会うなんて奇遇っすね」
上手く笑えてたかはわからないけれど、振り向いた先の彼女はいつもと同じように笑顔を返してくれた。しかしその手には可愛らしい小さな紙袋。
ああ、やっぱり。そうっすよねぇ。
「それ、チョコっすか?」
「えっ」
彼女の声が驚きで裏返る。
「今日、バレンタインですもんね」
きっと本命に、例のかっこよくてヒーローみたいな相手に渡すのだろう。嘘の吐けない彼女はみるみる顔を赤く染め、「うん」と小さく頷いた。
『上手くいくといいっすね!』
そう言って彼女の背中を押してあげられたらよかった。けれど、言葉は一向に声になってくれない。
ケンカも弱い。かっこよくない。ヒーローになんか絶対になれない。
そんなオレにできることといえば、彼女の恋を応援することくらいだったのに。
「あーもう! ほんとダサいっすね!」
突然の大声に驚いてアワアワする彼女の手をきゅっと掴む。
「に、にれーくん⁉︎」
未練がましくて、正直自分でもダサいと思う。でも何もしないまま、彼女を他の誰かに取られるのはもっとダサい。
「好きです」
かっこよく飲み込めなかった思いを彼女に伝える。
「ずっと前から君のことが好きです。大好きっす。そのチョコも、他の奴に渡してほしくない……んですけど?」
果たして彼女は困った顔をしているだろうか。それとも急に好きでもない奴に告白されて引いてるとか。反応が気になってちらりと様子を窺うと、耳まで真っ赤にした彼女がふるふると震えていた。
「え、あの」
「私も。私も楡井くんのことが好きです。実は今日チョコ渡すのと一緒に告白しようと思ってて……」
「えっ⁈」
おかしい、聞いていた話と全然違う。だって彼女の好きな人は、かっこよくてヒーローみたいな人だってーー。
「本当にオレでいいんすか⁈ 人違いじゃないっすか」
夢でも見てるんじゃないかと頬を抓るオレに、彼女は苦笑しながら告げた。
「私の好きな人は、自分の弱さを知っていてそれでも相手に立ち向かっていく、最高にかっこいいヒーローだよ」
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