鳴海弦
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ソファに座ってぼんやりとテレビを眺めている時のことだった。不意に隣に座っていた弦の顔が近づいてきて、咄嗟に手のひらを前に出す。すぐにふにっと柔らかな感触がして、「おい」と不機嫌な声が飛んできた。長い前髪から覗く双眸は、これは何の真似だと言いたげだ。
「今日はそういう気分じゃない」
こちらに体重をかけてくる弦を押し返しながらそう告げれば、彼の視線が一段と鋭くなるのを感じた。
「は? 何で?」
「だからそのままの意味だって。そういう時もあるの」
「嘘をつくな」
「……嘘じゃない」
「ボクの目は誤魔化せんぞ。キミは嘘をつく時、目を伏せる癖がある」
ハッとして顔を上げ、すぐにしまったと唇を噛む。私のことなんて全部お見通しだと言わんばかりの弦と目が合って余計悔しくなった。私は弦のことがわからないというのに。
俯く私の様子を窺うように、弦が顔を覗き込んでくる。私はそれすらも嫌で、避けるように顔を背けてからふるふると首を横に振った。
「弦は誰でもいいのかもしれないけど、私は二股するような人とはそういうことしたくない」
「フタマタ?」
私の言葉に弦はパチクリと瞬きを繰り返し、不思議そうに首を傾げた。浮気した張本人だというのに白々しい。
「私、知ってるんだから! 弦がこの前の合同演習の時に第3の子ナンパしたって」
「は? …………はあぁぁぁ!?」
実際に私がその現場に居合わせたわけではないけれど、何人もの隊員がその現場を目撃したのだという。第1部隊の隊長である鳴海弦が第3の隊員の一人を、それはもう熱心に口説いていたと。
確かに、私に至らない部分はたくさんあるだろう。でもだからといって、私という恋人がいながら他の子を口説くのは如何なものか。
「ご、誤解だ!」
「信じられるわけないでしょ。それに私、小隊長たちが食堂で話してるの聞いたんだから」
彼らにとっては食事中の雑談に過ぎなかったのだろう。けれど私は食事が喉を通らなかった。話題になっていたのが自分の恋人で、しかも知らない誰かを口説いていたとなれば当然だ。
「そういうことは私じゃなくて、この前口説いた子にでもしなよ」
正直別れたくはない。でもきっと別れたほうがお互いのためだ。
そう思って勇気を出して提案したのに、弦は今まで見たことのないくらい嫌そうな顔をしていた。
「ふざけるな、何でボクがアイツと……いやダメだ! 想像しかけた、最悪だ!」
思い切り顔を顰め、何かをかき消すように両手で宙をパタパタして。弦にとって悪くない提案をしたはずなのに予想外の反応が返ってきて困惑していると、落ち着きを取り戻したらしい彼が一際大きな溜め息を吐いた。
「いいか、よく聞け。確かにボクは合同演習の時に第3のやつに声をかけた」
「やっぱり!」
「最後まで聞け。そいつは第3部隊のヒラ隊員、保科宗四郎とか言ったか。そのおかっぱ糸目を第1にスカウトしただけだ。しかもアイツ、ボク様の誘いを即断りやがった!!」
「ほしな、そうしろう?」
そういえば第6の保科隊長の弟さんがそんな名前だった気がする。今は第3にいるのか。
「……え、熱心に口説いてた子って」
「その言い方はやめろ! ボクはあんなやつ熱心に口説いた覚えはない!!」
何にせよ弦は女の子を口説いたわけではなく、第3の有能な男性隊員を第1にスカウトしただけだったと。つまりは私の勘違い。
「ご、ごめんなさい」
しゅんとする私に弦は意外にもあっさりと答えた。
「別に。誤解が解けたならそれでいい」
「でもすごいね、その保科って人。弦の誘いを断るなんて」
「はぁ? キミがそれを言うのか」
「え?」
どういう意味かと問うより先に、弦が私の唇を塞いだ。わざとらしくリップ音を残して、離れていく薄い唇が意地悪く弧を描く。
「ボクのデートの誘いや告白を数え切れないほど断ってきたキミが言うな」
「そ、それは……」
どうして私なのかとか、私と弦とでは釣り合いが取れないだとか。理由は山ほどある。けれどそれを全部蹴散らしてくるものだから、私のほうが折れたのだ。
「全く、ボクの誘いをここまで断るやつはキミくらいだぞ」
