保科宗四郎
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「ん?」
いつもそこにあるはずものが見当たらず、はて? と首を傾げる。自身の専用武器SW-2033がどこにもない。
今日は武器の点検予定はなかったはずで、自分にも心当たりがないとくれば、恐らく他の誰かが持ち出したのだろう。だとしても、一体誰がそんなことをーー?
「小此木ちゃん、ちょっとええ?」
オペレーター室に向かい声を掛けると、パソコン画面と積まれた資料の奥からひょこりと丸い眼鏡が顔を出した。
「あれ、保科副隊長? 今日お休みでは……」
「ちょっと用があってな。それより僕の専用武器どこにあるか知らん?」
専用武器を使用する際には持ち出し許可が必要となる。誰かが持ち出したとすれば、当然その履歴が残っているはずだ。
けれど小此木ちゃんは「そ、そんな持ち出し履歴は残ってないですねぇ」と上擦った声で眼鏡を押し上げるだけだった。
いや、嘘下手くそか。目も泳いどるし。
「ほんまか? ほんまに知らへんの?」
「ちょっとわからないですね。どこ行っちゃったんだろ〜?」
本当にそうだとしたら大問題だが。じとりと疑いの目を向けるも、小此木ちゃんはしらを切り通すつもりらしい。彼女らしくないと思いつつ、大体理解した。
小此木ちゃんは誰かに頼まれて僕に嘘をついている。それが誰なのかも、もう予想はついているけれど。
「……ほんま困った子やな」
ぽつりと零した言葉は小此木ちゃんには届かなかったらしい。不思議そうにこちらを見つめる彼女に何でもないと告げて、オペレーター室を後にする。
さて、あの子はどこやろか。
僕の専用武器を持ち出した張本人。そして僕のことをよく知る、一番弟子。
この時間なら恐らく射撃場だろうと足を運べば、予想通り彼女はそこに居た。
「見ぃつけた」
ちょうど休憩中だったらしい彼女は僕を見るなり「ひぃ!?」と短い悲鳴を上げた。それから大慌てで近くにあった何かを抱えて逃げようとする。
「人の顔見るなり逃げるなんてひどない?」
怖がらせないよう笑顔で近づいたつもりなのに。
「だって保科副隊長、全然目が笑ってない!」
「はは、気のせいや気のせい」
小柄な体躯の愛弟子がすばしっこく逃げていく。対小型怪獣戦の基礎、応用、すべて叩き込んだだけのことはある。が、師匠である僕を抜くにはまだまだだ。
彼女の動きを先読みして、手を伸ばす。
「ぐぇっ!?」
そのまま首根っこを掴めば何とも情けない呻き声が手元で響いた。
「追いかけっこは仕舞いや」
「うぅ……」
抵抗する気を失くした愛弟子の腕の中には大事に抱えられたSW-2033があった。
「やっぱりきみやったか」
予想通りというか何というか、小此木ちゃんは後輩であるこの子に甘いところがある。僕の部下である彼女が、僕の武器を悪いようにするはずがないと信用しているのもあるだろうが。
とはいえ疑問も残る。
「で、何でこんなことしたん?」
彼女は僕が最も信頼する部下だ。そんな彼女が意味なく子どものいたずらのような行為をするとは考えにくい。
「だって……」
愛弟子がぎゅっと僕の武器を抱える腕に力を込める。
「最近保科副隊長、全然休んでないじゃないですか。今日だって非番なのに基地に来て……。鍛錬が大事なのはわかります。けど、私は休むことも同じくらい大事だと思うんです」
だからこれは返しません、と愛弟子が拗ねた子どものようにそっぽを向いた。つまり彼女は僕が非番にもかかわらず鍛錬に来るだろうと踏んで、それを阻止すべく武器を隠したと。
「何やねんそれ」
まさか自分を気遣った上で彼女が考えた策がこれとは。ありがたいやらおかしいやらで、思わず肩を震わせてしまう。
直接言うなり何なり、他に良い方法があったのではと思わなくもない。けれど言われたところで自分が素直に従ったかと言われればそうとも言えず、案外効果はあったのかもしれない。
「な、なんで笑うんですか!?」
「やっておもろいんやもん。きみ、僕を休ませるために必死すぎやろ」
「そんなの、必死になるに決まってます」
無理はしないでほしいと、愛弟子が切実に僕を見つめる。これでも自己管理はきちんとしているつもりなのだが、一番近くにいる彼女の目にそう映っていないのなら、その通りなのかもしれない。それにさすがの僕も、愛弟子にこんな悲しい顔をさせてまで鍛錬しようと思えなかった。
「ん、わかった。今日はこのまま帰るわ。けどもうこんなことしたらあかんで」
わしゃわしゃと愛弟子の髪をかき混ぜると、すぐに彼女の表情が嬉しそうなものへと変わっていく。単純すぎやろと少し心配になるが、そういう真っ直ぐで純粋なところが彼女のいいところでもある。
「まぁ、勝手に僕の武器持ち出した罰は明日受けてもらうけどな」
「えっ、亜白隊長にもちゃんと許可取ったのに!」
あの人も一枚噛んどったか。
どおりで誰も武器がないことを騒ぎ立てないわけだ。だとしたら尚更休まないわけにはいかない、が。
「それとこれとは話は別や!」
そう言い切れば愛弟子は何やら異議を唱えていたけれど、抱えたままの僕の武器を手放すつもりはさらさらないようで、強情やなぁと僕はまた笑ってしまった。
いつもそこにあるはずものが見当たらず、はて? と首を傾げる。自身の専用武器SW-2033がどこにもない。
今日は武器の点検予定はなかったはずで、自分にも心当たりがないとくれば、恐らく他の誰かが持ち出したのだろう。だとしても、一体誰がそんなことをーー?
