保科宗四郎
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訓練を終えて執務室に戻ると、デスクの上に可愛らしくラッピングされた小箱が置かれていた。その瞬間、キュピーンとあることに思い至る。
これはもしやあれでは?
今日は二月十四日、バレンタイン。基地内でも休憩時間に女性隊員同士でチョコを持ち寄ってお菓子パーティー並みに盛り上がっていたところだ。私はバレンタインということ自体頭からすっぽりと抜け落ちていて何の用意もしていなかったのだけれど。たくさん友チョコという名の義理チョコを貰ったから、ホワイトデーには当然お返しをするつもりでいる。
きっとデスクに置かれたこれも女性隊員同士の友チョコの一つだろう。訓練後で小腹が空いていたこともあって、ありがたく頂戴することにした。中身はトリュフ。一つ摘んで口に運ぶ。
「ん、おいし〜」
口に入れた瞬間、チョコレートが舌の上で滑らかに溶けていく。甘さの中に微かに苦みがあって、ふわりと鼻に抜けるカカオの香りも堪らない。ついもう一つ、と手を伸ばすと執務室の扉が開き、誰かが入ってきた。
「あれ、君戻って来とったんか」
「少し前に。保科副隊長は会議ですか」
「おん。とりあえず一段落やな」
「お疲れ様です」
今日は確か朝から新人の訓練や会議で一日予定が埋まっていたはずだ。さすがの保科副隊長もお疲れのようで、席に着くなりくたりと脱力していた。
「君はおやつタイムか」
「あげませんよ」
「まだ何も言うとらんやん。美味いかどうかは気になるけど」
「すっごくおいしいです!」
二つ目のトリュフを味わい終えて笑顔で答える。もっと食べたいけれど残念ながらあと二つしかないからぐっと我慢する。残りは帰ってからのお楽しみだ。
どこのお店のチョコだろう。箱や包装に店名みたいなものはなかったから、もしかしたら手作りかもしれない。第3にお菓子作りの得意な同僚なんていたっけ。
そんなことを考えていると、保科副隊長がにこにことこちらを見ていることに気づく。
「ならよかったわ。そんな喜んでもらえるんやったら僕も頑張った甲斐がある」
「え」
まるで自分が作ったかのような口振りだ。保科副隊長がチョコを作るなんてそんな……。
「ほんとに……?」
「せやで。ちゃーんとレシピまで調べてな。初めて作ったけど、上手くできてたみたいでよかったわ」
「そうだったんですね。私、てっきり女性隊員の作った友チョコかと思って」
「すまんすまん、紛らわしかったよなあ」
保科副隊長、お菓子まで作れちゃうんだ。しかもこんなにおいしく。お店の味と同じくらいおいしいチョコを頂いてしまって、義理とはいえホワイトデーは奮発しないと割に合わない。
お返しは何にしよう。お高めのクッキー、いや保科副隊長ならコーヒーやモンブランのほうが……。
「それ義理やなくて本命やねん」
「へ?」
それ、とは。義理じゃなくて本命、とは。
きょとんとする私に、保科副隊長がにこやかに指を差す。その先には私が残りは家に帰ってから食べようと蓋をした保科副隊長の作ったトリュフがあって。
「君のこと好きやから、本命チョコ渡してん」
「え……ええっ!?」
保科副隊長の言葉の意味をようやく理解して、一気に顔に熱が集中する。
急にそんな、どうして。
動揺して口をパクパクさせることしかできない私に、保科副隊長は頬杖をつき呆れたように笑った。
「今ここで急やないってことを一から全部説明したってもええけど」
私はふるふると首を横に振った。大事なことだから聞くべきなんだろうけど、今これ以上聞いたら頭がパンクしてしまいそうだ。先に心臓のほうが破裂しそうではあるけれど。
「ほなそっちは追々話すとして。返事は欲しいなあ」
「へ、返事ですか」
保科副隊長が頷く。その眦はほんのりと赤く、初めて見る表情に一際大きく心臓が鳴った。
「ホワイトデー。期待して待っててもええ?」
二人きりの執務室に静かに響くその声に私はきゅっと唇を引き結んだ。ずるい。そんな顔でそんな風に言われたら断れるわけがない。
こくりと頷くと、保科副隊長がほっとしたように息を吐いた。
告白の返事はホワイトデーに。タイムリミットは約一か月後。
その間しっかり自分の気持ちと向き合って決めようと思っていたのだけど、次の日から保科副隊長による怒涛のアピールが始まることを、この時の私はまだ知らないのだった。
これはもしやあれでは?
