鳴海弦
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カチカチとコントローラーを高速で操りながら、この汚部屋の主こと鳴海弦はテレビ画面に集中していた。私はその隣でいつものように彼をサポートするべくキャラを動かす。
小隊長になって彼に認知された時は嬉しかった。でもそれだけじゃ足りなくて、もっと彼に近づきたくて、手っ取り早く彼の好きなゲームに手を出した。これが始めてみると面白くて見事にどハマりし、鳴海隊長が会議をすっぽかしたり徹夜したりするのも頷けた。だからといってそれを肯定するわけではないけれど。
そして努力の甲斐あってか私がゲーム好きという情報が鳴海隊長の耳に入り、いつしかこうしてたびたび隊長室に呼ばれ一緒にゲームをする仲になった。
もちろん最初のうちは飛び跳ねるくらい嬉しかった。当初の目的通り物理的距離はぐっと縮まったのだから。でもそれだけだ。
鳴海隊長にとって私は、たまにゲームをするだけのただの部下。それ以上でもそれ以下でもない。
わかりきっていたことだけど、意識すらされていないんだなと気づいて虚しくなる。私は部屋に二人きりというだけで心臓がそわそわと落ち着かないのに。
「……い、おい、聞いてるのか!」
布団に寝そべりながら鳴海隊長が私を睨め付ける。
「さっきから手が止まってるぞ! やる気あるのか? ボクのランクアップがかかってるんだ、やるならちゃんとサポートしろ!」
「やる気……」
少しでも憧れの鳴海隊長に近づきたかった。叶うなら意識してほしかった。
そんな下心で始めたゲームは思いのほか面白くて、こうして鳴海隊長と一緒にゲームする時間は下心抜きに楽しい。
だから恋もゲームも両方頑張りたいのに、今のままではどちらも嫌になってしまいそうだった。楽しいことをしているはずなのに苦しくて堪らない。手放したくないのに抱えているのが辛くなってくる。
「鳴海隊長」
「なんだ?」
「鳴海隊長の心に、私の入る余地はありますか?」
「は?」
意味がわからんと眉を寄せる鳴海隊長につきりと胸が痛みつつ、誤魔化すように笑顔を作る。それから彼のよれたTシャツの首元を掴み、思い切り引き寄せた。
「ぐぇっ」
潰れたカエルみたいな呻き声を上げる彼の唇に自分のを押し付ける。
好きな人とのキスは特別だと思ってた。
でも実際は、鳴海隊長の唇がかさついているせいか、想像していたよりずっとずっと、痛かった。
「……私、帰ります」
ぽかんと口を開け、何が起きたのか理解できていない様子の鳴海隊長を一人残して隊長室を後にする。
どうするのが正解だったのだろう。わからない。結果、恋やゲームだけでなく、今までの全てをぶち壊すような真似をして。
でも、それでも私は、鳴海隊長に私のことを意識してほしかった。
嫌われるようなことをしてでも、彼の中に残りたかった。
ちゃんと『私』を見てほしかった。
「……最低だ、私」
ぽたりと両目から雫がこぼれ落ちる。
私に泣く資格なんてあるはずがないのに。
何とか止めようとごしごしと袖で目元を拭っていると、ふいに腕を強い力で掴まれた。
「本当にな」
驚いて顔を上げるといるはずのない人がそこにいて、私はさらに目を丸くする。
「なるみ、たいちょ……なんで……」
目の前には肩で息をする鳴海隊長の姿。下ろされた前髪の間から、こちらを睨む鋭い視線が垣間見える。きっとさっきのことで、怒って追いかけて来たのだろう。
「キミは最低だ」
好きな人にそう言われてずきりと胸が痛む。でもそれだけのことを私はしたのだ。
謝罪しようと口を開けばそれすら許さないとばかりにキッと睨み付けられる。
「あんなことをしておきながら逃げるなんてどういうつもりだ」
「っ、私……」
「キミな、対戦ゲーでの切断はペナルティがつくほどの御法度だぞ! そんなことも知らんのか」
「……は? え?」
対戦ゲーって、何の話? てっきり非難されるか軽蔑されるかと思っていた私は突然よくわからないことを言われて困惑した。困惑しすぎてあんなに止めるのに苦労した涙も今ではすっかり引っ込んでいる。
「つまりだな、逃げ出したキミのせいでボクはゲームに集中できなくなった。ペナルティとしてその責任を取ってもらう」
「責任、ですか?」
「ボクの許しなしに勝手にいなくなるな」
「それは……」
どういう意味だろう。自分の都合の良いように解釈しそうになって、真意を問うように鳴海隊長を見つめる。しかし絡んだ視線はすぐにふいと外された。
「ボクは基本ゲームはソロプレイ派だ。誰彼構わず誘うわけないだろ」
