梶蓮
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「もう聞いてよ梶くん!」
自分がこんな風に思いを吐き出せるなんて知らなかった。今までは喉元まで迫り上がったそれを飲み込むばかりだったから。言葉にすることが良いのか悪いのかまではわからないけれど、少なくとも私は、昔の私より今の私のがずっと好きだ。
それもこれも恋人である梶くんが感情の捌け口になってくれているおかげなのだけど。私の愚痴やら悩みごとを聞かされ続けるの、嫌じゃないのかな。
今更ながら不安になって話の途中でちらりと隣を歩く彼を見上げると、どうかしたかと言わんばかりに視線がかち合った。それから顎で続きは? と促される。
私は結局それに甘えて「でね、」と話を続けることにした。こうやって甘やかしてくるから、私もつい口が回ってしまうのかもしれない。いつもはヘッドフォンから音漏れするくらい大音量で曲を聴いてる癖に、こうやって私の愚痴に付き合ってくれる時はしなくてもいいのにわざわざ曲を止めてくれるし。
そういう言葉にしない彼の優しさが、じわじわと私の心をやわらかくしていく。このままだといつか歯止めが効かなくなるかもしれない。梶くんはそれさえも黙って受け止めてくれそうだけど。
溜まりに溜まった愚痴を吐き出して、ふぅとひと息吐く。すると見計らったかのように梶くんが制服のポケットに手を突っ込み、彼お気に入りのロリポップキャンディを取り出した。そして慣れた手付きで包装を外し、私の目の前に差し出してくる。
「ん」
「……」
「いらねぇの?」
怪訝そうな顔で梶くんがつんとキャンディで私の唇をつついた。微かに甘い香りがする。
「いる」
「ん」
あ、と口を開けば、そっとキャンディを中に押し込まれた。散々楽しくない話をし続けた口に、キャンディの甘さがじわりと沁みる。しかも私の好きないちご味。桃味が好きな梶くんがわざわざ私のために買ってくれてるのだと思うと、頬っぺたまで緩む気がした。
「気ぃ済んだか」
自身のキャンディを食べ終えたらしい梶くんが、新しいのを取り出して口に咥えた。
「うん、話聞いてくれてありがとね」
「別に。お前の機嫌が直ったならいい」
舌先でころりとキャンディを転がしながら、隣を歩く梶くんの手を握る。少しだけ怯えたようにぴくりと震えた手は、それでもちゃんと握り返してくれた。
「あとはえびせんがあれば完璧かも」
「は? 何でえびせん」
「知らないの梶くん? 甘いものとしょっぱいものは無限ループなんだよ。そして私はえびせんが大好き。さ、コンビニ行こコンビニ」
「別に今日じゃなくてもいいだろ」
コンビニは少し前に通り過ぎたばかりだ。だから梶くんも戻るのが面倒なのだろう。だけど私は梶くんを動かす魔法の言葉を知っている。
「そういえばコンビニの新作スイーツ、桃のパンナコッタだったような」
「……行く」
途端にくるりと進行方向を変える梶くんに私は思わず笑ってしまった。
梶くんは私の扱いに手慣れたものだけど、きっと私も、彼の扱いに十分手慣れているのだろう。
自分がこんな風に思いを吐き出せるなんて知らなかった。今までは喉元まで迫り上がったそれを飲み込むばかりだったから。言葉にすることが良いのか悪いのかまではわからないけれど、少なくとも私は、昔の私より今の私のがずっと好きだ。
それもこれも恋人である梶くんが感情の捌け口になってくれているおかげなのだけど。私の愚痴やら悩みごとを聞かされ続けるの、嫌じゃないのかな。
今更ながら不安になって話の途中でちらりと隣を歩く彼を見上げると、どうかしたかと言わんばかりに視線がかち合った。それから顎で続きは? と促される。
私は結局それに甘えて「でね、」と話を続けることにした。こうやって甘やかしてくるから、私もつい口が回ってしまうのかもしれない。いつもはヘッドフォンから音漏れするくらい大音量で曲を聴いてる癖に、こうやって私の愚痴に付き合ってくれる時はしなくてもいいのにわざわざ曲を止めてくれるし。
そういう言葉にしない彼の優しさが、じわじわと私の心をやわらかくしていく。このままだといつか歯止めが効かなくなるかもしれない。梶くんはそれさえも黙って受け止めてくれそうだけど。
溜まりに溜まった愚痴を吐き出して、ふぅとひと息吐く。すると見計らったかのように梶くんが制服のポケットに手を突っ込み、彼お気に入りのロリポップキャンディを取り出した。そして慣れた手付きで包装を外し、私の目の前に差し出してくる。
「ん」
「……」
「いらねぇの?」
怪訝そうな顔で梶くんがつんとキャンディで私の唇をつついた。微かに甘い香りがする。
「いる」
「ん」
あ、と口を開けば、そっとキャンディを中に押し込まれた。散々楽しくない話をし続けた口に、キャンディの甘さがじわりと沁みる。しかも私の好きないちご味。桃味が好きな梶くんがわざわざ私のために買ってくれてるのだと思うと、頬っぺたまで緩む気がした。
「気ぃ済んだか」
自身のキャンディを食べ終えたらしい梶くんが、新しいのを取り出して口に咥えた。
「うん、話聞いてくれてありがとね」
「別に。お前の機嫌が直ったならいい」
舌先でころりとキャンディを転がしながら、隣を歩く梶くんの手を握る。少しだけ怯えたようにぴくりと震えた手は、それでもちゃんと握り返してくれた。
「あとはえびせんがあれば完璧かも」
「は? 何でえびせん」
「知らないの梶くん? 甘いものとしょっぱいものは無限ループなんだよ。そして私はえびせんが大好き。さ、コンビニ行こコンビニ」
「別に今日じゃなくてもいいだろ」
コンビニは少し前に通り過ぎたばかりだ。だから梶くんも戻るのが面倒なのだろう。だけど私は梶くんを動かす魔法の言葉を知っている。
「そういえばコンビニの新作スイーツ、桃のパンナコッタだったような」
「……行く」
途端にくるりと進行方向を変える梶くんに私は思わず笑ってしまった。
梶くんは私の扱いに手慣れたものだけど、きっと私も、彼の扱いに十分手慣れているのだろう。
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