保科宗四郎
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二人きりになれる時間は限られているから、会えたその時には会えなかった時間を埋めるように、その間にあった出来事をたくさん話す。どんな些細なことでも宗四郎さんは笑って聞いてくれるし、私も会えない間に彼がどう過ごしていたのか知りたいから。
「……それでこの前の演習でカフカさんが」
二人で選んだ家具の中でも一番のお気に入りのソファ。そこに並んで座って宗四郎さんの淹れてくれたコーヒーを飲みながら、最近あった出来事を話すこの時間が好きだった。
休みの日に仕事の話をするのもどうかと思うけど、宗四郎さんに聞いてほしいことがたくさんあるのだ。
新人隊員たちに射撃練習に付き合ってほしいと頼まれたこととか、キコルちゃんとの対人戦で何とか一本も取られなかったこととか、演習でカフカさんがいつも以上にすごい顔で力んでいたこととか。きっと宗四郎さんなら他愛ない日常の出来事でもお腹を抱えて笑ってくれるはず。
けれど、私の予想は大きく外れた。
宗四郎さんは相槌を打つこともなく、ただ静かに口を閉ざしているだけだったのだ。
どうしたのだろう。いつもは笑ってくれるのに。
怪訝に思うものの、彼の表情からは何も窺えない。
「宗四郎さ……っ!」
不安になって彼の名前を呼ぼうとして、私は目を丸くした。少しの距離があったはずなのに、気づけば目の前に宗四郎さんの顔があったからだ。そしてそのままぐっと唇を押し付けられる。
「んっ、」
思わず身を捩るも、素早く腰に腕を回されてきつく抱き寄せられる。段々と息が苦しくなってきて抗議するように彼の胸を叩くも、聞いてくれる気配はない。いつもならこんなことしないのに。
酸素を求めて開いた唇に無理やり舌を捩じ込まれ、容赦なく咥内を蹂躙される。逃げようと舌を引っ込めればしつこく追われ、咎めるように歯を立てられた。
ーーだめ、頭がくらくらする。
呼吸もままならず抵抗する気力もなくなって、身体からくたりと力が抜けた頃、ようやく宗四郎さんが私を解放した。
「なんで……」
肩で呼吸をしながらソファの肘掛けに背中を預ける私を、宗四郎さんが静かに見つめる。まだ微かに熱を孕んでいた瞳はゆっくりと彼の瞼によって閉ざされた。それからはぁーと長く重たい溜め息をついて、宗四郎さんがぽすりと私の肩口に頭を埋める。
「すまん、止まれへんかった。けど、君が悪いんやで」
「え?」
「君が他の男の話ばっかするから」
いじけた子どものように宗四郎さんがぐりぐりとおでこを擦り付けてくる。さらりとした髪が肌に触れてくすぐったい。
「もしかして嫉妬、ですか?」
そう問えばジトリと睨まれてしまった。それをかわいいと思ってしまった私は重症かもしれない。
でも、そっか。宗四郎さんが嫉妬。
「なに、あかんの?」
「いえ、ただちょっと意外だなと思って」
「久々に会うた恋人が他の男の話ばっかしよったら僕かて嫉妬くらいするわ! 最近君が新人たちに引っ張りだこなんは見とったし」
「ふふ、見てたなら声かけてくれればいいのに」
「邪魔したなかったんや。けど次からはそうする」
本当はみんな宗四郎さんに稽古をつけてほしいのだ。ただ忙しいのも知っているから、暇さえあれば訓練場に入り浸っている私のところに来ているだけで。
そうとは知らずむくれる宗四郎さんにくすりと笑みを溢し、あやすように彼の髪を指先で梳く。けれど拗ねた恋人はまだ納得いかないようで、ちらりと私に不満げな視線を送ってきた。
「……君は平気そうやな」
「そんなことないですよ」
「ほんまか?」
「ええ、私だってしょちゅう嫉妬してますよ。でも宗四郎さんがこんな表情を見せてくれるのは私だけなんだなって思ったらそれだけで満足しちゃうんです」
あの第3部隊副隊長が嫉妬したり子どものように拗ねたりするところを誰が想像できるだろう。いや、しなくていい。この先も私だけが、彼の人には見せない一面を知っていればいい。
ーーなんて、満足とは程遠い独占欲に気づいて我ながら苦笑する。
「何やのそれ、ずっるいわぁ」
気が抜けたのか宗四郎さんが私に体重を預けてくる。鍛えられた身体は重いけれど、受け止めるようにその背中にそっと腕を回した。
「はぁ、僕には無理そうやわ。全然満足できひん。頼むから、僕のことだけ見といてや」
脱力する背中を撫でながら、小さく笑みを溢す。
「私はずっと、宗四郎さんしか見てませんよ」
知りませんでした? と悪戯っぽく問えば、知っとると間を置いて返された。照れているのかその目元は少しだけ赤い。
あんな風に強くなりたいと憧れから彼の背中を追いかけて、いつしかそれが恋に変わって。想いの形は違えど長い時間、宗四郎さんだけを見てきたつもりだ。そしてそれを打ち明けて、彼が受け入れてくれたからこそ、今の私たちがある。
「だから、宗四郎さんも私だけを見ててくださいね」
手を伸ばして宗四郎さんの両頬を包み込む。今、彼の双眸の中にいるのは私だけ。
それが嬉しくて微笑みかければ、宗四郎さんの瞳の中の私も同じように目を細めた。
