梶蓮
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「ん」
それだけ言って、梶くんがずいと私の目の前にあるものを差し出してきた。一瞬花束かと思ったそれは、たくさんの棒付きキャンディ。それも梶くんがよく食べているお気に入りのもの。
そのカラフルなロリポップキャンディが淡い水色のリボンで綺麗に纏められていて、まるでミニブーケみたいになっている。
「わぁ! どうしたの、これ?」
「これは先輩が……いいから早く受け取れ」
強引に押し付けられた拍子にくしゃりと嫌な音がして、私は慌ててキャンディブーケを受け取った。風鈴高校でこんな素敵なブーケを作ってくれる先輩というと椿野さん辺りだろうか。せっかく綺麗なのに崩れてしまってはもったいない。
「ありがとう、梶くん」
「おう」
「でも私の誕生日、今日じゃないよ?」
私の言葉に梶くんが眉間に皺を寄せた。ガリッと彼が口にしていた飴が割れる音がする。怒っている、いやこれは機嫌が悪くなったっぽい。
何か気に障ることを言っただろうか。でも今日が誕生日じゃないのは本当だし、記念日でもなかったはず。あと何かあったっけ? どれだけ考えてもこんな素敵なプレゼントを貰う心当たりが全くなくて途方に暮れる。
「……あっ!」
一つだけ、思い当たることがあった。
「もしかして、バレンタインのお返し?」
気づいてしまえば、それしか答えはない。今日は三月十四日、ホワイトデー。
何で今まで気づかなかったのかと思うけど、去年はお返しを貰っていなかったから仕方ない。私もお返しが欲しくてチョコを渡したわけではなかったし、梶くんがお返しを買う姿も想像つかなくて、ホワイトデーという存在がすっぽり頭から抜け落ちていた。でも、そっか。
「ふふ、梶くんからのお返しかぁ」
「……んだよ」
「いやー、すごく嬉しいなと思って」
お返しがなくても別にいい。そう思っていたのは確かだけど、やっぱり貰えると嬉しいものだ。しかも梶くんの好きなキャンディをこんなにたくさん。ブーケにしてもらうのだって、わざわざ椿野さんに頼んでくれたのだろう。その気持ちが何より嬉しくて、ずっと頬が緩みっぱなしだ。
「大事に食べるね」
へへっとゆるゆるの笑顔を向けると、梶くんが目を細めて短く「おう」と答えた。珍しい梶くんの笑顔。しかも本人は笑っていることに気づいていないらしい。いつも私がじっと見つめて初めて気づくみたいで、今日も視線を察知した梶くんは「見んな」と早々にそっぽを向いてしまった。うーん、残念。
そんなことがあった数日後。どうして梶くんがお返しにキャンディを選んだのか、その理由を私は街でばったり会った椿野さんに聞くことになるのだけど、それはまた別のお話。
それだけ言って、梶くんがずいと私の目の前にあるものを差し出してきた。一瞬花束かと思ったそれは、たくさんの棒付きキャンディ。それも梶くんがよく食べているお気に入りのもの。
そのカラフルなロリポップキャンディが淡い水色のリボンで綺麗に纏められていて、まるでミニブーケみたいになっている。
「わぁ! どうしたの、これ?」
「これは先輩が……いいから早く受け取れ」
強引に押し付けられた拍子にくしゃりと嫌な音がして、私は慌ててキャンディブーケを受け取った。風鈴高校でこんな素敵なブーケを作ってくれる先輩というと椿野さん辺りだろうか。せっかく綺麗なのに崩れてしまってはもったいない。
「ありがとう、梶くん」
「おう」
「でも私の誕生日、今日じゃないよ?」
私の言葉に梶くんが眉間に皺を寄せた。ガリッと彼が口にしていた飴が割れる音がする。怒っている、いやこれは機嫌が悪くなったっぽい。
何か気に障ることを言っただろうか。でも今日が誕生日じゃないのは本当だし、記念日でもなかったはず。あと何かあったっけ? どれだけ考えてもこんな素敵なプレゼントを貰う心当たりが全くなくて途方に暮れる。
「……あっ!」
一つだけ、思い当たることがあった。
「もしかして、バレンタインのお返し?」
気づいてしまえば、それしか答えはない。今日は三月十四日、ホワイトデー。
何で今まで気づかなかったのかと思うけど、去年はお返しを貰っていなかったから仕方ない。私もお返しが欲しくてチョコを渡したわけではなかったし、梶くんがお返しを買う姿も想像つかなくて、ホワイトデーという存在がすっぽり頭から抜け落ちていた。でも、そっか。
「ふふ、梶くんからのお返しかぁ」
「……んだよ」
「いやー、すごく嬉しいなと思って」
お返しがなくても別にいい。そう思っていたのは確かだけど、やっぱり貰えると嬉しいものだ。しかも梶くんの好きなキャンディをこんなにたくさん。ブーケにしてもらうのだって、わざわざ椿野さんに頼んでくれたのだろう。その気持ちが何より嬉しくて、ずっと頬が緩みっぱなしだ。
「大事に食べるね」
へへっとゆるゆるの笑顔を向けると、梶くんが目を細めて短く「おう」と答えた。珍しい梶くんの笑顔。しかも本人は笑っていることに気づいていないらしい。いつも私がじっと見つめて初めて気づくみたいで、今日も視線を察知した梶くんは「見んな」と早々にそっぽを向いてしまった。うーん、残念。
そんなことがあった数日後。どうして梶くんがお返しにキャンディを選んだのか、その理由を私は街でばったり会った椿野さんに聞くことになるのだけど、それはまた別のお話。