保科宗四郎
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「私と結婚してください!」
たまたま耳にしてしまった台詞に、雷に打たれたような衝撃が走る。
え、何これ? 公開プロポーズ?
週末、人の集まる商業施設でなんて勇気のある……じゃなくて。問題はプロポーズされた相手である。たった今公衆の面前でプロポーズされたのは、どこからどう見ても私の恋人だった。
「えーっと……」
突然のプロポーズに彼も困惑しているようで、どうしたものかと頬を掻いている。けれど相手も諦めない。返答がないのを聞こえていなかったと判断したのか、もう一度大きな声で先程の台詞を繰り返した。
「わたしとけっこんしてください!!」
ここで待ったをかけられなかったのは、彼女の表情があまりに真剣だったからだ。堂々と割り込んで行けばいいはずなのに、二人の姿を遠巻きに見るしかできない。
周囲もしばらく二人の様子を窺っていたけれど、不意に一人の女性がそこに割り込んで行った。
「ちょっとももちゃん、何してるの!?」
母親らしき女性が慌てた様子で少女を抱き上げる。
「すみません、ご迷惑をおかけして……」
「いえ、そんな気にせんでええですよ」
どうやら私がトイレに行っている間に、恋人は母親とはぐれたらしき少女の話し相手になっていたのだとか。彼もまさかこの短時間でプロポーズまでされるとは思っていなかったようだ。
そんな大人たちのやり取りをよそに、幼い少女は母親の腕の中でぐずり始める。
「やーだ、おにいちゃんとけっこんするの!」
母親は少女を宥めるのに必死だ。そしてとうとう泣き始めた少女に恋人が近づく。落ち着かせるように小さな頭を撫で、話しかけているのが見える。
さすがに内容まではわからなかったけれど、程なくして少女は泣き止み、落ち着いたようだった。母親がぺこりと頭を下げ、少女を連れて去っていく。
そして二人の後ろ姿を見送った彼がくるりと振り向き、すぐに私を見つけて「おったなら声かけてや」と表情を緩めた。
そんなこと言われても、あの場で割り込んでいく勇気は私にはない。しかもそんなことをしたら幼い少女のプロポーズに少なからず嫉妬したとばれてしまうじゃないか。
勘の良い彼に気取られぬように出てきたのは冷やかしの言葉だった。
「さすがは保科副隊長。見事な初恋泥棒だったね」
「お前なあ」
恐らく彼は私の言葉を冗談だと受け取っている。けれど実際、宗四郎はモテる。それも老若男女関係なく。
だからどうして自分が彼と付き合えているのか心底不思議なのだけど、その話題を出すたびに身をもって『わからせ』られるので、最近は考えはしても口にはしなくなった。
「あの子と何話してたの?」
「気になるん?」
「それはまぁ」
あんなに泣いていた少女が宗四郎の言葉に最後には笑顔になっていたのだ。気にならないと言えば嘘になる。
そわそわと続く言葉を待っていると、宗四郎がにっこりと笑った。
「実はな…………やっぱ言わんとこ!」
「ええー!? そこまで言ったなら教えてよ!!」
宗四郎は私の反応を面白がって、しばらくケラケラと笑っていた。期待を持たせておいてずるい。
「……ただ僕も、あの子を見習って頑張らんとなとは思ったわ」
「え?」
何か聞こえたような気がして首を傾げるも、宗四郎は何でもないと首を横に振るだけだった。
それからしばらくの後。
あの時プロポーズをしてきた少女に心に決めた人がいることを伝えたら、逆に「がんばって」と応援されたらしい宗四郎にプロポーズをされることになるのだけど、この時の私はそんなことこれっぽっちも予期していないのだった。
たまたま耳にしてしまった台詞に、雷に打たれたような衝撃が走る。
え、何これ? 公開プロポーズ?
週末、人の集まる商業施設でなんて勇気のある……じゃなくて。問題はプロポーズされた相手である。たった今公衆の面前でプロポーズされたのは、どこからどう見ても私の恋人だった。
「えーっと……」
突然のプロポーズに彼も困惑しているようで、どうしたものかと頬を掻いている。けれど相手も諦めない。返答がないのを聞こえていなかったと判断したのか、もう一度大きな声で先程の台詞を繰り返した。
「わたしとけっこんしてください!!」
ここで待ったをかけられなかったのは、彼女の表情があまりに真剣だったからだ。堂々と割り込んで行けばいいはずなのに、二人の姿を遠巻きに見るしかできない。
周囲もしばらく二人の様子を窺っていたけれど、不意に一人の女性がそこに割り込んで行った。
「ちょっとももちゃん、何してるの!?」
母親らしき女性が慌てた様子で少女を抱き上げる。
「すみません、ご迷惑をおかけして……」
「いえ、そんな気にせんでええですよ」
どうやら私がトイレに行っている間に、恋人は母親とはぐれたらしき少女の話し相手になっていたのだとか。彼もまさかこの短時間でプロポーズまでされるとは思っていなかったようだ。
そんな大人たちのやり取りをよそに、幼い少女は母親の腕の中でぐずり始める。
「やーだ、おにいちゃんとけっこんするの!」
母親は少女を宥めるのに必死だ。そしてとうとう泣き始めた少女に恋人が近づく。落ち着かせるように小さな頭を撫で、話しかけているのが見える。
さすがに内容まではわからなかったけれど、程なくして少女は泣き止み、落ち着いたようだった。母親がぺこりと頭を下げ、少女を連れて去っていく。
そして二人の後ろ姿を見送った彼がくるりと振り向き、すぐに私を見つけて「おったなら声かけてや」と表情を緩めた。
そんなこと言われても、あの場で割り込んでいく勇気は私にはない。しかもそんなことをしたら幼い少女のプロポーズに少なからず嫉妬したとばれてしまうじゃないか。
勘の良い彼に気取られぬように出てきたのは冷やかしの言葉だった。
「さすがは保科副隊長。見事な初恋泥棒だったね」
「お前なあ」
恐らく彼は私の言葉を冗談だと受け取っている。けれど実際、宗四郎はモテる。それも老若男女関係なく。
だからどうして自分が彼と付き合えているのか心底不思議なのだけど、その話題を出すたびに身をもって『わからせ』られるので、最近は考えはしても口にはしなくなった。
「あの子と何話してたの?」
「気になるん?」
「それはまぁ」
あんなに泣いていた少女が宗四郎の言葉に最後には笑顔になっていたのだ。気にならないと言えば嘘になる。
そわそわと続く言葉を待っていると、宗四郎がにっこりと笑った。
「実はな…………やっぱ言わんとこ!」
「ええー!? そこまで言ったなら教えてよ!!」
宗四郎は私の反応を面白がって、しばらくケラケラと笑っていた。期待を持たせておいてずるい。
「……ただ僕も、あの子を見習って頑張らんとなとは思ったわ」
「え?」
何か聞こえたような気がして首を傾げるも、宗四郎は何でもないと首を横に振るだけだった。
それからしばらくの後。
あの時プロポーズをしてきた少女に心に決めた人がいることを伝えたら、逆に「がんばって」と応援されたらしい宗四郎にプロポーズをされることになるのだけど、この時の私はそんなことこれっぽっちも予期していないのだった。