保科宗四郎
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恋人に不満があるかと訊かれれば当然ないのだけれど、あえて挙げるとすれば彼女がしっかり者過ぎるところだろうか。
僕が第3に来てまだ副隊長という立場になかった頃、彼女は僕の先輩として部隊に関する色々なことを教えてくれた。だから恋人になった今も、僕の前ではしっかりしなければという意識が働くのかもしれない。それも彼女の良いところの一つだが、やはり男としては彼女に頼られたい、甘えられたいという気持ちがあるのも本当で。
いつか、彼女が僕を頼ってくれたらーー。
滅多に休まない彼女が体調を崩したのは、そんなことを考えていた矢先の出来事だった。
どうやら夏風邪を引いたらしく、熱もあるらしい。基地に休むと連絡はあったものの、恋人の僕には何の連絡もない。心配になって休憩時間にメッセージを送れば、しばらくしてから大丈夫と短い返事が返ってきた。
いやいや、大丈夫なわけあるかい!
しっかり者過ぎる彼女の大丈夫をそのまま受け取るほど僕も馬鹿じゃない。どうせ彼女のことだ、こちらに心配かけまいとそう言っただけだろう。頼られたことも甘えられたこともほとんどないけれど、彼女がこちらに気を遣って無理をする性格なことくらい理解している。
予定にあった会議も任務も全て終え、薬局とスーパーに寄ってから彼女の家に着いたのは夕方だった。亜白隊長からも「お前はもう帰れ」と告げられ、ありがたくそれに従わせてもらった。
なるべく音を立てないように合鍵で鍵を開け、寝室へと向かう。ベッドに横たわる彼女は熱でうなされているようで、額の冷却シートもすっかりぬるくなっていた。薬局で買った新しいものと交換していると、眠っていた彼女がぼんやりと目を開けた。
「あれ、そうしろ……なんで?」
「何でやない! 恋人なんやからこういう時くらい心配させろや」
「だって、迷惑かけたくない……」
ぽつりと呟いた彼女の瞳にうっすらと涙の膜が張る。恐らく熱のせいだけではないのだろう。零れ落ちる前に彼女は見られまいと布団をすっぽりと頭から被ってしまったが。
「ほんまアホやなぁ」
そんな彼女の頭を布団の上から撫でてやる。
「迷惑やなんて思っとらんし、かわいい恋人にならいくらでもかけてもらってええよ。もっと頼ってほしいし、甘えてほしいし、わがままもたっくさん聞きたい」
そう本音を告げれば、布団に閉じこもってしまった彼女がおずおずと顔半分を覗かせた。その目元にはうっすらと涙の跡が見える。
「それはちょっと……」
「なんでや!?」
「だって、そんなことしたら私、宗四郎に頼ってばっかのダメ人間になっちゃうから」
「ええやん、別に。僕はそれでも全然ええけどな」
「……よくない」
しっかり者過ぎる彼女はこんな時さえもしっかり者で。素直に僕に甘えてくれる日はまだまだ遠そうだ。
「宗四郎」
「ん?」
「アイス食べたい」
それだけ言ってから、彼女は再び布団を被ってしまった。僕は一瞬虚をつかれ、それから彼女の精一杯のわがままが愛おしくてしょうがなくて、布団ごと彼女を抱きしめたのだった。
僕が第3に来てまだ副隊長という立場になかった頃、彼女は僕の先輩として部隊に関する色々なことを教えてくれた。だから恋人になった今も、僕の前ではしっかりしなければという意識が働くのかもしれない。それも彼女の良いところの一つだが、やはり男としては彼女に頼られたい、甘えられたいという気持ちがあるのも本当で。
いつか、彼女が僕を頼ってくれたらーー。
滅多に休まない彼女が体調を崩したのは、そんなことを考えていた矢先の出来事だった。
どうやら夏風邪を引いたらしく、熱もあるらしい。基地に休むと連絡はあったものの、恋人の僕には何の連絡もない。心配になって休憩時間にメッセージを送れば、しばらくしてから大丈夫と短い返事が返ってきた。
いやいや、大丈夫なわけあるかい!
しっかり者過ぎる彼女の大丈夫をそのまま受け取るほど僕も馬鹿じゃない。どうせ彼女のことだ、こちらに心配かけまいとそう言っただけだろう。頼られたことも甘えられたこともほとんどないけれど、彼女がこちらに気を遣って無理をする性格なことくらい理解している。
予定にあった会議も任務も全て終え、薬局とスーパーに寄ってから彼女の家に着いたのは夕方だった。亜白隊長からも「お前はもう帰れ」と告げられ、ありがたくそれに従わせてもらった。
なるべく音を立てないように合鍵で鍵を開け、寝室へと向かう。ベッドに横たわる彼女は熱でうなされているようで、額の冷却シートもすっかりぬるくなっていた。薬局で買った新しいものと交換していると、眠っていた彼女がぼんやりと目を開けた。
「あれ、そうしろ……なんで?」
「何でやない! 恋人なんやからこういう時くらい心配させろや」
「だって、迷惑かけたくない……」
ぽつりと呟いた彼女の瞳にうっすらと涙の膜が張る。恐らく熱のせいだけではないのだろう。零れ落ちる前に彼女は見られまいと布団をすっぽりと頭から被ってしまったが。
「ほんまアホやなぁ」
そんな彼女の頭を布団の上から撫でてやる。
「迷惑やなんて思っとらんし、かわいい恋人にならいくらでもかけてもらってええよ。もっと頼ってほしいし、甘えてほしいし、わがままもたっくさん聞きたい」
そう本音を告げれば、布団に閉じこもってしまった彼女がおずおずと顔半分を覗かせた。その目元にはうっすらと涙の跡が見える。
「それはちょっと……」
「なんでや!?」
「だって、そんなことしたら私、宗四郎に頼ってばっかのダメ人間になっちゃうから」
「ええやん、別に。僕はそれでも全然ええけどな」
「……よくない」
しっかり者過ぎる彼女はこんな時さえもしっかり者で。素直に僕に甘えてくれる日はまだまだ遠そうだ。
「宗四郎」
「ん?」
「アイス食べたい」
それだけ言ってから、彼女は再び布団を被ってしまった。僕は一瞬虚をつかれ、それから彼女の精一杯のわがままが愛おしくてしょうがなくて、布団ごと彼女を抱きしめたのだった。