蘇枋隼飛
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公園の木々を初夏の爽やかな風が揺らしている。それからしゃら、と微かに音がして、私は釣られるように顔を上げた。
隣を歩く、蘇枋くんの横顔が視界に入る。相変わらず綺麗な顔をしているなとこっそり見つめていたら、前を向いていたはずの彼とぱちりと目が合った。
「そんなに見られると、俺穴開いちゃうかも」
悪戯っぽく微笑まれてドキリとする。その瞳も声もからかいを含んでいるとわかっているのに、心臓が落ち着かなくて上手く返せそうになかった。
「ご、ごめん!」
慌てて顔を背ける私にふふっと笑い声が降ってくる。
「冗談冗談、まぁ俺は君になら穴を開けられてもいいけどね」
冗談の上にさらに冗談を重ねて、蘇枋くんが目を細める。彼は意外とノリが良く、お茶目な一面のあるひとだ。私はそれを知っているから揶揄われてるなとわかるけど、他の人はきっとそうはいかないだろう。それなりに友達付き合いの長い私ですらたまに勘違いしそうになるし。
「で、俺の顔に何か付いてた?」
見ないふりをしてくれればいいのに、まだその話題で引っ張るか。にこにこと私を見つめる蘇枋くんはどこか楽しげだ。
「えっと、私もピアス開けようかなって」
「ピアス?」
さすがに蘇枋くんの横顔に見惚れてましたと正直に言うのは憚られて、咄嗟に誤魔化す。でもピアスに興味があるというのも嘘じゃない。
ことはちゃんも開けてるし、おしゃれでいいなって。
ただ問題はーー。
「痛い、かな?」
「うーん、どうだろ。俺は平気だったけど人によるかな」
「だよねぇ」
ピアスをつけてみたいという憧れはある。けれどそのためには耳朶に穴を開ける必要がある。そんな経験したことないから不安しかない。どちらかといえば注射も苦手だし。
沈んだ表情で自身の耳朶をいじっていると、蘇枋くんが励ますように言った。
「自分で開ける方法もあるけど、皮膚科とかでもやってもらえるらしいよ」
「そうなんだ!」
ピアッサーで自分で開ける方法しか頭になかった私はぱちりと目を瞬かせた。そっか、病院。それなら自分でやるよりも安心だ。
「今度駅前のとこ行ってみようかな」
「ああ、最近改装したところ?」
「そうそう」
少し前に駅前にある病院がリニューアルしたらしい。前はおじいちゃん先生がやっていたけれど、息子さんに代替わりして内装も綺麗になったのだとか。そういえばお母さんが、先生がダンディなイケメンだったとはしゃいでたっけ。
おじいちゃん先生に慣れてるからそれはそれで行きにくい気もするけれど。
「……やっぱり、俺がやるよ」
「え?」
「ピアス。俺が開けてあげる」
隣から蘇枋くんの手が伸びてきて、私の耳朶に触れた。そのままふにふにと指先で弄られて、思わず肩を竦める。
「ちょ、蘇枋く……」
突然触れられて、顔に熱が集まってくるのが自分でもわかった。また冗談だろうかと彼を見上げ、その表情にぞくりとする。
蘇枋くんはいつも通り、目を眇めて笑っていた。けれどその瞳の奥はどこか怒っているようにも見えて、思わずごくりと唾を飲んだ。
「あの……」
逃げ出したくなるのをぐっと堪えて、静かに私を見下ろす蘇枋くんに声をかける。すると彼はパッと手を離して、何事もなかったかのようににこりと微笑んだ。
「俺、得意なんだ。痛くしないから安心して。それに病院だとお金もかかるでしょ」
「でも……」
「大丈夫だから。ピアス開ける時は俺に言って。約束、ね」
そう言って蘇枋くんは私の小指を自身の小指で絡め取った。いわゆる指切りげんまん、というやつだ。念には念をということらしい。そこまでしなくても、と思うのだけど。
「ねぇ、蘇枋くん」
「ん?」
呼びかけに応じる蘇枋くんが不思議そうに私を見つめる。そこに怒っている様子は微塵もなくて、だからやっぱりさっきのは見間違いだったのだと思う。
「ごめん、やっぱ何でもない」
「えー」
きっとそう。だって蘇枋くんが怒ってるところなんて見たことないし、理由も、ないし。
ただ、そう思っていたのは私だけのようで。
