保科宗四郎
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相模原討伐作戦で周囲に溢れた余獣を掃討し終え亜白隊長の元へと向かう。
「報告。保科小隊、担当地区の余獣討伐完了しました。負傷者二名、いずれも軽傷です」
「報告ご苦労。負傷者は念のため救護テントへ。他隊員は全小隊が戻るまで仮設拠点で待機しておけ」
「了」
亜白隊長の指示に一つ頷き、小隊のみんなに伝えようと踵を返す。けれどどうしても気になることがあって、私は再び亜白隊長へと向き直った。
「あの、保科副隊長は……」
怪獣8号の出現により、保科副隊長は小隊の指揮を私に任せて一人討伐へと向かった。そしてその後の通信で8号が逃亡したことと、ひと足先に戦線を離脱することを本人から聞いた。
怪我の有無に関しては、報告がなかったからわからない。
きっと報告するほどのことではなかったのだとは思う。けれど件の怪獣はフォルティチュード8.0以上、そして保科副隊長がリミッター解除をしても仕留めきれなかったほどの相手だ。保科副隊長の強さはよく知っているし当然信じているけれど、だからと言って不安にならないわけではなかった。私たちの仕事は常にそういうことが起こりうるのだ。
(防衛隊員になると決めた時に覚悟はしたつもりだったけど)
さっきからずっと、心臓の辺りがざわついて落ち着かない。
余獣討伐時にはいつだって隊員たちの指揮を執りつつ、誰よりも多くを討伐するのが保科副隊長だ。そんな彼の姿が見えないだけでこんな不安なるだなんて。
保科副隊長の不在時に隊を取りまとめるのが副隊長補佐である私の役目なのに、本当に不甲斐ない。
「すみません、今訊くことではありませんでした」
もっとしっかりしないと。こういう場面はこの先もきっとある。
自身を奮い立たせるように握った手に力を込めてから、亜白隊長に一礼する。そしてそのままその場を後にしようとすると、突然「待て」と呼び止められた。
「保科には先に仮設拠点で休むように伝えた。安心しろ、大きな怪我はない」
その一言に、自分でも気が緩むのがわかった。
「そうですか。よかった」
亜白隊長は私が押し込めていた不安など見透かしていたのだろう。でもおかげでやっとゆっくり呼吸ができた気がする。
「それから、これを君に」
亜白隊長がちょいちょいと私を手招きする。何だろうと彼女の傍に行けば、取り出したのは端末だった。そして画面にはーー。
「えっ、これ……!」
「珍しいだろう」
ふふん、と亜白隊長は無表情ながらどこか自慢げに言った。でも本当にその通り。端末画面には世にも珍しい、凹んだ様子の保科副隊長の姿が映っていた。
ちょっとかわいい、なんて思ってしまったけれど、訊けば8号を逃した直後らしく、私は慌ててうっかり口にしかけた言葉を飲み込んだ。
「これを君の端末にも送っておこう」
「いいんですか?」
「ああ、仮設拠点に着いたら存分に弄ってやれ」
そう言って口元を微かに上げた亜白隊長は、保科副隊長になかなかに容赦がない。けれど隊長命令だし、と私も悪戯っぽく笑みを浮かべて頷いた。
***
「保科小隊、ただいま戻りました」
「お疲れさん。全員無事やな」
仮設拠点に戻れば先に戦線を離脱した保科副隊長がにこやかに迎えてくれた。亜白隊長の言っていた通り怪我はなさそうでほっとする。
ただ休めという命令には従っていないようで、各小隊からの情報をまとめている最中のようだった。
「何やにこにこして。ええことでもあったん?」
「はい、亜白隊長にこれをいただいて」
端末を取り出せば、ひょいと保科副隊長が覗き込む。それから「ひっ」と小さな悲鳴が聞こえてきた。
「な、ななな、何でそれを……!?」
