保科宗四郎
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とある保育園に迎えに行けば、可愛らしい声が私の名前を呼んだ。「はぁい」と返事をして両手を広げれば小さな天使が飛び込んでくる。
「う、かわいい……!!」
本音を隠しもせず漏らせば天使は不満げにぷくっと頬を膨らませた。それすらも可愛くて思わず抱きしめそうになったけれど、これ以上彼の機嫌を損ねるのは良くないだろう。
「今日は保育園どうだった? 宗十郎くん」
「まあまあやな。けどお前が迎えに来てくれたから最高の日になったわ」
「ならよかった。保科副隊長じゃなくて申し訳ないけど」
「何言うとんねん。僕は宗四郎やなくてお前がいいんや!」
ぎゅっと腰に抱きつかれ、出会って間もないながらも随分と懐かれたものだなと思う。
彼、保科宗十郎くんは保科副隊長の親戚のお子さんだ。親戚夫婦が海外に遠征に出ていて、副隊長がしばらく面倒を見ることになったらしい。
だけど、保科副隊長も忙しい人だ。時間が合わない時はこうして部下である私が宗十郎くんのお世話をすることになっている。
「なあ、宗四郎はいつ帰ってくるん?」
もしかして副隊長に会えなくて寂しいのだろうか。宗十郎くんは年齢の割に大人びているようでやっぱりまだまだ子どもだ。
「今日は緊急で会議が入っちゃって。でも終わったらすぐ来るって言ってたよ」
「……ふぅん。別に急いで来んでもええのに」
「え?」
「何でもない。あー、なんか眠たなってきたなあ」
帰宅してご飯を食べ終えた宗十郎くんはふわぁと欠伸をして、ソファに座る私の膝を枕にごろんと寝そべった。寝るのは歯磨きとお風呂を済ませてからね、と告げるも「ちょっとだけ」と可愛らしくねだられては強く言い返せない。
いけないと思いつつもつい甘やかしてしまうのは、彼が保科副隊長によく似ているのもあるだろう。
憧れの保科副隊長。そんな彼の子ども時代を知ることは不可能だけれど、もしかしたらこんな感じだったのかもしれないな、なんて。
「幸せやなあ、こんな日がずっと続けばいいのに」
そう言って無邪気に笑う宗十郎くんの頭を撫でる。数日でまさかここまで懐いてくれるとは思っていなかった。私としても可愛い弟ができたみたいで嬉しいけれど、彼の両親ももう少しで帰ってくるから安易に同意はできない。
しばらく黙っていると反応のない私に宗十郎くんは少しムッとして、けれど良いことを思いついたとばかりに勢いよく起き上がった。
「せや! お前が僕のお嫁さんになったらええんちゃう?」
「……えっ!?」
「そしたらずーっと一緒に居れるやろ。あ、もしかして他に好きなやつ居るん?」
好きな人、と訊かれて一瞬頭をよぎった人物を慌てて掻き消す。憧れは、恋とは違うのだ。
「い、いないけど」
「ならええやん! 今どき年齢差なんて大したハードルやないやろ。善は急げ、ほな僕ら今から婚約……」
「アホか!! なーに勝手に話進めてんねん!」
ぐいぐい来る宗十郎くんを私から引き剥がしたのはいつの間にか帰宅していた保科副隊長だった。
余程急いで来たのか、あの保科副隊長が珍しく肩で息をしている。それくらい宗十郎くんのことが心配だったのだろう。
「なんやもう帰って来たんか、宗四郎」
「お前が僕の大事な部下を困らせとるんやないかと思ってなあ」
「困らせるわけないやん。僕はただプロポーズしとっただけやで。いつまでもうだうだしとるどっかの誰かさんと違って、こういうのはストレートに伝えるのが一番やと思っとるからな」
「はぁぁぁ!? 何言うとんのやマセガキが! 物事には順序ってもんがあんねん」
何やら言い争うよく似た二人に挟まれながら、思わず「おぉ」と感心してしまった。保科副隊長も宗十郎くんの前ではあんな顔をするんだ。
よくある子どもの戯言にムキになる保科副隊長は、決して口には出さないけれど、何だか幼く見えて可愛らしい。
「なんだか本当の親子みたいですね」と素直な感想を伝えれば、二人して顔を見合わせて頭を抱えてしまった。
「あかん、何一つわかってへんわ」
「鈍すぎるっちゅうのも考えもんやな。やっぱり僕みたいにストレートにいかんとあかんのちゃう?」
「……言われんでもわかっとるわ」
