保科宗四郎
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あの日、私を救ってくれた背中を今でも思い出す。
痛くてこわくて、苦しくて。もう死ぬんだって思った瞬間に、目の前に現れた大きな背中。
『もう大丈夫やで』
そう言って微笑むあの人に、どれほど救われただろう。
死を目前に現れた彼は一等星のように眩しくて、私の目を灼くには十分だった。
ーーあの背中を追いかけたい。
届かない星に手を伸ばしたところで意味がないことはわかっている。けれど、それでも、動かずにはいられなかった。
周りの反対を押し切って、死に物狂いで努力して、ただひたすらにあの日の背中を追いかけて。
「わぷっ!?」
とん、と顔面をぶつける。痛む鼻を押さえていると、くるりと前を歩いていたその人が振り向いた。
「こーら、任務前によそ見しとったらあかんやろ」
「す、すみません」
ライフルを抱え直し、前を向く。そこにはあの日憧れた背中があった。
ようやくここまで来た、と思う。けれど手を伸ばせば触れられる距離にいるはずなのに、一向に届く気がしない。追いかけても追いかけても、あの日の一等星ーー保科副隊長は遠いままだ。
「愛弟子ちゃん、ちょっと」
ちょいちょい、とこちらを見ないままに保科副隊長が私を呼ぶ。
待機場所であるビルの屋上、そこから見える警戒区域の空へ一筋の煙が立ち昇っていく、ように見える。しかしそれは、正確には亜白隊長が討伐した本獣から溢れ出る翼竜タイプの余獣の群れだ。
「僕が本獣から出てくるやつを叩く。きみは……」
「了。保科副隊長の道を開きます。その後は他の隊と合流して、空中にいる余獣討伐に移りますね」
保科副隊長が最短で目的地に辿り着くルートを計算しライフルを構える。彼には遠く及ばないけれど、私も防衛隊員の端くれだ。梅雨払いくらい任せてほしい。
そんな私の思いを保科副隊長も察してくれたらしい。ニッと笑ってわしゃわしゃと頭を撫でられる。
「さっすが僕の愛弟子や! 話が早くて助かる」
子ども扱いされている、そうとわかっていても鼓動が勝手に速くなっていく。いくら手を伸ばしても届かないはずの星は、時折こうして向こうからこちらにやってくるから困ってしまう。
保科副隊長はそんな私の気持ちなんて知りもしないのだろうけど。
「ほな、頼むで」
そう言い残し、保科副隊長が手すりを蹴って目的地へと駆けていく。その背中を見送りながら、私は跳ねる心臓を落ち着かせるようひとつ深呼吸して、再びライフルを構え直した。
痛くてこわくて、苦しくて。もう死ぬんだって思った瞬間に、目の前に現れた大きな背中。
『もう大丈夫やで』
そう言って微笑むあの人に、どれほど救われただろう。
死を目前に現れた彼は一等星のように眩しくて、私の目を灼くには十分だった。
ーーあの背中を追いかけたい。
届かない星に手を伸ばしたところで意味がないことはわかっている。けれど、それでも、動かずにはいられなかった。
周りの反対を押し切って、死に物狂いで努力して、ただひたすらにあの日の背中を追いかけて。
「わぷっ!?」
とん、と顔面をぶつける。痛む鼻を押さえていると、くるりと前を歩いていたその人が振り向いた。
「こーら、任務前によそ見しとったらあかんやろ」
「す、すみません」
ライフルを抱え直し、前を向く。そこにはあの日憧れた背中があった。
ようやくここまで来た、と思う。けれど手を伸ばせば触れられる距離にいるはずなのに、一向に届く気がしない。追いかけても追いかけても、あの日の一等星ーー保科副隊長は遠いままだ。
「愛弟子ちゃん、ちょっと」
ちょいちょい、とこちらを見ないままに保科副隊長が私を呼ぶ。
待機場所であるビルの屋上、そこから見える警戒区域の空へ一筋の煙が立ち昇っていく、ように見える。しかしそれは、正確には亜白隊長が討伐した本獣から溢れ出る翼竜タイプの余獣の群れだ。
「僕が本獣から出てくるやつを叩く。きみは……」
「了。保科副隊長の道を開きます。その後は他の隊と合流して、空中にいる余獣討伐に移りますね」
保科副隊長が最短で目的地に辿り着くルートを計算しライフルを構える。彼には遠く及ばないけれど、私も防衛隊員の端くれだ。梅雨払いくらい任せてほしい。
そんな私の思いを保科副隊長も察してくれたらしい。ニッと笑ってわしゃわしゃと頭を撫でられる。
「さっすが僕の愛弟子や! 話が早くて助かる」
子ども扱いされている、そうとわかっていても鼓動が勝手に速くなっていく。いくら手を伸ばしても届かないはずの星は、時折こうして向こうからこちらにやってくるから困ってしまう。
保科副隊長はそんな私の気持ちなんて知りもしないのだろうけど。
「ほな、頼むで」
そう言い残し、保科副隊長が手すりを蹴って目的地へと駆けていく。その背中を見送りながら、私は跳ねる心臓を落ち着かせるようひとつ深呼吸して、再びライフルを構え直した。