鳴海弦
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「おかしい」
神妙な面持ちで鳴海隊長が呟く。何がですかと問えば「誰からもチョコをもらってないんだ」と青ざめて言った。
何だそんなこと、とは思うだけで言わないでおく。この人は拗ねるとより面倒くさいのだ。
「そういえばバレンタインでしたっけ」
「ああ。なのに誰からもないなんておかしいだろう」
「渡したくても渡せないシャイな方が多いのでは」
上手いこと言いくるめようと試みるも鳴海隊長は納得いかない様子。
「キミは」
「はい?」
「だから、キミからはないのかと訊いている」
「あー……忙しくて用意できなくて」
真っ赤な嘘である。チョコなんて用意しているわけがない。バレンタインに限らずイベント事が面倒で、最初から誰にも渡すつもりがなかったのだ。
とりあえずないことは伝えたし、この話はこれでおしまい。そう思ったのに鳴海隊長はなぜか目を輝かせていた。
「そうか。つまり渡す気はあったということだな!」
「え」
「よし、今から買いに行くぞ!」
そうして私は珍しく出かける気満々の鳴海隊長に引っ張られ、深夜のコンビニに連れてこられた。レジ横に売れ残ったバレンタインチョコが半額で置かれていて、少し切ない。
「どれがいいですか?」
さすがに半額シールが付いたものは躊躇われてお菓子コーナーに足を運ぶ。
「キミが選ばないと意味ないだろ」
そういうものだっけ?
「じゃあこれで」
お菓子の棚をしばらく眺めた後に手にしたのはお金チョコ。パッケージにお札が印刷されていて、これなら鳴海隊長も簡単に大金持ちになれる、なんて。少しふざけすぎただろうか。まぁ鳴海隊長ことだから、ああでもないこうでもないとギャンギャン文句を言ってくるに決まっているけれど。
しかしひょいと手元を覗き込んできた彼は、「それをボクにくれるのか!」と予想に反してものすごく嬉しそうで。前髪で目元が見えないはずなのに、その表情に思わずどきりとしてしまった。いやきっと、ずきり、のが正しい。
「あの、やっぱりやめていいですか?」
「はぁ!? なんでだよ」
「もっと高いのに変えようかなと」
「嫌だ! ボクはこれがいい!」
札束チョコを掴んで離さない鳴海隊長に、やっぱり別のチョコにすればよかったと思う。お金を掴んで離さない姿があまりに似合いすぎている。
「……来年はちゃんとしたの買いますね」
「ん? 来年もくれるのか!」
キラキラと目を輝かせる鳴海隊長に、なけなしの良心がジクジクと痛む。それを少しでも和らげようと、私は買い物かごにエナドリとポテチも追加したのだった。
神妙な面持ちで鳴海隊長が呟く。何がですかと問えば「誰からもチョコをもらってないんだ」と青ざめて言った。
何だそんなこと、とは思うだけで言わないでおく。この人は拗ねるとより面倒くさいのだ。
「そういえばバレンタインでしたっけ」
「ああ。なのに誰からもないなんておかしいだろう」
「渡したくても渡せないシャイな方が多いのでは」
上手いこと言いくるめようと試みるも鳴海隊長は納得いかない様子。
「キミは」
「はい?」
「だから、キミからはないのかと訊いている」
「あー……忙しくて用意できなくて」
真っ赤な嘘である。チョコなんて用意しているわけがない。バレンタインに限らずイベント事が面倒で、最初から誰にも渡すつもりがなかったのだ。
とりあえずないことは伝えたし、この話はこれでおしまい。そう思ったのに鳴海隊長はなぜか目を輝かせていた。
「そうか。つまり渡す気はあったということだな!」
「え」
「よし、今から買いに行くぞ!」
そうして私は珍しく出かける気満々の鳴海隊長に引っ張られ、深夜のコンビニに連れてこられた。レジ横に売れ残ったバレンタインチョコが半額で置かれていて、少し切ない。
「どれがいいですか?」
さすがに半額シールが付いたものは躊躇われてお菓子コーナーに足を運ぶ。
「キミが選ばないと意味ないだろ」
そういうものだっけ?
「じゃあこれで」
お菓子の棚をしばらく眺めた後に手にしたのはお金チョコ。パッケージにお札が印刷されていて、これなら鳴海隊長も簡単に大金持ちになれる、なんて。少しふざけすぎただろうか。まぁ鳴海隊長ことだから、ああでもないこうでもないとギャンギャン文句を言ってくるに決まっているけれど。
しかしひょいと手元を覗き込んできた彼は、「それをボクにくれるのか!」と予想に反してものすごく嬉しそうで。前髪で目元が見えないはずなのに、その表情に思わずどきりとしてしまった。いやきっと、ずきり、のが正しい。
「あの、やっぱりやめていいですか?」
「はぁ!? なんでだよ」
「もっと高いのに変えようかなと」
「嫌だ! ボクはこれがいい!」
札束チョコを掴んで離さない鳴海隊長に、やっぱり別のチョコにすればよかったと思う。お金を掴んで離さない姿があまりに似合いすぎている。
「……来年はちゃんとしたの買いますね」
「ん? 来年もくれるのか!」
キラキラと目を輝かせる鳴海隊長に、なけなしの良心がジクジクと痛む。それを少しでも和らげようと、私は買い物かごにエナドリとポテチも追加したのだった。