矢口八虎
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「やーとらっ!」
「んー?」
カシャ、という音に面食らう。振り向いた先にはスマホを構えた彼女がいて、嫌な予感にひくりと頬が引きつるのを感じた。
「え、ちょ、何いきなり」
「何でもなーい」
何でもないことはないだろう。彼女が「んふふ」と意味ありげに笑う時は大抵何か企んでいる時だ。
彼女はくるっと俺に背を向けて、鼻歌まじりにスマホ画面に指を走らせていた。上から覗き込もうとすれば、「だーめ」と何度も躱されて。けど俺も大人しく引き下がる気はなかった。「おりゃ」彼女のお腹に両腕を回し、そのまま思い切り後ろに体重をかける。「きゃー!」彼女の声はジェットコースターに乗った時みたいに楽しげだ。
「で、何してたの?」
彼女を後ろから抱えたまま、その肩に顎を乗せて彼女の手元を覗く。さっきまで頑なに見せようとしなかったのに、彼女の中で「もういいや」となったのだろう。見て見て! とスマホ画面を俺のほうへと近づけてくる。
「自信作!」
「何、絵描いたの? って、げっ!」
そこに写っていたのは俺だった。さっき振り向いた瞬間に撮ったのだろう。何とも気の抜けた、締まりのない顔をしている。
うわー、恥っず! 言ってくれればちゃんとしたのに。
そして写真の中の俺には、頭には小さくて丸い耳、顔には特徴的な模様とヒゲが足されていた。
「何これ」
「トラ!」
「はは、トラね。トラ」
「うん、だって今年寅年だし。これは八虎トラ!」
「それ頭痛が痛いみたいになってね?」
新年早々、何て意味のない会話をしてるんだろう。けど、この時間がどうしようもなく愛おしいと思ってしまう俺は、重症かもしれない。少し子供っぽいところのある彼女が可愛くて、眩しくて、こんな何てことない会話で癒される。
あー、こういうの。何か恋人同士っぽくていいな。
まあ、ぽいじゃなくて、歴とした恋人同士なのだけど。
「さて、八虎くんや」
「ん?」
腕の中の彼女が、くるりと身体を反転させて俺を見上げた。その目からはさっきまでの子供っぽい煌めきは消えていた。代わりに彼女から匂い立つのは、くらりと目眩がするほどの色香。
「私は今、獰猛なトラに捕まってしまっているわけだけど、この後どうなるのかな」
彼女は、まさに妖艶という言葉がぴったりの笑みを浮かべてそう告げた。
今日は一月二日。
両親は二人とも出かけていて、帰ってこない。
「そんなの決まってんじゃん」
俺は彼女の服の中に手を滑らせ、誘うような唇を貪る。
虎は肉食獣だ。狙った獲物は骨の髄まで味わい尽くす。しかし俺がそうかと言われれば難しい話で、実は彼女のほうがーーと、思ったりするのである。
「んー?」
カシャ、という音に面食らう。振り向いた先にはスマホを構えた彼女がいて、嫌な予感にひくりと頬が引きつるのを感じた。
「え、ちょ、何いきなり」
「何でもなーい」
何でもないことはないだろう。彼女が「んふふ」と意味ありげに笑う時は大抵何か企んでいる時だ。
彼女はくるっと俺に背を向けて、鼻歌まじりにスマホ画面に指を走らせていた。上から覗き込もうとすれば、「だーめ」と何度も躱されて。けど俺も大人しく引き下がる気はなかった。「おりゃ」彼女のお腹に両腕を回し、そのまま思い切り後ろに体重をかける。「きゃー!」彼女の声はジェットコースターに乗った時みたいに楽しげだ。
「で、何してたの?」
彼女を後ろから抱えたまま、その肩に顎を乗せて彼女の手元を覗く。さっきまで頑なに見せようとしなかったのに、彼女の中で「もういいや」となったのだろう。見て見て! とスマホ画面を俺のほうへと近づけてくる。
「自信作!」
「何、絵描いたの? って、げっ!」
そこに写っていたのは俺だった。さっき振り向いた瞬間に撮ったのだろう。何とも気の抜けた、締まりのない顔をしている。
うわー、恥っず! 言ってくれればちゃんとしたのに。
そして写真の中の俺には、頭には小さくて丸い耳、顔には特徴的な模様とヒゲが足されていた。
「何これ」
「トラ!」
「はは、トラね。トラ」
「うん、だって今年寅年だし。これは八虎トラ!」
「それ頭痛が痛いみたいになってね?」
新年早々、何て意味のない会話をしてるんだろう。けど、この時間がどうしようもなく愛おしいと思ってしまう俺は、重症かもしれない。少し子供っぽいところのある彼女が可愛くて、眩しくて、こんな何てことない会話で癒される。
あー、こういうの。何か恋人同士っぽくていいな。
まあ、ぽいじゃなくて、歴とした恋人同士なのだけど。
「さて、八虎くんや」
「ん?」
腕の中の彼女が、くるりと身体を反転させて俺を見上げた。その目からはさっきまでの子供っぽい煌めきは消えていた。代わりに彼女から匂い立つのは、くらりと目眩がするほどの色香。
「私は今、獰猛なトラに捕まってしまっているわけだけど、この後どうなるのかな」
彼女は、まさに妖艶という言葉がぴったりの笑みを浮かべてそう告げた。
今日は一月二日。
両親は二人とも出かけていて、帰ってこない。
「そんなの決まってんじゃん」
俺は彼女の服の中に手を滑らせ、誘うような唇を貪る。
虎は肉食獣だ。狙った獲物は骨の髄まで味わい尽くす。しかし俺がそうかと言われれば難しい話で、実は彼女のほうがーーと、思ったりするのである。
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