保科宗四郎
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たまたま家から近くて、大学の帰り道にあったから。それだけの理由で始めたコンビニバイトに思い入れなんて特になかった。適当にシフトを入れて、遊ぶお金が稼げればそれでよし。と、少し前まではそういうスタンスだったのだけど。
「最近毎日シフト入ってるね」
「えっ」
不意に店長に声をかけられて、タイムカードが手から滑り落ちた。ドキドキしながら拾ったタイムカードには確かに毎日時間が打刻されている。時刻は決まって夕方から夜にかけて。大学帰りにそのまま働いているだけだから、おかしなところはないはずだけど。何か言われるのではと、私はずっと内心ヒヤヒヤしていた。
そして私の動揺は店長にも伝わったようで、彼は慌てて言葉を付け足した。
「別に悪いってわけじゃないんだよ。こっちも助かってるし。ただ無理しないでねって言いたかっただけで」
「ああ、そういう……」
確かに今までは週三日働けばいいほうだった私が突然毎日シフトに入るようになったのだから、雇う側としてはさぞ驚いたことだろう。正直私もこんな予定じゃなかった。でも、どうしてもこの時間に働きたい理由ができてしまったのだから仕方ない。その理由は絶対に誰にも言えないけど。
「大丈夫です。欲しいものがあって、それまでお金貯めたいだけですから」
にこりと笑って店長に嘘をつく。世の中お金欲しさにバイトをする大学生が大半。こう言っておけばとりあえず不審がられることはない。店長も納得したのかそうなんだと相槌を打っただけで、それ以上は聞いてこなかった。
制服を着て、髪をひとつに束ねる。化粧も直した。
(今日はアタリの日でありますように)
祈るように店内へ向かうのも、もう癖になってしまった。
いつものように品出しをして、レジ打ちをして、時刻はあっという間に21時過ぎ。私のシフトは22時までだ。今日はハズレの日かもしれない。そう思い、肩を落とした時だった。
来客を告げるチャイムが店内に鳴り響く。
「いらっしゃいま……」
そこに立つ人物を見て、思わず息を呑む。そして私は心の中でガッツポーズをした。
(来たー!! アタリの日!!)
その人はこの店の常連さんだった。といっても多忙みたいで毎日ではないけれど、定期的にこの時間に利用してくれるお客さんだ。そしてあまりにも有名な人。初めてその人だと気づいた時は心臓が止まるかと思った。
だってまさか、私の推しが、あの日本防衛隊第3部隊の保科副隊長が私の働いているコンビニに来るとは思わなかったから。
私服姿だったから、きっとプライベートなのだろう。防衛隊員として活動している時もかっこいいけど、私服もとても似合っていてつい見惚れてしまった。
私がシフトを増やしたのはそれからだ。もちろんお金が欲しいからではなく、また同じ時間にシフトを入れれば会えるかもしれないという下心から。オフの姿を拝めるなんて早々あることじゃないし。
結果、本当にたまにだけど、プライベートの保科副隊長を拝めることができている。宝くじが当たるより全然高い確率だから、割に合わないなんてこともない。
今日もこうして拝めたし、シフトを入れて本当によかったと思う。
他のお客さんの会計を終えて、保科副隊長がレジにやって来るのを待つ。彼がよく買うのはミネラルウォーターだったり、サラダチキンだったり。けど今日は少し様子がおかしかった。
Tシャツとジーンズというだいぶラフな格好で、いつもと違う棚へと早足で向かっていく。息も切らしているようだし、急ぎの用事でもあったんだろうか。
不思議に思っているとお目当てのものを見つけたのか、保科副隊長がレジへとやってきた。
「お願いします。袋はええです」
カウンターに置かれたのは小さな長方形の箱だった。それが一瞬何かわからなくて、けれど目に飛び込んできた「0.01」の数字にひゅっと息を呑む。
下心でシフトを増やしたバチが当たったのかもしれない。
私は極力動揺を顔に出さないようにして、その商品をレジに通した。お菓子という可能性もなくはないと顔を上げるも、ディスプレイの表示を見て、うん間違いなくアレだと再認識する。お金を受け取って、お釣りを返して。保科副隊長は商品を掴むと駆け足で店を出て行った。
私は客が誰もいないことを確認してから、その場に崩れ落ちた。
「ああ〜っ!」
保科副隊長も人間だし、そういう相手がいてもおかしくない。そして相手がいれば当然そういうこともするだろう。ゴムをきちんと準備するのも偉い。けど……けど、できれば推しのそんな一面知りたくなかった〜! 今度会ったらすっごく気まずいし。
「しかもあれ一番薄いやつ……」
ずっと保科副隊長のプライベートの一面を知れた気がして嬉しかった。でも私はどうやらかっこいい彼の、表面的な部分が好きだったらしい。気づけてよかった。世の中には知らないほうがいいこともある。
「そろそろシフト交代の時間だよ。お疲れ様ーって、え、どうしたの?!」
店長がレジでしゃがみ込む私に慌てて声をかけた。
「店長、私今日でバイト辞めてもいいですか?」
「ええっ、何で?!」