今日は二月十四日、バレンタイン。基地内でも休憩時間に女性隊員同士でチョコを持ち寄ってお菓子パーティー並みに盛り上がっていたところだ。私はバレンタインということ自体頭からすっぽりと抜け落ちていて何の用意もしていなかったのだけれど。たくさん友チョコという名の義理チョコを貰ったから、ホワイトデーには当然お返しをするつもりでいる。
きっとデスクに置かれたこれも女性隊員同士の友チョコの一つだろう。訓練後で小腹が空いていたこともあって、ありがたく頂戴することにした。中身はトリュフ。一つ摘んで口に運ぶ。
「ん、おいし〜」
口に入れた瞬間、チョコレートが舌の上で滑らかに溶けていく。甘さの中に微かに苦みがあって、ふわりと鼻に抜けるカカオの香りも堪らない。ついもう一つ、と手を伸ばすと執務室の扉が開き、誰かが入ってきた。
「あれ、君戻って来とったんか」
「少し前に。保科副隊長は会議ですか」
「おん。とりあえず一段落やな」
「お疲れ様です」
今日は確か朝から新人の訓練や会議で一日予定が埋まっていたはずだ。さすがの保科副隊長もお疲れのようで、席に着くなりくたりと脱力していた。
「君はおやつタイムか」
「あげませんよ」
「まだ何も言うとらんやん。美味いかどうかは気になるけど」
「すっごくおいしいです!」
二つ目のトリュフを味わい終えて笑顔で答える。もっと食べたいけれど残念ながらあと二つしかないからぐっと我慢する。残りは帰ってからのお楽しみだ。
どこのお店のチョコだろう。箱や包装に店名みたいなものはなかったから、もしかしたら手作りかもしれない。第3にお菓子作りの得意な同僚なんていたっけ。
そんなことを考えていると、保科副隊長がにこにことこちらを見ていることに気づく。
「ならよかったわ。そんな喜んでもらえるんやったら僕も頑張った甲斐がある」
「え」
まるで自分が作ったかのような口振りだ。保科副隊長がチョコを作るなんてそんな……。
「ほんとに……?」
「せやで。ちゃーんとレシピまで調べてな。初めて作ったけど、上手くできてたみたいでよかったわ」
「そうだったんですね。私、てっきり女性隊員の作った友チョコかと思って」
「すまんすまん、紛らわしかったよなあ」
保科副隊長、お菓子まで作れちゃうんだ。しかもこんなにおいしく。お店の味と同じくらいおいしいチョコを頂いてしまって、義理とはいえホワイトデーは奮発しないと割に合わない。
お返しは何にしよう。お高めのクッキー、いや保科副隊長ならコーヒーやモンブランのほうが……。
「それ義理やなくて本命やねん」
「へ?」
それ、とは。義理じゃなくて本命、とは。
きょとんとする私に、保科副隊長がにこやかに指を差す。その先には私が残りは家に帰ってから食べようと蓋をした保科副隊長の作ったトリュフがあって。
「君のこと好きやから、本命チョコ渡してん」
「え……ええっ!?」
保科副隊長の言葉の意味をようやく理解して、一気に顔に熱が集中する。
急にそんな、どうして。
動揺して口をパクパクさせることしかできない私に、保科副隊長は頬杖をつき呆れたように笑った。
「今ここで急やないってことを一から全部説明したってもええけど」
私はふるふると首を横に振った。大事なことだから聞くべきなんだろうけど、今これ以上聞いたら頭がパンクしてしまいそうだ。先に心臓のほうが破裂しそうではあるけれど。
「ほなそっちは追々話すとして。返事は欲しいなあ」
「へ、返事ですか」
保科副隊長が頷く。その眦はほんのりと赤く、初めて見る表情に一際大きく心臓が鳴った。
「ホワイトデー。期待して待っててもええ?」
二人きりの執務室に静かに響くその声に私はきゅっと唇を引き結んだ。ずるい。そんな顔でそんな風に言われたら断れるわけがない。
こくりと頷くと、保科副隊長がほっとしたように息を吐いた。
告白の返事はホワイトデーに。タイムリミットは約一か月後。
その間しっかり自分の気持ちと向き合って決めようと思っていたのだけど、次の日から保科副隊長による怒涛のアピールが始まることを、この時の私はまだ知らないのだった。