「小此木ちゃん、ちょっとええ?」
オペレーター室に向かい声を掛けると、パソコン画面と積まれた資料の奥からひょこりと丸い眼鏡が顔を出した。
「あれ、保科副隊長? 今日お休みでは……」
「ちょっと用があってな。それより僕の専用武器どこにあるか知らん?」
専用武器を使用する際には持ち出し許可が必要となる。誰かが持ち出したとすれば、当然その履歴が残っているはずだ。
けれど小此木ちゃんは「そ、そんな持ち出し履歴は残ってないですねぇ」と上擦った声で眼鏡を押し上げるだけだった。
いや、嘘下手くそか。目も泳いどるし。
「ほんまか? ほんまに知らへんの?」
「ちょっとわからないですね。どこ行っちゃったんだろ〜?」
本当にそうだとしたら大問題だが。じとりと疑いの目を向けるも、小此木ちゃんはしらを切り通すつもりらしい。彼女らしくないと思いつつ、大体理解した。
小此木ちゃんは誰かに頼まれて僕に嘘をついている。それが誰なのかも、もう予想はついているけれど。
「……ほんま困った子やな」
ぽつりと零した言葉は小此木ちゃんには届かなかったらしい。不思議そうにこちらを見つめる彼女に何でもないと告げて、オペレーター室を後にする。
さて、あの子はどこやろか。
僕の専用武器を持ち出した張本人。そして僕のことをよく知る、一番弟子。
この時間なら恐らく射撃場だろうと足を運べば、予想通り彼女はそこに居た。
「見ぃつけた」
ちょうど休憩中だったらしい彼女は僕を見るなり「ひぃ!?」と短い悲鳴を上げた。それから大慌てで近くにあった何かを抱えて逃げようとする。
「人の顔見るなり逃げるなんてひどない?」
怖がらせないよう笑顔で近づいたつもりなのに。
「だって保科副隊長、全然目が笑ってない!」
「はは、気のせいや気のせい」
小柄な体躯の愛弟子がすばしっこく逃げていく。対小型怪獣戦の基礎、応用、すべて叩き込んだだけのことはある。が、師匠である僕を抜くにはまだまだだ。
彼女の動きを先読みして、手を伸ばす。
「ぐぇっ!?」
そのまま首根っこを掴めば何とも情けない呻き声が手元で響いた。
「追いかけっこは仕舞いや」
「うぅ……」
抵抗する気を失くした愛弟子の腕の中には大事に抱えられたSW-2033があった。
「やっぱりきみやったか」
予想通りというか何というか、小此木ちゃんは後輩であるこの子に甘いところがある。僕の部下である彼女が、僕の武器を悪いようにするはずがないと信用しているのもあるだろうが。
とはいえ疑問も残る。
「で、何でこんなことしたん?」
彼女は僕が最も信頼する部下だ。そんな彼女が意味なく子どものいたずらのような行為をするとは考えにくい。
「だって……」
愛弟子がぎゅっと僕の武器を抱える腕に力を込める。
「最近保科副隊長、全然休んでないじゃないですか。今日だって非番なのに基地に来て……。鍛錬が大事なのはわかります。けど、私は休むことも同じくらい大事だと思うんです」
だからこれは返しません、と愛弟子が拗ねた子どものようにそっぽを向いた。つまり彼女は僕が非番にもかかわらず鍛錬に来るだろうと踏んで、それを阻止すべく武器を隠したと。
「何やねんそれ」
まさか自分を気遣った上で彼女が考えた策がこれとは。ありがたいやらおかしいやらで、思わず肩を震わせてしまう。
直接言うなり何なり、他に良い方法があったのではと思わなくもない。けれど言われたところで自分が素直に従ったかと言われればそうとも言えず、案外効果はあったのかもしれない。
「な、なんで笑うんですか!?」
「やっておもろいんやもん。きみ、僕を休ませるために必死すぎやろ」
「そんなの、必死になるに決まってます」
無理はしないでほしいと、愛弟子が切実に僕を見つめる。これでも自己管理はきちんとしているつもりなのだが、一番近くにいる彼女の目にそう映っていないのなら、その通りなのかもしれない。それにさすがの僕も、愛弟子にこんな悲しい顔をさせてまで鍛錬しようと思えなかった。
「ん、わかった。今日はこのまま帰るわ。けどもうこんなことしたらあかんで」
わしゃわしゃと愛弟子の髪をかき混ぜると、すぐに彼女の表情が嬉しそうなものへと変わっていく。単純すぎやろと少し心配になるが、そういう真っ直ぐで純粋なところが彼女のいいところでもある。
「まぁ、勝手に僕の武器持ち出した罰は明日受けてもらうけどな」
「えっ、亜白隊長にもちゃんと許可取ったのに!」
あの人も一枚噛んどったか。
どおりで誰も武器がないことを騒ぎ立てないわけだ。だとしたら尚更休まないわけにはいかない、が。
「それとこれとは話は別や!」
そう言い切れば愛弟子は何やら異議を唱えていたけれど、抱えたままの僕の武器を手放すつもりはさらさらないようで、強情やなぁと僕はまた笑ってしまった。