私はにこりと笑って亜白隊長からの命令を遂行した。
「せっかくなのでしばらく待ち受けにしようかなと」
「やめて!!」
「報告。保科小隊、担当地区の余獣討伐完了しました。負傷者二名、いずれも軽傷です」
「報告ご苦労。負傷者は念のため救護テントへ。他隊員は全小隊が戻るまで仮設拠点で待機しておけ」
「了」
亜白隊長の指示に一つ頷き、小隊のみんなに伝えようと踵を返す。けれどどうしても気になることがあって、私は再び亜白隊長へと向き直った。
「あの、保科副隊長は……」
怪獣8号の出現により、保科副隊長は小隊の指揮を私に任せて一人討伐へと向かった。そしてその後の通信で8号が逃亡したことと、ひと足先に戦線を離脱することを本人から聞いた。
怪我の有無に関しては、報告がなかったからわからない。
きっと報告するほどのことではなかったのだとは思う。けれど件の怪獣はフォルティチュード8.0以上、そして保科副隊長がリミッター解除をしても仕留めきれなかったほどの相手だ。保科副隊長の強さはよく知っているし当然信じているけれど、だからと言って不安にならないわけではなかった。私たちの仕事は常にそういうことが起こりうるのだ。
(防衛隊員になると決めた時に覚悟はしたつもりだったけど)
さっきからずっと、心臓の辺りがざわついて落ち着かない。
余獣討伐時にはいつだって隊員たちの指揮を執りつつ、誰よりも多くを討伐するのが保科副隊長だ。そんな彼の姿が見えないだけでこんな不安なるだなんて。
保科副隊長の不在時に隊を取りまとめるのが副隊長補佐である私の役目なのに、本当に不甲斐ない。
「すみません、今訊くことではありませんでした」
もっとしっかりしないと。こういう場面はこの先もきっとある。
自身を奮い立たせるように握った手に力を込めてから、亜白隊長に一礼する。そしてそのままその場を後にしようとすると、突然「待て」と呼び止められた。
「保科には先に仮設拠点で休むように伝えた。安心しろ、大きな怪我はない」
その一言に、自分でも気が緩むのがわかった。
「そうですか。よかった」
亜白隊長は私が押し込めていた不安など見透かしていたのだろう。でもおかげでやっとゆっくり呼吸ができた気がする。
「それから、これを君に」
亜白隊長がちょいちょいと私を手招きする。何だろうと彼女の傍に行けば、取り出したのは端末だった。そして画面にはーー。
「えっ、これ……!」
「珍しいだろう」
ふふん、と亜白隊長は無表情ながらどこか自慢げに言った。でも本当にその通り。端末画面には世にも珍しい、凹んだ様子の保科副隊長の姿が映っていた。
ちょっとかわいい、なんて思ってしまったけれど、訊けば8号を逃した直後らしく、私は慌ててうっかり口にしかけた言葉を飲み込んだ。
「これを君の端末にも送っておこう」
「いいんですか?」
「ああ、仮設拠点に着いたら存分に弄ってやれ」
そう言って口元を微かに上げた亜白隊長は、保科副隊長になかなかに容赦がない。けれど隊長命令だし、と私も悪戯っぽく笑みを浮かべて頷いた。
***
「保科小隊、ただいま戻りました」
「お疲れさん。全員無事やな」
仮設拠点に戻れば先に戦線を離脱した保科副隊長がにこやかに迎えてくれた。亜白隊長の言っていた通り怪我はなさそうでほっとする。
ただ休めという命令には従っていないようで、各小隊からの情報をまとめている最中のようだった。
「何やにこにこして。ええことでもあったん?」
「はい、亜白隊長にこれをいただいて」
端末を取り出せば、ひょいと保科副隊長が覗き込む。それから「ひっ」と小さな悲鳴が聞こえてきた。
「な、ななな、何でそれを……!?」
私はにこりと笑って亜白隊長からの命令を遂行した。
「せっかくなのでしばらく待ち受けにしようかなと」
「やめて!!」