「余所見しちゃだめですよ」
「アホか。どっかの誰かさんのせいでそんな暇あらへんわ」
宗四郎さんがこつりと額を合わせて言った。それから触れるだけのキスをして、二人して笑い合った。
「……それでこの前の演習でカフカさんが」
二人で選んだ家具の中でも一番のお気に入りのソファ。そこに並んで座って宗四郎さんの淹れてくれたコーヒーを飲みながら、最近あった出来事を話すこの時間が好きだった。
休みの日に仕事の話をするのもどうかと思うけど、宗四郎さんに聞いてほしいことがたくさんあるのだ。
新人隊員たちに射撃練習に付き合ってほしいと頼まれたこととか、キコルちゃんとの対人戦で何とか一本も取られなかったこととか、演習でカフカさんがいつも以上にすごい顔で力んでいたこととか。きっと宗四郎さんなら他愛ない日常の出来事でもお腹を抱えて笑ってくれるはず。
けれど、私の予想は大きく外れた。
宗四郎さんは相槌を打つこともなく、ただ静かに口を閉ざしているだけだったのだ。
どうしたのだろう。いつもは笑ってくれるのに。
怪訝に思うものの、彼の表情からは何も窺えない。
「宗四郎さ……っ!」
不安になって彼の名前を呼ぼうとして、私は目を丸くした。少しの距離があったはずなのに、気づけば目の前に宗四郎さんの顔があったからだ。そしてそのままぐっと唇を押し付けられる。
「んっ、」
思わず身を捩るも、素早く腰に腕を回されてきつく抱き寄せられる。段々と息が苦しくなってきて抗議するように彼の胸を叩くも、聞いてくれる気配はない。いつもならこんなことしないのに。
酸素を求めて開いた唇に無理やり舌を捩じ込まれ、容赦なく咥内を蹂躙される。逃げようと舌を引っ込めればしつこく追われ、咎めるように歯を立てられた。
ーーだめ、頭がくらくらする。
呼吸もままならず抵抗する気力もなくなって、身体からくたりと力が抜けた頃、ようやく宗四郎さんが私を解放した。
「なんで……」
肩で呼吸をしながらソファの肘掛けに背中を預ける私を、宗四郎さんが静かに見つめる。まだ微かに熱を孕んでいた瞳はゆっくりと彼の瞼によって閉ざされた。それからはぁーと長く重たい溜め息をついて、宗四郎さんがぽすりと私の肩口に頭を埋める。
「すまん、止まれへんかった。けど、君が悪いんやで」
「え?」
「君が他の男の話ばっかするから」
いじけた子どものように宗四郎さんがぐりぐりとおでこを擦り付けてくる。さらりとした髪が肌に触れてくすぐったい。
「もしかして嫉妬、ですか?」
そう問えばジトリと睨まれてしまった。それをかわいいと思ってしまった私は重症かもしれない。
でも、そっか。宗四郎さんが嫉妬。
「なに、あかんの?」
「いえ、ただちょっと意外だなと思って」
「久々に会うた恋人が他の男の話ばっかしよったら僕かて嫉妬くらいするわ! 最近君が新人たちに引っ張りだこなんは見とったし」
「ふふ、見てたなら声かけてくれればいいのに」
「邪魔したなかったんや。けど次からはそうする」
本当はみんな宗四郎さんに稽古をつけてほしいのだ。ただ忙しいのも知っているから、暇さえあれば訓練場に入り浸っている私のところに来ているだけで。
そうとは知らずむくれる宗四郎さんにくすりと笑みを溢し、あやすように彼の髪を指先で梳く。けれど拗ねた恋人はまだ納得いかないようで、ちらりと私に不満げな視線を送ってきた。
「……君は平気そうやな」
「そんなことないですよ」
「ほんまか?」
「ええ、私だってしょちゅう嫉妬してますよ。でも宗四郎さんがこんな表情を見せてくれるのは私だけなんだなって思ったらそれだけで満足しちゃうんです」
あの第3部隊副隊長が嫉妬したり子どものように拗ねたりするところを誰が想像できるだろう。いや、しなくていい。この先も私だけが、彼の人には見せない一面を知っていればいい。
ーーなんて、満足とは程遠い独占欲に気づいて我ながら苦笑する。
「何やのそれ、ずっるいわぁ」
気が抜けたのか宗四郎さんが私に体重を預けてくる。鍛えられた身体は重いけれど、受け止めるようにその背中にそっと腕を回した。
「はぁ、僕には無理そうやわ。全然満足できひん。頼むから、僕のことだけ見といてや」
脱力する背中を撫でながら、小さく笑みを溢す。
「私はずっと、宗四郎さんしか見てませんよ」
知りませんでした? と悪戯っぽく問えば、知っとると間を置いて返された。照れているのかその目元は少しだけ赤い。
あんな風に強くなりたいと憧れから彼の背中を追いかけて、いつしかそれが恋に変わって。想いの形は違えど長い時間、宗四郎さんだけを見てきたつもりだ。そしてそれを打ち明けて、彼が受け入れてくれたからこそ、今の私たちがある。
「だから、宗四郎さんも私だけを見ててくださいね」
手を伸ばして宗四郎さんの両頬を包み込む。今、彼の双眸の中にいるのは私だけ。
それが嬉しくて微笑みかければ、宗四郎さんの瞳の中の私も同じように目を細めた。
「余所見しちゃだめですよ」
「アホか。どっかの誰かさんのせいでそんな暇あらへんわ」
宗四郎さんがこつりと額を合わせて言った。それから触れるだけのキスをして、二人して笑い合った。