保科宗四郎
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執務室に響くそれは、怪獣の咆哮に他ならなかった。
「っ、小此木ちゃん状況は!?」
「はい、現場はここ執務室。フォルティチュードは計測中ですが……数値出ました! フォルティチュード8.0です!」
「大怪獣クラスやないか! まぁあれだけデカい音しとったらそうなるわなぁ」
緊迫した空気の中、息つく間もなく交わされる保科副隊長と小此木先輩の会話。私はそれを聞きながら、咄嗟に両手でお腹を押さえた。しかし悪あがきの甲斐はなく、再びぐうぅぅと、地響きのような音がする。
「ぶはっ」
「あははっ」
堪らず吹き出した二人をじとりと睨め付ける。確かに、確かに腹の虫なんてかわいいものじゃないけれど、そんなに笑わなくてもいいのに。
「うう、二人してひどいですよ……」
真っ赤になって震える私の肩を保科副隊長が慰めるようにぽんと叩く。
「すまんな、くくっ、関西の血が騒いでつい」
「ごめんね。私も徹夜明けだからか頭が回らなくて副隊長のノリに乗っちゃった」
小此木先輩は申し訳なさそうにしてくれたからまだいい。けれど保科副隊長は未だ笑いが収まらないらしく、私の顔を見ては先の轟音を思い出してか度々肩を震わせていた。いつまでも部下の失態で笑って、全くひどい上司だ。
ついムッとしてそっぽを向くと「せやからすまんって」と謝罪が聞こえたけれど、しばらくは無視を決め込むことにした。
先日の任務の報告書をまとめていた最中に突如鳴り響いたお腹の音。それを聞こえなかった振りでもしてくれればよかったのに、思い虚しく始まった即興の寸劇。
面白いことが好きな保科副隊長が悪ノリするのはわかるけど、徹夜明けとはいえ真面目な小此木先輩まで便乗してくるとは。しかもフォルティチュード8.0って、そこまで音大きかったかな。
地味にショックを受けつつ、またいつ鳴るともわからないお腹をさする。時刻は午後一時半を過ぎたところ。昼ご飯は食堂に行く暇がなくてまだ食べていない。
でもそれは保科副隊長と小此木先輩も同じだ。やるべき仕事が残っているのに私だけ先に行くわけにはいかない。空腹のピークを越えてしまえばお腹が鳴るなんてこともなくなるだろうけど。
お腹に潜む空腹という名の大怪獣はさっきからちびちび飲んでいるカフェオレでは誤魔化されないぞとばかりに、きゅるると再び暴れ出す準備を始めている。このままではまた保科副隊長に笑われてしまいそうだ。
ちらりと視線を移すとようやく落ち着いたらしい保科副隊長とぱちりと目が合った。もう顔を見るだけで笑われることはなさそうでほっとする。代わりに保科副隊長はいいことを思いついたとばかりに手を叩き、両人差し指を立てて言った。
「せや、食堂に行こう!」
「え」
「また急ですね」
そうだ、京都に行こうのノリで提案してくる保科副隊長に、私と小此木先輩の視線が集まる。
もしや行きたそうにしてるのが顔に出てたとか? 恥ずかしいやら申し訳ないやら情けないやらで赤くなったり青くなったりしていると、慌てた様子で保科副隊長が付け加えた。
「ちゃうで! 単に僕も腹減ったから飯行きたいなって思っただけや」
「でも、まだ仕事が……」
「急ぎのもんは終わっとるやろ。小此木ちゃんも行けそ?」
「はい。あと五分ほど待っていただければ」
「よし、ほな決まりやな。さっきはいじり過ぎたし、今日は僕の奢りや。好きなもん食ってええで」
「いいんですか!? やった!」
小さくガッツポーズすると、パソコンと向き合っていた小此木先輩がキーボードを打つ手はそのままに顔だけこちらに覗かせた。
「副隊長ー、それ私もいいですか?」
「おん、ええよー。デザートも付けてええで」
なんて太っ腹な! さっきはひどい上司だと思ったけれど、保科副隊長様々だ。
今日のメニューは何だろう。この前食べた彩り野菜と鶏の黒酢あんかけはおいしかったなぁ。デザートもどれにしよう。