背けた鳴海隊長の横顔がじわじわと赤く染まっていく。明言はなくともそれで十分だった。
私は再び鼻の奥がツンとするのを感じながら、彼の課したペナルティを受け入れることにした。
小隊長になって彼に認知された時は嬉しかった。でもそれだけじゃ足りなくて、もっと彼に近づきたくて、手っ取り早く彼の好きなゲームに手を出した。これが始めてみると面白くて見事にどハマりし、鳴海隊長が会議をすっぽかしたり徹夜したりするのも頷けた。だからといってそれを肯定するわけではないけれど。
そして努力の甲斐あってか私がゲーム好きという情報が鳴海隊長の耳に入り、いつしかこうしてたびたび隊長室に呼ばれ一緒にゲームをする仲になった。
もちろん最初のうちは飛び跳ねるくらい嬉しかった。当初の目的通り物理的距離はぐっと縮まったのだから。でもそれだけだ。
鳴海隊長にとって私は、たまにゲームをするだけのただの部下。それ以上でもそれ以下でもない。
わかりきっていたことだけど、意識すらされていないんだなと気づいて虚しくなる。私は部屋に二人きりというだけで心臓がそわそわと落ち着かないのに。
「……い、おい、聞いてるのか!」
布団に寝そべりながら鳴海隊長が私を睨め付ける。
「さっきから手が止まってるぞ! やる気あるのか? ボクのランクアップがかかってるんだ、やるならちゃんとサポートしろ!」
「やる気……」
少しでも憧れの鳴海隊長に近づきたかった。叶うなら意識してほしかった。
そんな下心で始めたゲームは思いのほか面白くて、こうして鳴海隊長と一緒にゲームする時間は下心抜きに楽しい。
だから恋もゲームも両方頑張りたいのに、今のままではどちらも嫌になってしまいそうだった。楽しいことをしているはずなのに苦しくて堪らない。手放したくないのに抱えているのが辛くなってくる。
「鳴海隊長」
「なんだ?」
「鳴海隊長の心に、私の入る余地はありますか?」
「は?」
意味がわからんと眉を寄せる鳴海隊長につきりと胸が痛みつつ、誤魔化すように笑顔を作る。それから彼のよれたTシャツの首元を掴み、思い切り引き寄せた。
「ぐぇっ」
潰れたカエルみたいな呻き声を上げる彼の唇に自分のを押し付ける。
好きな人とのキスは特別だと思ってた。
でも実際は、鳴海隊長の唇がかさついているせいか、想像していたよりずっとずっと、痛かった。
「……私、帰ります」
ぽかんと口を開け、何が起きたのか理解できていない様子の鳴海隊長を一人残して隊長室を後にする。
どうするのが正解だったのだろう。わからない。結果、恋やゲームだけでなく、今までの全てをぶち壊すような真似をして。
でも、それでも私は、鳴海隊長に私のことを意識してほしかった。
嫌われるようなことをしてでも、彼の中に残りたかった。
ちゃんと『私』を見てほしかった。
「……最低だ、私」
ぽたりと両目から雫がこぼれ落ちる。
私に泣く資格なんてあるはずがないのに。
何とか止めようとごしごしと袖で目元を拭っていると、ふいに腕を強い力で掴まれた。
「本当にな」
驚いて顔を上げるといるはずのない人がそこにいて、私はさらに目を丸くする。
「なるみ、たいちょ……なんで……」
目の前には肩で息をする鳴海隊長の姿。下ろされた前髪の間から、こちらを睨む鋭い視線が垣間見える。きっとさっきのことで、怒って追いかけて来たのだろう。
「キミは最低だ」
好きな人にそう言われてずきりと胸が痛む。でもそれだけのことを私はしたのだ。
謝罪しようと口を開けばそれすら許さないとばかりにキッと睨み付けられる。
「あんなことをしておきながら逃げるなんてどういうつもりだ」
「っ、私……」
「キミな、対戦ゲーでの切断はペナルティがつくほどの御法度だぞ! そんなことも知らんのか」
「……は? え?」
対戦ゲーって、何の話? てっきり非難されるか軽蔑されるかと思っていた私は突然よくわからないことを言われて困惑した。困惑しすぎてあんなに止めるのに苦労した涙も今ではすっかり引っ込んでいる。
「つまりだな、逃げ出したキミのせいでボクはゲームに集中できなくなった。ペナルティとしてその責任を取ってもらう」
「責任、ですか?」
「ボクの許しなしに勝手にいなくなるな」
「それは……」
どういう意味だろう。自分の都合の良いように解釈しそうになって、真意を問うように鳴海隊長を見つめる。しかし絡んだ視線はすぐにふいと外された。
「ボクは基本ゲームはソロプレイ派だ。誰彼構わず誘うわけないだろ」
背けた鳴海隊長の横顔がじわじわと赤く染まっていく。明言はなくともそれで十分だった。
私は再び鼻の奥がツンとするのを感じながら、彼の課したペナルティを受け入れることにした。