保科宗四郎
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
保科副隊長の腕の中でゴロゴロと気持ち良さそうに喉を鳴らすのは、少し前に基地内に迷い込んでしまった野良猫だった。
子猫というほど小さくはなく、しかし成猫というには身体の線の細いその猫は、保護された直後は警戒してケージの中で暴れたり毛を逆立てて威嚇していたけれど、多くの隊員たちに可愛がられ愛されて今ではすっかり気を許している。
にゃーちゃんだとかクロだとか、隊員たちに様々な名前で呼ばれるその子もとうとう里親が見つかり、数日後には新しい家族のもとで幸せに暮らす予定だ。
だからここで過ごす時間はそう長くなく、隊員たちは暇さえあれば別れを惜しむようにひたすらこの子を甘やかしている。
保科副隊長もその一人で時間を見つけてはおもちゃで遊んだり、隊服が毛だらけになるのも構わず抱っこして撫で回したり。
猫も猫で保科副隊長にはべったりだった。保科副隊長を見つけると猛ダッシュで駆け寄り足元に擦り寄っていく。きっと思いきり甘えさせてくれる相手だとわかっているのだろう。他の隊員でもここまで懐いている者はいない。
「お前ともあと少しでお別れか。寂しなるなあ」
「副隊長それさっきも言ってましたよ」
「しゃあないやん、ほんまのことやねんから」
保科副隊長の言葉に私も概ね同意だ。彼ほどではないにせよ、私もこの子のことは可愛がってきた。保科副隊長の腕の中で伸びをする猫の顎を指先で擽れば、満足げな鳴き声が返ってくる。
短い間だったけれど、この穏やかな癒しの時間がなくなると思うと確かに寂しく感じる。
「そない寂しい?」
「え」
「声に出とったで」
うそ、と口元を手で覆うと保科副隊長がゆるりと目を細めた。その表情からは本当なのか冗談なのか判断できない。彼のことだから後者の気もするけれど、どちらにせよ今の反応で図星なのはバレてしまった。
ついムッとしてそっぽを向けば、とんと隣の保科副隊長が軽く体重を預けてくる。急に動いたものだから猫が不服そうに短く鳴いた。
「そんな怒らんといてや」
「別に怒ってません」
「説得力ないなあ」
触れたところからじんわりと保科副隊長の体温が伝わってくる。かと思えば「せや!」と突然良いことを思いついたとばかりにこちらを覗き込んできて、悪戯っぽい笑みを浮かべる彼と目が合った。
「君が寂しくならんよう僕が構い倒したろか」
「……結構です」
「つれへんな。君もこいつみたいにわかりやすく甘えてくれていいんやで」
なぁ、と保科副隊長に同意を求められた猫は、我関せずといった感じで大きなあくびをしている。その自由さが羨ましい。
私だって、この子みたいに素直に甘えられたら、と思う。猫みたいに自由気ままに、思うがままに。好きなようにできたら。
でも残念ながら私は人間で、理性がどうにも邪魔をして、未だに恋人である保科副隊長に上手く甘えられないでいる。
上司と部下という関係性が先にあったとはいえプライベートもこんな感じで、本当にかわいくない。
なのに。自分でもそう思うのに。保科副隊長は「まあ、そんなとこも好きやけど」とまっすぐ伝えてくるから参ってしまう。
「おっ」
頭ひとつ分上から驚いたような声が降ってきた。それからすぐに「珍しいやん」とも。
何とか勇気を振り絞って恋人にこてんと頭を預けたものの顔を上げられずにいる私は「見ないでください」と消え入りそうな声で言うしかなかった。
ただ、恋人に頭を預けただけ。それだけなのに、慣れないせいかじわじわと顔に熱が集まってくる。心臓もこれ以上ないくらいうるさい。
猫みたいに、この子みたいに素直に甘えられたらーー。そう思って勇気を出したけど今の私にはこれが限界。保科副隊長がどんな顔をしているか確認する勇気もない。
しばらくそのまま固まっていると、頭上から長い溜め息が聞こえた。もしかしたら呆れられた? それとも嫌われた? 恐る恐る顔を上げると、ほんの少し、目元を赤く染めた保科副隊長と目が合った。