そんなことを考えていたらお腹の大怪獣が我慢できないとばかりに咆哮し、私は再び保科副隊長と小此木先輩に笑われたのだった。
「っ、小此木ちゃん状況は!?」
「はい、現場はここ執務室。フォルティチュードは計測中ですが……数値出ました! フォルティチュード8.0です!」
「大怪獣クラスやないか! まぁあれだけデカい音しとったらそうなるわなぁ」
緊迫した空気の中、息つく間もなく交わされる保科副隊長と小此木先輩の会話。私はそれを聞きながら、咄嗟に両手でお腹を押さえた。しかし悪あがきの甲斐はなく、再びぐうぅぅと、地響きのような音がする。
「ぶはっ」
「あははっ」
堪らず吹き出した二人をじとりと睨め付ける。確かに、確かに腹の虫なんてかわいいものじゃないけれど、そんなに笑わなくてもいいのに。
「うう、二人してひどいですよ……」
真っ赤になって震える私の肩を保科副隊長が慰めるようにぽんと叩く。
「すまんな、くくっ、関西の血が騒いでつい」
「ごめんね。私も徹夜明けだからか頭が回らなくて副隊長のノリに乗っちゃった」
小此木先輩は申し訳なさそうにしてくれたからまだいい。けれど保科副隊長は未だ笑いが収まらないらしく、私の顔を見ては先の轟音を思い出してか度々肩を震わせていた。いつまでも部下の失態で笑って、全くひどい上司だ。
ついムッとしてそっぽを向くと「せやからすまんって」と謝罪が聞こえたけれど、しばらくは無視を決め込むことにした。
先日の任務の報告書をまとめていた最中に突如鳴り響いたお腹の音。それを聞こえなかった振りでもしてくれればよかったのに、思い虚しく始まった即興の寸劇。
面白いことが好きな保科副隊長が悪ノリするのはわかるけど、徹夜明けとはいえ真面目な小此木先輩まで便乗してくるとは。しかもフォルティチュード8.0って、そこまで音大きかったかな。
地味にショックを受けつつ、またいつ鳴るともわからないお腹をさする。時刻は午後一時半を過ぎたところ。昼ご飯は食堂に行く暇がなくてまだ食べていない。
でもそれは保科副隊長と小此木先輩も同じだ。やるべき仕事が残っているのに私だけ先に行くわけにはいかない。空腹のピークを越えてしまえばお腹が鳴るなんてこともなくなるだろうけど。
お腹に潜む空腹という名の大怪獣はさっきからちびちび飲んでいるカフェオレでは誤魔化されないぞとばかりに、きゅるると再び暴れ出す準備を始めている。このままではまた保科副隊長に笑われてしまいそうだ。
ちらりと視線を移すとようやく落ち着いたらしい保科副隊長とぱちりと目が合った。もう顔を見るだけで笑われることはなさそうでほっとする。代わりに保科副隊長はいいことを思いついたとばかりに手を叩き、両人差し指を立てて言った。
「せや、食堂に行こう!」
「え」
「また急ですね」
そうだ、京都に行こうのノリで提案してくる保科副隊長に、私と小此木先輩の視線が集まる。
もしや行きたそうにしてるのが顔に出てたとか? 恥ずかしいやら申し訳ないやら情けないやらで赤くなったり青くなったりしていると、慌てた様子で保科副隊長が付け加えた。
「ちゃうで! 単に僕も腹減ったから飯行きたいなって思っただけや」
「でも、まだ仕事が……」
「急ぎのもんは終わっとるやろ。小此木ちゃんも行けそ?」
「はい。あと五分ほど待っていただければ」
「よし、ほな決まりやな。さっきはいじり過ぎたし、今日は僕の奢りや。好きなもん食ってええで」
「いいんですか!? やった!」
小さくガッツポーズすると、パソコンと向き合っていた小此木先輩がキーボードを打つ手はそのままに顔だけこちらに覗かせた。
「副隊長ー、それ私もいいですか?」
「おん、ええよー。デザートも付けてええで」
なんて太っ腹な! さっきはひどい上司だと思ったけれど、保科副隊長様々だ。
今日のメニューは何だろう。この前食べた彩り野菜と鶏の黒酢あんかけはおいしかったなぁ。デザートもどれにしよう。
そんなことを考えていたらお腹の大怪獣が我慢できないとばかりに咆哮し、私は再び保科副隊長と小此木先輩に笑われたのだった。