弦がそっと私の腰に腕を回し抱き寄せた。それからゆっくりと押し倒されて、「今度は断ってくれるなよ」と耳元で低く囁かれるまま、私は受け入れるように目を閉じたのだった。
「今日はそういう気分じゃない」
こちらに体重をかけてくる弦を押し返しながらそう告げれば、彼の視線が一段と鋭くなるのを感じた。
「は? 何で?」
「だからそのままの意味だって。そういう時もあるの」
「嘘をつくな」
「……嘘じゃない」
「ボクの目は誤魔化せんぞ。キミは嘘をつく時、目を伏せる癖がある」
ハッとして顔を上げ、すぐにしまったと唇を噛む。私のことなんて全部お見通しだと言わんばかりの弦と目が合って余計悔しくなった。私は弦のことがわからないというのに。
俯く私の様子を窺うように、弦が顔を覗き込んでくる。私はそれすらも嫌で、避けるように顔を背けてからふるふると首を横に振った。
「弦は誰でもいいのかもしれないけど、私は二股するような人とはそういうことしたくない」
「フタマタ?」
私の言葉に弦はパチクリと瞬きを繰り返し、不思議そうに首を傾げた。浮気した張本人だというのに白々しい。
「私、知ってるんだから! 弦がこの前の合同演習の時に第3の子ナンパしたって」
「は? …………はあぁぁぁ!?」
実際に私がその現場に居合わせたわけではないけれど、何人もの隊員がその現場を目撃したのだという。第1部隊の隊長である鳴海弦が第3の隊員の一人を、それはもう熱心に口説いていたと。
確かに、私に至らない部分はたくさんあるだろう。でもだからといって、私という恋人がいながら他の子を口説くのは如何なものか。
「ご、誤解だ!」
「信じられるわけないでしょ。それに私、小隊長たちが食堂で話してるの聞いたんだから」
彼らにとっては食事中の雑談に過ぎなかったのだろう。けれど私は食事が喉を通らなかった。話題になっていたのが自分の恋人で、しかも知らない誰かを口説いていたとなれば当然だ。
「そういうことは私じゃなくて、この前口説いた子にでもしなよ」
正直別れたくはない。でもきっと別れたほうがお互いのためだ。
そう思って勇気を出して提案したのに、弦は今まで見たことのないくらい嫌そうな顔をしていた。
「ふざけるな、何でボクがアイツと……いやダメだ! 想像しかけた、最悪だ!」
思い切り顔を顰め、何かをかき消すように両手で宙をパタパタして。弦にとって悪くない提案をしたはずなのに予想外の反応が返ってきて困惑していると、落ち着きを取り戻したらしい彼が一際大きな溜め息を吐いた。
「いいか、よく聞け。確かにボクは合同演習の時に第3のやつに声をかけた」
「やっぱり!」
「最後まで聞け。そいつは第3部隊のヒラ隊員、保科宗四郎とか言ったか。そのおかっぱ糸目を第1にスカウトしただけだ。しかもアイツ、ボク様の誘いを即断りやがった!!」
「ほしな、そうしろう?」
そういえば第6の保科隊長の弟さんがそんな名前だった気がする。今は第3にいるのか。
「……え、熱心に口説いてた子って」
「その言い方はやめろ! ボクはあんなやつ熱心に口説いた覚えはない!!」
何にせよ弦は女の子を口説いたわけではなく、第3の有能な男性隊員を第1にスカウトしただけだったと。つまりは私の勘違い。
「ご、ごめんなさい」
しゅんとする私に弦は意外にもあっさりと答えた。
「別に。誤解が解けたならそれでいい」
「でもすごいね、その保科って人。弦の誘いを断るなんて」
「はぁ? キミがそれを言うのか」
「え?」
どういう意味かと問うより先に、弦が私の唇を塞いだ。わざとらしくリップ音を残して、離れていく薄い唇が意地悪く弧を描く。
「ボクのデートの誘いや告白を数え切れないほど断ってきたキミが言うな」
「そ、それは……」
どうして私なのかとか、私と弦とでは釣り合いが取れないだとか。理由は山ほどある。けれどそれを全部蹴散らしてくるものだから、私のほうが折れたのだ。
「全く、ボクの誘いをここまで断るやつはキミくらいだぞ」
弦がそっと私の腰に腕を回し抱き寄せた。それからゆっくりと押し倒されて、「今度は断ってくれるなよ」と耳元で低く囁かれるまま、私は受け入れるように目を閉じたのだった。