「こんなんされたら君が嫌やって言うても構い倒してしまうわ」
子猫というほど小さくはなく、しかし成猫というには身体の線の細いその猫は、保護された直後は警戒してケージの中で暴れたり毛を逆立てて威嚇していたけれど、多くの隊員たちに可愛がられ愛されて今ではすっかり気を許している。
にゃーちゃんだとかクロだとか、隊員たちに様々な名前で呼ばれるその子もとうとう里親が見つかり、数日後には新しい家族のもとで幸せに暮らす予定だ。
だからここで過ごす時間はそう長くなく、隊員たちは暇さえあれば別れを惜しむようにひたすらこの子を甘やかしている。
保科副隊長もその一人で時間を見つけてはおもちゃで遊んだり、隊服が毛だらけになるのも構わず抱っこして撫で回したり。
猫も猫で保科副隊長にはべったりだった。保科副隊長を見つけると猛ダッシュで駆け寄り足元に擦り寄っていく。きっと思いきり甘えさせてくれる相手だとわかっているのだろう。他の隊員でもここまで懐いている者はいない。
「お前ともあと少しでお別れか。寂しなるなあ」
「副隊長それさっきも言ってましたよ」
「しゃあないやん、ほんまのことやねんから」
保科副隊長の言葉に私も概ね同意だ。彼ほどではないにせよ、私もこの子のことは可愛がってきた。保科副隊長の腕の中で伸びをする猫の顎を指先で擽れば、満足げな鳴き声が返ってくる。
短い間だったけれど、この穏やかな癒しの時間がなくなると思うと確かに寂しく感じる。
「そない寂しい?」
「え」
「声に出とったで」
うそ、と口元を手で覆うと保科副隊長がゆるりと目を細めた。その表情からは本当なのか冗談なのか判断できない。彼のことだから後者の気もするけれど、どちらにせよ今の反応で図星なのはバレてしまった。
ついムッとしてそっぽを向けば、とんと隣の保科副隊長が軽く体重を預けてくる。急に動いたものだから猫が不服そうに短く鳴いた。
「そんな怒らんといてや」
「別に怒ってません」
「説得力ないなあ」
触れたところからじんわりと保科副隊長の体温が伝わってくる。かと思えば「せや!」と突然良いことを思いついたとばかりにこちらを覗き込んできて、悪戯っぽい笑みを浮かべる彼と目が合った。
「君が寂しくならんよう僕が構い倒したろか」
「……結構です」
「つれへんな。君もこいつみたいにわかりやすく甘えてくれていいんやで」
なぁ、と保科副隊長に同意を求められた猫は、我関せずといった感じで大きなあくびをしている。その自由さが羨ましい。
私だって、この子みたいに素直に甘えられたら、と思う。猫みたいに自由気ままに、思うがままに。好きなようにできたら。
でも残念ながら私は人間で、理性がどうにも邪魔をして、未だに恋人である保科副隊長に上手く甘えられないでいる。
上司と部下という関係性が先にあったとはいえプライベートもこんな感じで、本当にかわいくない。
なのに。自分でもそう思うのに。保科副隊長は「まあ、そんなとこも好きやけど」とまっすぐ伝えてくるから参ってしまう。
「おっ」
頭ひとつ分上から驚いたような声が降ってきた。それからすぐに「珍しいやん」とも。
何とか勇気を振り絞って恋人にこてんと頭を預けたものの顔を上げられずにいる私は「見ないでください」と消え入りそうな声で言うしかなかった。
ただ、恋人に頭を預けただけ。それだけなのに、慣れないせいかじわじわと顔に熱が集まってくる。心臓もこれ以上ないくらいうるさい。
猫みたいに、この子みたいに素直に甘えられたらーー。そう思って勇気を出したけど今の私にはこれが限界。保科副隊長がどんな顔をしているか確認する勇気もない。
しばらくそのまま固まっていると、頭上から長い溜め息が聞こえた。もしかしたら呆れられた? それとも嫌われた? 恐る恐る顔を上げると、ほんの少し、目元を赤く染めた保科副隊長と目が合った。
「こんなんされたら君が嫌やって言うても構い倒してしまうわ」