はて、何の話だろう? 二人して呆れた様子でこちらを見てくるけれど、とりあえずケンカは収まったようなので良しとしよう。
「う、かわいい……!!」
本音を隠しもせず漏らせば天使は不満げにぷくっと頬を膨らませた。それすらも可愛くて思わず抱きしめそうになったけれど、これ以上彼の機嫌を損ねるのは良くないだろう。
「今日は保育園どうだった? 宗十郎くん」
「まあまあやな。けどお前が迎えに来てくれたから最高の日になったわ」
「ならよかった。保科副隊長じゃなくて申し訳ないけど」
「何言うとんねん。僕は宗四郎やなくてお前がいいんや!」
ぎゅっと腰に抱きつかれ、出会って間もないながらも随分と懐かれたものだなと思う。
彼、保科宗十郎くんは保科副隊長の親戚のお子さんだ。親戚夫婦が海外に遠征に出ていて、副隊長がしばらく面倒を見ることになったらしい。
だけど、保科副隊長も忙しい人だ。時間が合わない時はこうして部下である私が宗十郎くんのお世話をすることになっている。
「なあ、宗四郎はいつ帰ってくるん?」
もしかして副隊長に会えなくて寂しいのだろうか。宗十郎くんは年齢の割に大人びているようでやっぱりまだまだ子どもだ。
「今日は緊急で会議が入っちゃって。でも終わったらすぐ来るって言ってたよ」
「……ふぅん。別に急いで来んでもええのに」
「え?」
「何でもない。あー、なんか眠たなってきたなあ」
帰宅してご飯を食べ終えた宗十郎くんはふわぁと欠伸をして、ソファに座る私の膝を枕にごろんと寝そべった。寝るのは歯磨きとお風呂を済ませてからね、と告げるも「ちょっとだけ」と可愛らしくねだられては強く言い返せない。
いけないと思いつつもつい甘やかしてしまうのは、彼が保科副隊長によく似ているのもあるだろう。
憧れの保科副隊長。そんな彼の子ども時代を知ることは不可能だけれど、もしかしたらこんな感じだったのかもしれないな、なんて。
「幸せやなあ、こんな日がずっと続けばいいのに」
そう言って無邪気に笑う宗十郎くんの頭を撫でる。数日でまさかここまで懐いてくれるとは思っていなかった。私としても可愛い弟ができたみたいで嬉しいけれど、彼の両親ももう少しで帰ってくるから安易に同意はできない。
しばらく黙っていると反応のない私に宗十郎くんは少しムッとして、けれど良いことを思いついたとばかりに勢いよく起き上がった。
「せや! お前が僕のお嫁さんになったらええんちゃう?」
「……えっ!?」
「そしたらずーっと一緒に居れるやろ。あ、もしかして他に好きなやつ居るん?」
好きな人、と訊かれて一瞬頭をよぎった人物を慌てて掻き消す。憧れは、恋とは違うのだ。
「い、いないけど」
「ならええやん! 今どき年齢差なんて大したハードルやないやろ。善は急げ、ほな僕ら今から婚約……」
「アホか!! なーに勝手に話進めてんねん!」
ぐいぐい来る宗十郎くんを私から引き剥がしたのはいつの間にか帰宅していた保科副隊長だった。
余程急いで来たのか、あの保科副隊長が珍しく肩で息をしている。それくらい宗十郎くんのことが心配だったのだろう。
「なんやもう帰って来たんか、宗四郎」
「お前が僕の大事な部下を困らせとるんやないかと思ってなあ」
「困らせるわけないやん。僕はただプロポーズしとっただけやで。いつまでもうだうだしとるどっかの誰かさんと違って、こういうのはストレートに伝えるのが一番やと思っとるからな」
「はぁぁぁ!? 何言うとんのやマセガキが! 物事には順序ってもんがあんねん」
何やら言い争うよく似た二人に挟まれながら、思わず「おぉ」と感心してしまった。保科副隊長も宗十郎くんの前ではあんな顔をするんだ。
よくある子どもの戯言にムキになる保科副隊長は、決して口には出さないけれど、何だか幼く見えて可愛らしい。
「なんだか本当の親子みたいですね」と素直な感想を伝えれば、二人して顔を見合わせて頭を抱えてしまった。
「あかん、何一つわかってへんわ」
「鈍すぎるっちゅうのも考えもんやな。やっぱり僕みたいにストレートにいかんとあかんのちゃう?」
「……言われんでもわかっとるわ」
はて、何の話だろう? 二人して呆れた様子でこちらを見てくるけれど、とりあえずケンカは収まったようなので良しとしよう。
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