保科宗四郎
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多忙の幼馴染から「初詣行かへん?」とメッセージが届いたのは数時間前のこと。寝正月を決め込もうと考えていた私は、それを見るなり慌ててベッドから飛び起きた。
宗ちゃん、帰って来とったんやな。
幼馴染の宗ちゃんこと保科宗四郎は、今や日本防衛隊第3部隊の副隊長だ。彼の活躍振りはメディアを通してここ関西にまで届いている。
前に会ったのはいつやったっけ。
なんてことないメッセージのやり取りはたまにしているけれど、実際に会うのは随分と久しぶりな気がする。ただでさえ多忙の宗ちゃんは滅多にこっちに帰って来ないし、土日休みの私とは休日のタイミングが合うことはほぼない。
だから会って早々、新年の挨拶の次に出てきた言葉は「珍しいなぁ」だった。宗ちゃんが元旦に実家に帰ってくるなんて、彼が第3に行ってから初めてだ。きっとなるべく会いたくないであろう兄の宗一郎くんも実家に帰って来ているだろうし。
「たまたま休みが取れてな。親も帰って来いってうるさいし」
「あー、なるほど」
「けどあまりにもクソ兄貴が鬱陶しいから逃げてきた」
「あぁ……」
宗ちゃんに構い倒して鬱陶しがられる宗一郎くんが容易に想像できて苦笑する。それから相手にされずしょんぼりする姿も。
「わかるわぁ。うちも親戚が来てたんやけど、彼氏はおらんのかとか結婚せぇへんのかとかうるさいんよなぁ。ほっといてくれればええのに」
だから今日は親戚付き合いが面倒くさくて寝正月を決め込むつもりだった。そんな時に宗ちゃんからメッセージが来て、ラッキーとばかりに家を飛び出して来たのだけど。まさか宗ちゃんも似たような理由だったとは。
「ほーん、彼氏おらんの?」
「もう宗ちゃんまでやめてよ! おらんって」
「すまんすまん、純粋に気になってな」
「そういう宗ちゃんは? 彼女とかおらんの」
「おらんよ。てか僕、好きな子おるし」
「え、そうなん!?」
「おん。長いこと僕の片思いやけどな」
初めて聞く話に私は目を丸くした。子どもの頃から宗ちゃんはモテた。誰かと付き合ったとかは聞いたことないけど、何度も告白されたことがあるのは知っているし、私自身宗ちゃんと仲が良かったこともあって女の子に協力してと言われたこともある。
大人になった今でもきっとそれは変わらなくて、彼女くらい居そうなものなのに。
「なんか、意外……」
「なんやそれ傷つくなぁ。僕、結構一途なんやけど」
それは本当にそうなのだろう。宗ちゃんのひたむきさを私は知っている。学生時代、それは剣術を鍛えるのに向けられていたけれど、きっと人に対してもそのひたむきさは変わらない。
宗ちゃんに想われてる子は幸せもんやな。
その恋が実を結ぶかどうかは置いておいて、宗ちゃんは自慢の幼馴染だ。幸せになってほしいと思うのは当然だろう。
だから賽銭箱にいつもより多めに賽銭を投げ入れて、神様にお願いをする。
どうか宗ちゃんの恋が叶いますように。
それから、去年同様今年も穏やかに過ごせますように。
ついでに、私にも素敵な人が現れますように。
ーーまぁ、最後のは宗ちゃんの話を聞いて感化されただけだけど。
これでもかと神頼みして顔を上げると、宗ちゃんが笑いを堪えていた。
「くくっ、いくら何でも長すぎやろ!」
「いいやろ別に! 女の子には色々あんねん」
せっかく宗ちゃんの分までお願いしておいてあげたのに。ムッと頬を膨らませて踵を返すと、宗ちゃんが慌てて私を引き止めた。
「待て待て、もうちょいぶらぶらしてこうや。な!」
ちらりと境内を見渡すとちらほらと屋台が出ている。
「たこ焼き食べたい。宗ちゃんの奢りな」
「わかった。鈴カステラもつけたる!」
「やった! せっかくやしおみくじも引こ」
たこやきに鈴カステラ、甘酒にチョコバナナまで食べ終えてから、宗ちゃんと二人でおみくじを引いた。
「見て宗ちゃん! 私大吉やったわ」
「おっ、ええやん! 僕は吉やわ」
大吉なだけあって、私のおみくじには良いことしか書いていない。それから宗ちゃんのも見せてもらって、さっきの話を聞いたせいか恋愛やら待ち人やらの項目につい目が行ってしまう。
ちなみに宗ちゃんの恋愛運は努力せよ、待ち人は来ず。神頼みが足りなかったかもしれない。
「ちょっともう一回神様にお願いして来ようかな」
「は? 何で」
「だって宗ちゃん、待ち人来おへんって」
落ち込む私に宗ちゃんが吹き出す。
「ぶはっ、お前そんなこと気にしてたんか」
「あ、当たり前やん! 宗ちゃんは大事な幼馴染やもん」
「……あー、これは確かに今以上に努力が必要やな」
「え?」
きょとんとする私に宗ちゃんが目を細める。その表情に思わずどきりとして息を呑むと、逃さないとでもいうように手を掴まれた。そしてそのままするりと指先が絡み合う。
「別に待ち人は来んでもええねん。待つんは性に合わんしな」
低い声が鼓膜を震わせる。その声にぞくりとして身動ぐと宗ちゃんが微かに笑う気配がした。
ああ、なんでだろう。目の前にいるのはよく知る幼馴染の宗ちゃんのはずなのに、全然知らない男の人みたいだ。
こわい。なのに目が離せない。心臓がさっきからうるさくて堪らない。
そんな私を見て、宗ちゃんは何を思ったのか。きゅっと眦を下げ、私にだけ聞こえるよう耳元で囁く。