その後店長にひたすら説得されて結局バイトを辞めることはなかったけれど、勤務時間は変えてもらったので、保科副隊長が今もうちのコンビニを利用しているかどうかは私にはわからない。
「最近毎日シフト入ってるね」
「えっ」
不意に店長に声をかけられて、タイムカードが手から滑り落ちた。ドキドキしながら拾ったタイムカードには確かに毎日時間が打刻されている。時刻は決まって夕方から夜にかけて。大学帰りにそのまま働いているだけだから、おかしなところはないはずだけど。何か言われるのではと、私はずっと内心ヒヤヒヤしていた。
そして私の動揺は店長にも伝わったようで、彼は慌てて言葉を付け足した。
「別に悪いってわけじゃないんだよ。こっちも助かってるし。ただ無理しないでねって言いたかっただけで」
「ああ、そういう……」
確かに今までは週三日働けばいいほうだった私が突然毎日シフトに入るようになったのだから、雇う側としてはさぞ驚いたことだろう。正直私もこんな予定じゃなかった。でも、どうしてもこの時間に働きたい理由ができてしまったのだから仕方ない。その理由は絶対に誰にも言えないけど。
「大丈夫です。欲しいものがあって、それまでお金貯めたいだけですから」
にこりと笑って店長に嘘をつく。世の中お金欲しさにバイトをする大学生が大半。こう言っておけばとりあえず不審がられることはない。店長も納得したのかそうなんだと相槌を打っただけで、それ以上は聞いてこなかった。
制服を着て、髪をひとつに束ねる。化粧も直した。
(今日はアタリの日でありますように)
祈るように店内へ向かうのも、もう癖になってしまった。
いつものように品出しをして、レジ打ちをして、時刻はあっという間に21時過ぎ。私のシフトは22時までだ。今日はハズレの日かもしれない。そう思い、肩を落とした時だった。
来客を告げるチャイムが店内に鳴り響く。
「いらっしゃいま……」
そこに立つ人物を見て、思わず息を呑む。そして私は心の中でガッツポーズをした。
(来たー!! アタリの日!!)
その人はこの店の常連さんだった。といっても多忙みたいで毎日ではないけれど、定期的にこの時間に利用してくれるお客さんだ。そしてあまりにも有名な人。初めてその人だと気づいた時は心臓が止まるかと思った。
だってまさか、私の推しが、あの日本防衛隊第3部隊の保科副隊長が私の働いているコンビニに来るとは思わなかったから。
私服姿だったから、きっとプライベートなのだろう。防衛隊員として活動している時もかっこいいけど、私服もとても似合っていてつい見惚れてしまった。
私がシフトを増やしたのはそれからだ。もちろんお金が欲しいからではなく、また同じ時間にシフトを入れれば会えるかもしれないという下心から。オフの姿を拝めるなんて早々あることじゃないし。
結果、本当にたまにだけど、プライベートの保科副隊長を拝めることができている。宝くじが当たるより全然高い確率だから、割に合わないなんてこともない。
今日もこうして拝めたし、シフトを入れて本当によかったと思う。
他のお客さんの会計を終えて、保科副隊長がレジにやって来るのを待つ。彼がよく買うのはミネラルウォーターだったり、サラダチキンだったり。けど今日は少し様子がおかしかった。
Tシャツとジーンズというだいぶラフな格好で、いつもと違う棚へと早足で向かっていく。息も切らしているようだし、急ぎの用事でもあったんだろうか。
不思議に思っているとお目当てのものを見つけたのか、保科副隊長がレジへとやってきた。
「お願いします。袋はええです」
カウンターに置かれたのは小さな長方形の箱だった。それが一瞬何かわからなくて、けれど目に飛び込んできた「0.01」の数字にひゅっと息を呑む。
下心でシフトを増やしたバチが当たったのかもしれない。
私は極力動揺を顔に出さないようにして、その商品をレジに通した。お菓子という可能性もなくはないと顔を上げるも、ディスプレイの表示を見て、うん間違いなくアレだと再認識する。お金を受け取って、お釣りを返して。保科副隊長は商品を掴むと駆け足で店を出て行った。
私は客が誰もいないことを確認してから、その場に崩れ落ちた。
「ああ〜っ!」
保科副隊長も人間だし、そういう相手がいてもおかしくない。そして相手がいれば当然そういうこともするだろう。ゴムをきちんと準備するのも偉い。けど……けど、できれば推しのそんな一面知りたくなかった〜! 今度会ったらすっごく気まずいし。
「しかもあれ一番薄いやつ……」
ずっと保科副隊長のプライベートの一面を知れた気がして嬉しかった。でも私はどうやらかっこいい彼の、表面的な部分が好きだったらしい。気づけてよかった。世の中には知らないほうがいいこともある。
「そろそろシフト交代の時間だよ。お疲れ様ーって、え、どうしたの?!」
店長がレジでしゃがみ込む私に慌てて声をかけた。
「店長、私今日でバイト辞めてもいいですか?」
「ええっ、何で?!」
その後店長にひたすら説得されて結局バイトを辞めることはなかったけれど、勤務時間は変えてもらったので、保科副隊長が今もうちのコンビニを利用しているかどうかは私にはわからない。