梶蓮
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「ねぇ、梶くん」
隣を歩く恋人に呼びかける。けれど返事は返ってこない。じっと見つめてみても私の視線には気づいてくれなくて、でもここまではいつも通り。
梶くんの両耳をすっぽりと覆うヘッドホンからはシャカシャカと音が漏れている。今日も耳が悪くなるんじゃないかと心配になるほどの大音量で音楽を聴いているのだろう。
この状態の梶くんには私の声なんか当然届きっこない。そんな彼の意識をこちらに向けるにはコツがあって。
「ねぇねぇ、梶くん」
制服の裾を掴んで、くいくいと二回引っ張る。そうすると梶くんはすぐにヘッドホンを外して、私のほうを向いてくれるのだ。
「何だよ」
「ふふ、なんでもなーい」
「はぁ?!」
ふざけんなと青筋を立てる梶くんをひらりと躱すのも慣れたもの。そして梶くんもイタズラ好きの私の性格をよく知っているから、怒りっぽくはあっても鎮火は早い。
逃げる私を見て、梶くんが呆れたように溜め息を吐く。それから再びヘッドホンが彼の耳を覆った。
追いかけっこは始まる前に即終了。もうちょっと構ってくれたっていいのにさ。
ちぇー、と唇を尖らせて梶くんが追いついてくるのを待つ。
何か。何かもっと彼の気を引く方法は……。そんなことを考えていると、全部お見通しだと言わんばかりにすれ違いざまにおでこを軽く小突かれた。
「痛っ」
……くはなかった。ちゃんと加減してくれてるし。それよりもちょっとだけ笑顔を見せてくるのがずるい。前に「笑った!」って言ったら「笑ってねえ」の一点張りだったから、無意識っぽいんだけど。
さっきまであんなに構ってほしくて仕方なかったのに、そんな顔を見せられたら満足してしまう。それが私にしか見せない顔なら尚更。
絆されている自覚はある。もしかしたら私がチョロいだけかもだけど。
「は〜、もう好きすぎる」
口数が少なくて不器用で、怒りっぽくて。だけど優しくて、ちゃんと私を見てくれていて。そんな梶くんが好き。大好き。
ぽろりと溢れた本心にじわじわ羞恥がやってくる。うわ〜、言っちゃった。まあ、梶くんには聞こえてないだろうけど。
ちらりと隣を見やれば、私の視線に気づいたのかぱちりと梶くんと目が合った。いつもは全然気づかないのに珍しい。そう口にしようとすれば、私より先に梶くんの口が動いた。
「知ってる」
……何を、知ってるって? いや訊くべきは、
「っ、な、なんで……?!」
真っ赤になってわなわなと震える私に、梶くんはニヤリと意地悪く笑うだけだった。やっぱりずるい。問いただそうといつもみたいに制服の裾を引っ張るも、聞こえてませんみたいな顔をしてこっちを見ようともしない。でも、聞こえてるのはわかってるんだからね。
「ねぇ梶くん、ねぇってば!」
問いただすのに必死な私と、ニヤニヤと笑うばかりで頑なにこっちを向いてくれない梶くん。攻防はまだまだ続きそうだけど、せめていつからヘッドホンのシャカシャカ音が消えていたのか、それだけでも教えてほしい。
隣を歩く恋人に呼びかける。けれど返事は返ってこない。じっと見つめてみても私の視線には気づいてくれなくて、でもここまではいつも通り。
梶くんの両耳をすっぽりと覆うヘッドホンからはシャカシャカと音が漏れている。今日も耳が悪くなるんじゃないかと心配になるほどの大音量で音楽を聴いているのだろう。
この状態の梶くんには私の声なんか当然届きっこない。そんな彼の意識をこちらに向けるにはコツがあって。
「ねぇねぇ、梶くん」
制服の裾を掴んで、くいくいと二回引っ張る。そうすると梶くんはすぐにヘッドホンを外して、私のほうを向いてくれるのだ。
「何だよ」
「ふふ、なんでもなーい」
「はぁ?!」
ふざけんなと青筋を立てる梶くんをひらりと躱すのも慣れたもの。そして梶くんもイタズラ好きの私の性格をよく知っているから、怒りっぽくはあっても鎮火は早い。
逃げる私を見て、梶くんが呆れたように溜め息を吐く。それから再びヘッドホンが彼の耳を覆った。
追いかけっこは始まる前に即終了。もうちょっと構ってくれたっていいのにさ。
ちぇー、と唇を尖らせて梶くんが追いついてくるのを待つ。
何か。何かもっと彼の気を引く方法は……。そんなことを考えていると、全部お見通しだと言わんばかりにすれ違いざまにおでこを軽く小突かれた。
「痛っ」
……くはなかった。ちゃんと加減してくれてるし。それよりもちょっとだけ笑顔を見せてくるのがずるい。前に「笑った!」って言ったら「笑ってねえ」の一点張りだったから、無意識っぽいんだけど。
さっきまであんなに構ってほしくて仕方なかったのに、そんな顔を見せられたら満足してしまう。それが私にしか見せない顔なら尚更。
絆されている自覚はある。もしかしたら私がチョロいだけかもだけど。
「は〜、もう好きすぎる」
口数が少なくて不器用で、怒りっぽくて。だけど優しくて、ちゃんと私を見てくれていて。そんな梶くんが好き。大好き。
ぽろりと溢れた本心にじわじわ羞恥がやってくる。うわ〜、言っちゃった。まあ、梶くんには聞こえてないだろうけど。
ちらりと隣を見やれば、私の視線に気づいたのかぱちりと梶くんと目が合った。いつもは全然気づかないのに珍しい。そう口にしようとすれば、私より先に梶くんの口が動いた。
「知ってる」
……何を、知ってるって? いや訊くべきは、
「っ、な、なんで……?!」
真っ赤になってわなわなと震える私に、梶くんはニヤリと意地悪く笑うだけだった。やっぱりずるい。問いただそうといつもみたいに制服の裾を引っ張るも、聞こえてませんみたいな顔をしてこっちを見ようともしない。でも、聞こえてるのはわかってるんだからね。
「ねぇ梶くん、ねぇってば!」
問いただすのに必死な私と、ニヤニヤと笑うばかりで頑なにこっちを向いてくれない梶くん。攻防はまだまだ続きそうだけど、せめていつからヘッドホンのシャカシャカ音が消えていたのか、それだけでも教えてほしい。