「これからは本気でいくから覚悟しいや」
宗ちゃん、帰って来とったんやな。
幼馴染の宗ちゃんこと保科宗四郎は、今や日本防衛隊第3部隊の副隊長だ。彼の活躍振りはメディアを通してここ関西にまで届いている。
前に会ったのはいつやったっけ。
なんてことないメッセージのやり取りはたまにしているけれど、実際に会うのは随分と久しぶりな気がする。ただでさえ多忙の宗ちゃんは滅多にこっちに帰って来ないし、土日休みの私とは休日のタイミングが合うことはほぼない。
だから会って早々、新年の挨拶の次に出てきた言葉は「珍しいなぁ」だった。宗ちゃんが元旦に実家に帰ってくるなんて、彼が第3に行ってから初めてだ。きっとなるべく会いたくないであろう兄の宗一郎くんも実家に帰って来ているだろうし。
「たまたま休みが取れてな。親も帰って来いってうるさいし」
「あー、なるほど」
「けどあまりにもクソ兄貴が鬱陶しいから逃げてきた」
「あぁ……」
宗ちゃんに構い倒して鬱陶しがられる宗一郎くんが容易に想像できて苦笑する。それから相手にされずしょんぼりする姿も。
「わかるわぁ。うちも親戚が来てたんやけど、彼氏はおらんのかとか結婚せぇへんのかとかうるさいんよなぁ。ほっといてくれればええのに」
だから今日は親戚付き合いが面倒くさくて寝正月を決め込むつもりだった。そんな時に宗ちゃんからメッセージが来て、ラッキーとばかりに家を飛び出して来たのだけど。まさか宗ちゃんも似たような理由だったとは。
「ほーん、彼氏おらんの?」
「もう宗ちゃんまでやめてよ! おらんって」
「すまんすまん、純粋に気になってな」
「そういう宗ちゃんは? 彼女とかおらんの」
「おらんよ。てか僕、好きな子おるし」
「え、そうなん!?」
「おん。長いこと僕の片思いやけどな」
初めて聞く話に私は目を丸くした。子どもの頃から宗ちゃんはモテた。誰かと付き合ったとかは聞いたことないけど、何度も告白されたことがあるのは知っているし、私自身宗ちゃんと仲が良かったこともあって女の子に協力してと言われたこともある。
大人になった今でもきっとそれは変わらなくて、彼女くらい居そうなものなのに。
「なんか、意外……」
「なんやそれ傷つくなぁ。僕、結構一途なんやけど」
それは本当にそうなのだろう。宗ちゃんのひたむきさを私は知っている。学生時代、それは剣術を鍛えるのに向けられていたけれど、きっと人に対してもそのひたむきさは変わらない。
宗ちゃんに想われてる子は幸せもんやな。
その恋が実を結ぶかどうかは置いておいて、宗ちゃんは自慢の幼馴染だ。幸せになってほしいと思うのは当然だろう。
だから賽銭箱にいつもより多めに賽銭を投げ入れて、神様にお願いをする。
どうか宗ちゃんの恋が叶いますように。
それから、去年同様今年も穏やかに過ごせますように。
ついでに、私にも素敵な人が現れますように。
ーーまぁ、最後のは宗ちゃんの話を聞いて感化されただけだけど。
これでもかと神頼みして顔を上げると、宗ちゃんが笑いを堪えていた。
「くくっ、いくら何でも長すぎやろ!」
「いいやろ別に! 女の子には色々あんねん」
せっかく宗ちゃんの分までお願いしておいてあげたのに。ムッと頬を膨らませて踵を返すと、宗ちゃんが慌てて私を引き止めた。
「待て待て、もうちょいぶらぶらしてこうや。な!」
ちらりと境内を見渡すとちらほらと屋台が出ている。
「たこ焼き食べたい。宗ちゃんの奢りな」
「わかった。鈴カステラもつけたる!」
「やった! せっかくやしおみくじも引こ」
たこやきに鈴カステラ、甘酒にチョコバナナまで食べ終えてから、宗ちゃんと二人でおみくじを引いた。
「見て宗ちゃん! 私大吉やったわ」
「おっ、ええやん! 僕は吉やわ」
大吉なだけあって、私のおみくじには良いことしか書いていない。それから宗ちゃんのも見せてもらって、さっきの話を聞いたせいか恋愛やら待ち人やらの項目につい目が行ってしまう。
ちなみに宗ちゃんの恋愛運は努力せよ、待ち人は来ず。神頼みが足りなかったかもしれない。
「ちょっともう一回神様にお願いして来ようかな」
「は? 何で」
「だって宗ちゃん、待ち人来おへんって」
落ち込む私に宗ちゃんが吹き出す。
「ぶはっ、お前そんなこと気にしてたんか」
「あ、当たり前やん! 宗ちゃんは大事な幼馴染やもん」
「……あー、これは確かに今以上に努力が必要やな」
「え?」
きょとんとする私に宗ちゃんが目を細める。その表情に思わずどきりとして息を呑むと、逃さないとでもいうように手を掴まれた。そしてそのままするりと指先が絡み合う。
「別に待ち人は来んでもええねん。待つんは性に合わんしな」
低い声が鼓膜を震わせる。その声にぞくりとして身動ぐと宗ちゃんが微かに笑う気配がした。
ああ、なんでだろう。目の前にいるのはよく知る幼馴染の宗ちゃんのはずなのに、全然知らない男の人みたいだ。
こわい。なのに目が離せない。心臓がさっきからうるさくて堪らない。
そんな私を見て、宗ちゃんは何を思ったのか。きゅっと眦を下げ、私にだけ聞こえるよう耳元で囁く。
「これからは本気でいくから覚悟しいや」
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