保科宗四郎
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「まだ起きとったん?」
不意に掛けられた声に顔を上げると、先に寝たはずの宗四郎が心配そうな面持ちで立っていた。
「ごめん、起こした?」
リビングは煌々と照明に照らされている。もしかしたら寝室までその光が届いていたかもしれない。申し訳なく思いながら訊ねると、宗四郎はふるふると首を横に振った。
「僕は喉渇いたから水飲みに来ただけや。そしたら、まーた電気ついとるし」
そう言う宗四郎の眉間にきゅっと皺が寄る。ここ最近、家に仕事を持ち帰ることが続いていて、寝るのも日付を越えてからが当たり前になっていたから私の身体を案じてくれているのだろう。
そして私は終わりそう? とノートパソコンを覗き込む彼に、曖昧に笑みを返すことしかできなかった。
「んー、あとちょっと、かな?」
「君のあとちょっとは信用ならん。昨日もそう言って二時くらいまでやっとったやろ」
「うっ、今日のは本当だから!」
……たぶん。きっともう一踏ん張りすれば終わる、はず。集中してやれば昨日より早く眠れる可能性だってーー。
そう思い、私はラストスパートをかけるべくコーヒーの入ったマグカップに手を伸ばした。集中するのにカフェインは欠かせない。しかし伸ばした手は一向にマグカップに届かなかった。当然だ。近くに置いていたはずのマグカップはいつの間にか宗四郎の手の中にあったのだから。
「え、ちょ……」
「それ、あとどれくらいで終わるん」
「えと、一時間くらい?」
「なら今日はもう寝え。明日いつもより一時間早う起こしたるから」
静かで、それでいて有無を言わせない声音だった。宗四郎の言いたいことはわかるし、正しいのだと思う。一度しっかり睡眠をとってから仕事に臨んだほうが、間違いなく効率も良いだろうから。でも、それでも、今の仕事モードのまま最後までやってしまいたい気持ちもあって。宗四郎と違って私が夜型人間なのもあるだろうけど。
「できれば最後までやりたいなー、なんて」
「絶対に一時間で終わらんからあかん」
「それは……そうかもだけど。どうしてもだめ?」
「あかんもんはあかん。君も強情やな」
「それ、宗四郎だけには言われたくないんだけど」
二人して譲らないこと数分。先に諦めたように溜息を吐いたのは宗四郎だった。
「しゃあないな」
それを聞いて私は内心ガッツポーズをした。勝った。これで最後まで仕事ができる。
しかしそう思ったのも束の間、仕事をするのを許してくれたはずの宗四郎の手がするりと着ていたTシャツの中に入ってきて、私は思わず声にならない悲鳴を上げた。かさついた掌にゆっくりと肌を撫でられ、その手がお腹から上へと上がって来ようとするのを慌てて両手で阻止する。
「ちょ、なんで?!」
「なんでって、君が言う通りにせんから強引に寝かせよう思て」
寝るのも気ぃ失うのも似たようなもんやろって、にこにこしながら恐ろしいことを言う。それに服の中で怪しく蠢く手は、私を寝かせるつもりなど全くなさそうだった。
「冗談、だよね?」
恐る恐る訊ねる私に、宗四郎が目を眇める。
「さあ、どうやろ。君次第やな」
ごくりと喉が鳴る。ああ、これは本気の顔だ。今まで何度も見てきたし、こういう時は逆らわないほうがいいことも知っている。逆らったら、確実に明日は寝不足どころでは済まない。
「さて、まだ寝えへん悪い子は……」
再び服の下で宗四郎の掌が動く気配がした。これはやばい。身の危険を察知した私は何とか宗四郎の腕から抜け出し、「寝る! 寝ます! 今すぐに!」と大慌てで寝室に駆け込んだのだった。
不意に掛けられた声に顔を上げると、先に寝たはずの宗四郎が心配そうな面持ちで立っていた。
「ごめん、起こした?」
リビングは煌々と照明に照らされている。もしかしたら寝室までその光が届いていたかもしれない。申し訳なく思いながら訊ねると、宗四郎はふるふると首を横に振った。
「僕は喉渇いたから水飲みに来ただけや。そしたら、まーた電気ついとるし」
そう言う宗四郎の眉間にきゅっと皺が寄る。ここ最近、家に仕事を持ち帰ることが続いていて、寝るのも日付を越えてからが当たり前になっていたから私の身体を案じてくれているのだろう。
そして私は終わりそう? とノートパソコンを覗き込む彼に、曖昧に笑みを返すことしかできなかった。
「んー、あとちょっと、かな?」
「君のあとちょっとは信用ならん。昨日もそう言って二時くらいまでやっとったやろ」
「うっ、今日のは本当だから!」
……たぶん。きっともう一踏ん張りすれば終わる、はず。集中してやれば昨日より早く眠れる可能性だってーー。
そう思い、私はラストスパートをかけるべくコーヒーの入ったマグカップに手を伸ばした。集中するのにカフェインは欠かせない。しかし伸ばした手は一向にマグカップに届かなかった。当然だ。近くに置いていたはずのマグカップはいつの間にか宗四郎の手の中にあったのだから。
「え、ちょ……」
「それ、あとどれくらいで終わるん」
「えと、一時間くらい?」
「なら今日はもう寝え。明日いつもより一時間早う起こしたるから」
静かで、それでいて有無を言わせない声音だった。宗四郎の言いたいことはわかるし、正しいのだと思う。一度しっかり睡眠をとってから仕事に臨んだほうが、間違いなく効率も良いだろうから。でも、それでも、今の仕事モードのまま最後までやってしまいたい気持ちもあって。宗四郎と違って私が夜型人間なのもあるだろうけど。
「できれば最後までやりたいなー、なんて」
「絶対に一時間で終わらんからあかん」
「それは……そうかもだけど。どうしてもだめ?」
「あかんもんはあかん。君も強情やな」
「それ、宗四郎だけには言われたくないんだけど」
二人して譲らないこと数分。先に諦めたように溜息を吐いたのは宗四郎だった。
「しゃあないな」
それを聞いて私は内心ガッツポーズをした。勝った。これで最後まで仕事ができる。
しかしそう思ったのも束の間、仕事をするのを許してくれたはずの宗四郎の手がするりと着ていたTシャツの中に入ってきて、私は思わず声にならない悲鳴を上げた。かさついた掌にゆっくりと肌を撫でられ、その手がお腹から上へと上がって来ようとするのを慌てて両手で阻止する。
「ちょ、なんで?!」
「なんでって、君が言う通りにせんから強引に寝かせよう思て」
寝るのも気ぃ失うのも似たようなもんやろって、にこにこしながら恐ろしいことを言う。それに服の中で怪しく蠢く手は、私を寝かせるつもりなど全くなさそうだった。
「冗談、だよね?」
恐る恐る訊ねる私に、宗四郎が目を眇める。
「さあ、どうやろ。君次第やな」
ごくりと喉が鳴る。ああ、これは本気の顔だ。今まで何度も見てきたし、こういう時は逆らわないほうがいいことも知っている。逆らったら、確実に明日は寝不足どころでは済まない。
「さて、まだ寝えへん悪い子は……」
再び服の下で宗四郎の掌が動く気配がした。これはやばい。身の危険を察知した私は何とか宗四郎の腕から抜け出し、「寝る! 寝ます! 今すぐに!」と大慌てで寝室に駆け込んだのだった。