梶蓮
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「桃の匂いがする」
すんと鼻を鳴らして顔を覗き込んできた梶くんは、私が手にしていたものを見て不思議そうに首を傾げた。
「飴じゃねえのか」
「ふふ、違う違う。リップだよ。新しく買ったの」
ピンクの可愛らしいリップケースにはみずみずしい桃の絵が描かれている。今若い女の子たちの間で人気のリップクリームで、キャッチフレーズは「これであなたも食べちゃいたくなる唇に」。全五種のフルーツの香りの色付きリップは、今をときめくイケメン俳優が共演者のモデルにキスをするCMも相まって売り切れ続出の大人気商品となっていた。
そして先日、ついについに、私もその大人気のリップをゲットした。薬局や化粧品売り場を何店舗もハシゴして運良く手に入れたその一本は、ずっと欲しかった桃の香りのするリップ。もちろん匂いも好きだけど、塗ると唇がほんのりピンクに染まるのもいい感じで気に入っている。
「どう? いいでしょ」
さっと塗って馴染ませて、梶くんに感想を求めてみる。彼はこういうのに疎そうだけど、なんて返してくるだろう。わくわくしながら待っていると、案の定梶くんはこてんと首を傾けた。そして、
「んむっ⁈」
何か言いたげに口を開いた彼は、無言のままかぷりと私の唇に噛みついてきた。そして呆気にとられた私の唇をはむっと自身の唇で挟んでくる。いつものキスじゃない。驚いて咄嗟に押し返すも、梶くんは止まってくれなかった。何度も食むように口づけられ、唇に軽く歯を立てられたり、舌先で舐められたり。解放される頃には塗ったばかりのリップはすっかり取れてしまい、逆に梶くんの唇はほんのりピンク色に染まっていた。
「……甘くねえ」
梶くんがぽつりと呟いた言葉に私は目を丸くする。もしかして今のキスはそれを確かめるためだけに? CMでも若手俳優が「食べちゃいたい」と甘い香りに誘われてモデルにキスをしていたけれど、あれはそういう演出だった。だから実際にはそんなことはないはずで。それとも梶くんの目には本当に「食べちゃいたくなる唇」に映ったんだろうか。
「それはそうだよ。リップだし、匂いだけ」
「ふーん」
好き放題しておきながら梶くんは不服そうだった。甘いと思ってたのに甘くなかったのが原因らしい。口直しとばかりにポケットから取り出した飴の包装をベリッと破り、口に放り込んでいる。もう、勝手なんだから。私はもう一度リップを塗り直し、それから梶くんの口元にリップが付いたままなのを思い出して、ティッシュを差し出しながら振り向いた。
「梶くん、これで……っ⁈」
視界が梶くんの顔で埋め尽くされて息を飲む。そのまま顔を固定され、ふわりと漂ってきたのは桃の香り。同時にするはずのない、甘くてとろけるような桃の味が口いっぱいに広がった。
「ちょ、梶くん!」
口の中にはまだ甘い余韻が残っていた。もう! と怒ってみせるも、梶くんにはちっとも響いていないようで。
「これで甘くなっただろ」
そう言ってにっと悪戯っぽく笑う彼の唇は、さっきよりもさらにピンクに色づいていた。
すんと鼻を鳴らして顔を覗き込んできた梶くんは、私が手にしていたものを見て不思議そうに首を傾げた。
「飴じゃねえのか」
「ふふ、違う違う。リップだよ。新しく買ったの」
ピンクの可愛らしいリップケースにはみずみずしい桃の絵が描かれている。今若い女の子たちの間で人気のリップクリームで、キャッチフレーズは「これであなたも食べちゃいたくなる唇に」。全五種のフルーツの香りの色付きリップは、今をときめくイケメン俳優が共演者のモデルにキスをするCMも相まって売り切れ続出の大人気商品となっていた。
そして先日、ついについに、私もその大人気のリップをゲットした。薬局や化粧品売り場を何店舗もハシゴして運良く手に入れたその一本は、ずっと欲しかった桃の香りのするリップ。もちろん匂いも好きだけど、塗ると唇がほんのりピンクに染まるのもいい感じで気に入っている。
「どう? いいでしょ」
さっと塗って馴染ませて、梶くんに感想を求めてみる。彼はこういうのに疎そうだけど、なんて返してくるだろう。わくわくしながら待っていると、案の定梶くんはこてんと首を傾けた。そして、
「んむっ⁈」
何か言いたげに口を開いた彼は、無言のままかぷりと私の唇に噛みついてきた。そして呆気にとられた私の唇をはむっと自身の唇で挟んでくる。いつものキスじゃない。驚いて咄嗟に押し返すも、梶くんは止まってくれなかった。何度も食むように口づけられ、唇に軽く歯を立てられたり、舌先で舐められたり。解放される頃には塗ったばかりのリップはすっかり取れてしまい、逆に梶くんの唇はほんのりピンク色に染まっていた。
「……甘くねえ」
梶くんがぽつりと呟いた言葉に私は目を丸くする。もしかして今のキスはそれを確かめるためだけに? CMでも若手俳優が「食べちゃいたい」と甘い香りに誘われてモデルにキスをしていたけれど、あれはそういう演出だった。だから実際にはそんなことはないはずで。それとも梶くんの目には本当に「食べちゃいたくなる唇」に映ったんだろうか。
「それはそうだよ。リップだし、匂いだけ」
「ふーん」
好き放題しておきながら梶くんは不服そうだった。甘いと思ってたのに甘くなかったのが原因らしい。口直しとばかりにポケットから取り出した飴の包装をベリッと破り、口に放り込んでいる。もう、勝手なんだから。私はもう一度リップを塗り直し、それから梶くんの口元にリップが付いたままなのを思い出して、ティッシュを差し出しながら振り向いた。
「梶くん、これで……っ⁈」
視界が梶くんの顔で埋め尽くされて息を飲む。そのまま顔を固定され、ふわりと漂ってきたのは桃の香り。同時にするはずのない、甘くてとろけるような桃の味が口いっぱいに広がった。
「ちょ、梶くん!」
口の中にはまだ甘い余韻が残っていた。もう! と怒ってみせるも、梶くんにはちっとも響いていないようで。
「これで甘くなっただろ」
そう言ってにっと悪戯っぽく笑う彼の唇は、さっきよりもさらにピンクに色づいていた。