後日色々あって蘇枋くんと付き合うことになり、ことはちゃんにそれまでの経緯を話したら「うわ、嫉妬やば! てかアンタも鈍感すぎ!」と言われてしまったのだった。
隣を歩く、蘇枋くんの横顔が視界に入る。相変わらず綺麗な顔をしているなとこっそり見つめていたら、前を向いていたはずの彼とぱちりと目が合った。
「そんなに見られると、俺穴開いちゃうかも」
悪戯っぽく微笑まれてドキリとする。その瞳も声もからかいを含んでいるとわかっているのに、心臓が落ち着かなくて上手く返せそうになかった。
「ご、ごめん!」
慌てて顔を背ける私にふふっと笑い声が降ってくる。
「冗談冗談、まぁ俺は君になら穴を開けられてもいいけどね」
冗談の上にさらに冗談を重ねて、蘇枋くんが目を細める。彼は意外とノリが良く、お茶目な一面のあるひとだ。私はそれを知っているから揶揄われてるなとわかるけど、他の人はきっとそうはいかないだろう。それなりに友達付き合いの長い私ですらたまに勘違いしそうになるし。
「で、俺の顔に何か付いてた?」
見ないふりをしてくれればいいのに、まだその話題で引っ張るか。にこにこと私を見つめる蘇枋くんはどこか楽しげだ。
「えっと、私もピアス開けようかなって」
「ピアス?」
さすがに蘇枋くんの横顔に見惚れてましたと正直に言うのは憚られて、咄嗟に誤魔化す。でもピアスに興味があるというのも嘘じゃない。
ことはちゃんも開けてるし、おしゃれでいいなって。
ただ問題はーー。
「痛い、かな?」
「うーん、どうだろ。俺は平気だったけど人によるかな」
「だよねぇ」
ピアスをつけてみたいという憧れはある。けれどそのためには耳朶に穴を開ける必要がある。そんな経験したことないから不安しかない。どちらかといえば注射も苦手だし。
沈んだ表情で自身の耳朶をいじっていると、蘇枋くんが励ますように言った。
「自分で開ける方法もあるけど、皮膚科とかでもやってもらえるらしいよ」
「そうなんだ!」
ピアッサーで自分で開ける方法しか頭になかった私はぱちりと目を瞬かせた。そっか、病院。それなら自分でやるよりも安心だ。
「今度駅前のとこ行ってみようかな」
「ああ、最近改装したところ?」
「そうそう」
少し前に駅前にある病院がリニューアルしたらしい。前はおじいちゃん先生がやっていたけれど、息子さんに代替わりして内装も綺麗になったのだとか。そういえばお母さんが、先生がダンディなイケメンだったとはしゃいでたっけ。
おじいちゃん先生に慣れてるからそれはそれで行きにくい気もするけれど。
「……やっぱり、俺がやるよ」
「え?」
「ピアス。俺が開けてあげる」
隣から蘇枋くんの手が伸びてきて、私の耳朶に触れた。そのままふにふにと指先で弄られて、思わず肩を竦める。
「ちょ、蘇枋く……」
突然触れられて、顔に熱が集まってくるのが自分でもわかった。また冗談だろうかと彼を見上げ、その表情にぞくりとする。
蘇枋くんはいつも通り、目を眇めて笑っていた。けれどその瞳の奥はどこか怒っているようにも見えて、思わずごくりと唾を飲んだ。
「あの……」
逃げ出したくなるのをぐっと堪えて、静かに私を見下ろす蘇枋くんに声をかける。すると彼はパッと手を離して、何事もなかったかのようににこりと微笑んだ。
「俺、得意なんだ。痛くしないから安心して。それに病院だとお金もかかるでしょ」
「でも……」
「大丈夫だから。ピアス開ける時は俺に言って。約束、ね」
そう言って蘇枋くんは私の小指を自身の小指で絡め取った。いわゆる指切りげんまん、というやつだ。念には念をということらしい。そこまでしなくても、と思うのだけど。
「ねぇ、蘇枋くん」
「ん?」
呼びかけに応じる蘇枋くんが不思議そうに私を見つめる。そこに怒っている様子は微塵もなくて、だからやっぱりさっきのは見間違いだったのだと思う。
「ごめん、やっぱ何でもない」
「えー」
きっとそう。だって蘇枋くんが怒ってるところなんて見たことないし、理由も、ないし。
ただ、そう思っていたのは私だけのようで。
後日色々あって蘇枋くんと付き合うことになり、ことはちゃんにそれまでの経緯を話したら「うわ、嫉妬やば! てかアンタも鈍感すぎ!」と言われてしまったのだった。