鳴海弦
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少し離れたところに見覚えのある後ろ姿を見つけ、にやりと口角が上がる。そこにいたのはボクの一年あとに入隊してきた後輩であり、ボクが隊長になった今も敬うことなく適当にあしらってくる部下だった。
昨日も長谷川の命令だとかでボクの宝の山を容赦なく片付けてきて。土下座してやめてくれと頼んだのにあいつはそんなボクを冷めた目で見据え、信じられないことに部屋主であるボクごと部屋から追い出しやがった。あー、思い出すだけで腹が立つ。
まぁそんなことがあったからこそ、あいつの後ろ姿を見た瞬間に昨日の仕返しをしてやろうと思いついたわけだが。
息を潜め足音を忍ばせてそろりと近づく。あいつは手にした資料に集中しているようで、ボクがいることには気づいていないようだった。いいぞ、そのまま集中してろ。
ボクはなるべく音を立てないように、持っていたビニール袋から買ったばかりのエナドリを取り出した。夏ということもありキンキンに冷えている。これをあいつの首に当ててやったらどうなるか。きっと、いや間違いなくみっともない悲鳴を上げることだろう。
想像しただけで声を出して笑いそうになるのをぐっと堪え、あいつの背後を陣取る。それから気取られる前にがら空きの首筋に思い切り押し当てーー。
「ひゃう!?」
弾かれたように細い肩が揺れ、少女のような甲高い悲鳴が周囲に響いた。それは普段のあいつとは似ても似つかない声で、何故だか変に心臓が落ち着かない。自分がしようと思って仕返しをしたはずなのに、どこか背徳感があるような。
「な、鳴海隊長……?」
慌てて振り向いたあいつは見たことがないくらい顔を真っ赤にしていた。その目にはうっすらと涙の膜が張っているようにも見えて思わず息を呑む。
「もう! 驚かさないでくだ……んぐっ!?」
こちらに向かってくる人の気配を感じ、咄嗟に文句を言おうとする部下の口を手で塞いでいた。そしてそのまま人気のない廊下へと引っ張っていく。
よし、ここなら誰も通らないだろう。周囲を確認してから手を離せば、苦しそうに肩で息をしながら「何なんですか急に!」と睨まれた。
何なんですか、だって? そんなのこっちが聞きたいくらいだ。
「言っておくが、ボクは悪くないからな!」
「はぁ!?」
そうだ、ボクは悪くない。
だってあんなの予想できないだろ。急に普段出さないような声を出したり、真っ赤になって涙目になったり。今だってそんな風に見上げてきて、自分がどんな顔をしているのかわかっていないのか。
ボクはじぃっと眉間に皺を寄せる部下を見つめた。そしてガンを飛ばされたと勘違いして睨み返してくる部下に、わかっていないのだろうなと結論づける。
ボクは呆れたように溜息をついてから、部下の眉間に思い切りデコピンを食らわせてやった。やっぱり悪いのはボクではなく、無自覚過ぎるこいつだろう。
昨日も長谷川の命令だとかでボクの宝の山を容赦なく片付けてきて。土下座してやめてくれと頼んだのにあいつはそんなボクを冷めた目で見据え、信じられないことに部屋主であるボクごと部屋から追い出しやがった。あー、思い出すだけで腹が立つ。
まぁそんなことがあったからこそ、あいつの後ろ姿を見た瞬間に昨日の仕返しをしてやろうと思いついたわけだが。
息を潜め足音を忍ばせてそろりと近づく。あいつは手にした資料に集中しているようで、ボクがいることには気づいていないようだった。いいぞ、そのまま集中してろ。
ボクはなるべく音を立てないように、持っていたビニール袋から買ったばかりのエナドリを取り出した。夏ということもありキンキンに冷えている。これをあいつの首に当ててやったらどうなるか。きっと、いや間違いなくみっともない悲鳴を上げることだろう。
想像しただけで声を出して笑いそうになるのをぐっと堪え、あいつの背後を陣取る。それから気取られる前にがら空きの首筋に思い切り押し当てーー。
「ひゃう!?」
弾かれたように細い肩が揺れ、少女のような甲高い悲鳴が周囲に響いた。それは普段のあいつとは似ても似つかない声で、何故だか変に心臓が落ち着かない。自分がしようと思って仕返しをしたはずなのに、どこか背徳感があるような。
「な、鳴海隊長……?」
慌てて振り向いたあいつは見たことがないくらい顔を真っ赤にしていた。その目にはうっすらと涙の膜が張っているようにも見えて思わず息を呑む。
「もう! 驚かさないでくだ……んぐっ!?」
こちらに向かってくる人の気配を感じ、咄嗟に文句を言おうとする部下の口を手で塞いでいた。そしてそのまま人気のない廊下へと引っ張っていく。
よし、ここなら誰も通らないだろう。周囲を確認してから手を離せば、苦しそうに肩で息をしながら「何なんですか急に!」と睨まれた。
何なんですか、だって? そんなのこっちが聞きたいくらいだ。
「言っておくが、ボクは悪くないからな!」
「はぁ!?」
そうだ、ボクは悪くない。
だってあんなの予想できないだろ。急に普段出さないような声を出したり、真っ赤になって涙目になったり。今だってそんな風に見上げてきて、自分がどんな顔をしているのかわかっていないのか。
ボクはじぃっと眉間に皺を寄せる部下を見つめた。そしてガンを飛ばされたと勘違いして睨み返してくる部下に、わかっていないのだろうなと結論づける。
ボクは呆れたように溜息をついてから、部下の眉間に思い切りデコピンを食らわせてやった。やっぱり悪いのはボクではなく、無自覚過ぎるこいつだろう。