鳴海弦
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私物化された隊長室に私が足を踏み入れるなり、鳴海隊長がにやりと笑った。
ーーああ、そうだ、そうだったな。わかっているとも。
そう言いたげな表情で一人でうんうん頷き、鳴海隊長は何やら勝手に納得した様子。それならそれで、話は早いのだけど。
「おい、何をボーっとしている。ボクに用があって来たんだろ?」
「ああ、そういえばそうでした」
足の踏み場を探しながら、布団の上で胡座をかいている鳴海隊長の元へと向かう。それからすっと彼の前に手のひらを差し出せば、下ろされた前髪の下でぱちりと両目が瞬くのが見えた。
「……はっ、そう来たか! まあいいだろう、ボクは寛大だからな。だが、その前に言うべきことがあるんじゃないか?」
言うべきこと……。確かに無言で手を差し出すのは失礼だったかもしれない。言葉にしないことが配慮だと思っていた自分が恥ずかしい。
私は意を決して、じっと私の言葉を待つ鳴海隊長に告げた。
「先月貸したお金返してください!」
「そうそう、トリックオアトリートってな!」
「……え?」
「は?」
声が重なって上手く聞き取れなかったけど、この人いまトリックオアトリートって言った? まさか、ね。
「鳴海隊長」
静かに呼びかけると鳴海隊長がびくりと肩を震わせた。
「先月貸したお金、今月末には返すって約束しましたよね」
「……」
「この前給料日もあったと思うんですけど」
詰め寄ると、さっきまで胡座をかいていた鳴海隊長がいつの間にか正座していた。そして佇まいを直してから綺麗なフォームで布団に頭を垂れる。
「ハロウィンに免じてもう一か月待ってくれ!!」
「何ですかハロウィンに免じてって! どうせ忘れてたんでしょう」
「ぐっ、うっかり忘れることだってあるだろう! ほら、せっかくのハロウィンだ。特別にトリックでもトリートでも好きなほうを言うといい」
「そんなのマネー一択ですよ!」
ぴしゃりと跳ね除けるも、鳴海隊長も諦めない。段ボールの山の中から秘蔵のお菓子やらジュースやらを引っ張り出してきて必死におもてなしを始めるものだから、私は渋々「次の給料が入ったら絶対に返してくださいね」と言うしかなかった。
ーーああ、そうだ、そうだったな。わかっているとも。
そう言いたげな表情で一人でうんうん頷き、鳴海隊長は何やら勝手に納得した様子。それならそれで、話は早いのだけど。
「おい、何をボーっとしている。ボクに用があって来たんだろ?」
「ああ、そういえばそうでした」
足の踏み場を探しながら、布団の上で胡座をかいている鳴海隊長の元へと向かう。それからすっと彼の前に手のひらを差し出せば、下ろされた前髪の下でぱちりと両目が瞬くのが見えた。
「……はっ、そう来たか! まあいいだろう、ボクは寛大だからな。だが、その前に言うべきことがあるんじゃないか?」
言うべきこと……。確かに無言で手を差し出すのは失礼だったかもしれない。言葉にしないことが配慮だと思っていた自分が恥ずかしい。
私は意を決して、じっと私の言葉を待つ鳴海隊長に告げた。
「先月貸したお金返してください!」
「そうそう、トリックオアトリートってな!」
「……え?」
「は?」
声が重なって上手く聞き取れなかったけど、この人いまトリックオアトリートって言った? まさか、ね。
「鳴海隊長」
静かに呼びかけると鳴海隊長がびくりと肩を震わせた。
「先月貸したお金、今月末には返すって約束しましたよね」
「……」
「この前給料日もあったと思うんですけど」
詰め寄ると、さっきまで胡座をかいていた鳴海隊長がいつの間にか正座していた。そして佇まいを直してから綺麗なフォームで布団に頭を垂れる。
「ハロウィンに免じてもう一か月待ってくれ!!」
「何ですかハロウィンに免じてって! どうせ忘れてたんでしょう」
「ぐっ、うっかり忘れることだってあるだろう! ほら、せっかくのハロウィンだ。特別にトリックでもトリートでも好きなほうを言うといい」
「そんなのマネー一択ですよ!」
ぴしゃりと跳ね除けるも、鳴海隊長も諦めない。段ボールの山の中から秘蔵のお菓子やらジュースやらを引っ張り出してきて必死におもてなしを始めるものだから、私は渋々「次の給料が入ったら絶対に返してくださいね」と言うしかなかった。
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