保科宗四郎
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ふわりと鼻腔をくすぐるのは、焼きたてのトーストと香ばしいコーヒーの香り。カーテンの隙間から差し込む朝日に目を細め、私は休日の大好きな香りを胸いっぱいに吸い込んだ。きっともうすぐ、宗四郎が起こしにやってくる。
朝やで。ほら、早よ起きって。それで私が眠い目を擦りながら起き上がれば、おそようさんって呆れながらも笑いかけてくれて。そうして始まる、恋人と過ごす休日の朝が、私は好きだった。
だから目はすっかり覚めているけれど、寝返りを打って私はもう一度目を瞑った。宗四郎に起こしてもらうための狸寝入りだ。それから程なくして、寝室のドアがコンコンと二回ノックされる。
「朝やで〜。いつまで寝とんねん。ほら、早よ起き」
ギシリと背中側のベッドが沈んだ。宗四郎がベッド脇に腰を下ろしたらしい。それからゆさゆさと布団を揺さぶられる。
「朝飯冷めてまうで〜」
「ん〜」
まだ目は開けない。もう少しこのまま。
「……ごはん、なに?」
「ハムチーズトーストとサラダ、あとヨーグルト」
「ジャム……」
「うんうん、ヨーグルトにいちごジャム入れよな」
「やっぱ蜂蜜がいい」
「それもあるから安心しい」
まさに至れり尽くせりとはこのことだ。実家のお母さんもここまではしてくれない。もう起きてもよかったのだけど、寝起きなのをいいことに私はもう少しだけ宗四郎に甘えることにした。
「コーヒーは? あれがなきゃ起きれない」
コーヒーがすでに準備されていることは、漂ってくる匂いでわかっている。けれど寝起きでそれすら気づいていないとアピールするのが重要だ。ふにゃふにゃと言葉を紡げば、「いっつも用意してあるやろ」と呆れつつも甘さを含んだ声が返ってくるはずでーー。
「ほーん。つまりうちの眠り姫は目覚めの一杯をご所望ちゅーことやな」
「へ? ……っ?!」
突然布団を剥がされた私は、それはそれは間抜けな顔をしていたことだろう。そしてそんな私の視界いっぱいに、意地悪く笑う宗四郎の顔が映る。「あっ」と声を上げる暇もなかった。
唇が触れる。……だけならまだよかった。
「ん、っぅ……」
宗四郎の舌が私の口の中に入ってくる。まさか朝からそんなことになるとは微塵も思っていなかった私は完全に無防備且つ無抵抗で、侵入はさぞ容易かったことだろう。私はされるがまま、宗四郎を受け入れることしかできなかった。
堪らずぎゅっと目を閉じてやり過ごそうとすれば、宗四郎が押さえつけるように私に体重をかけ、両手で私の耳を塞いだ。暗闇の中で、熱っぽい水音と息遣いが響く。ぞくりと背中が震えたのは、昨夜の情事が頭をよぎったからだ。宗四郎のことだから、多分わざと昨日の出来事をなぞるようなことをしているのだと思うけど。
「んぅ、ふぁ……」
最後に上顎をねっとりと舌先で撫で上げて、宗四郎が離れていく。
「そうしろ、なんで……?」
いつもはこんなことしないのに、一体どこでスイッチが入ったのか。肩で息をしながら彼を見上げると、宗四郎はすっと目を眇めて言った。
「君が言うたやんか。目覚めの一杯が欲しいって」
「言ってない! 私はコーヒーあるって聞いたの」
「せやったっけ? 僕はてっきりいーっぱい、チューして欲しいんかと思ったわ。眠り姫はキスで起きるもんやろ。けどうちのおひいさんは寝起き悪いからあれくらいせんと。ま、今日は珍しく起きとったみたいやけど」
「気づいてたの?!」
「そりゃあんだけ流暢に喋っとったらなあ。君は知らんかもしれへんけど、いつもはもーっと支離滅裂なこと言うとるで」
ーーしてやられた。自業自得なのはわかってるけど、悔しすぎる。私の企みがバレてたのも、宗四郎にまんまと乗せられたのも、全部悔しい。
私はムッと頬を膨らませて、布団を被り直した。
「あれ、起きへんの?」
「……」
「それとも、もっとして欲しかったん?」
「…………」
「なら朝飯食うたら、続きしよか。眠り姫のご所望とあらば」
私は頭まですっぽり被っていた布団を少しだけ下げて、ジトリと宗四郎を睨んだ。
その気にさせたのはそっちじゃん。絶対にわざとだ。
そんな思いを込めて睨んでいるのに、宗四郎から返ってくる眼差しはどこまでも優しい。
「……半熟のゆでたまごも食べたい」
「ん、了解。ほな起きて。今日はおひいさんのしたいことだけしよな」
無言のまま両手を伸ばすと、宗四郎が当たり前のように私の背中に腕を差し込んでそのまま抱き上げた。
「なんや、今日はいつもより甘えたさんやなあ」
「嫌?」
「ぜーんぜん。けど甘えんのは僕の前だけにしたってな」
宗四郎の甘い声が耳をくすぐる。私は返事の代わりにぐりぐりと彼の肩に頭を擦り付けて、もう少しだけ甘えたでわがままな眠り姫でいることにした。
朝やで。ほら、早よ起きって。それで私が眠い目を擦りながら起き上がれば、おそようさんって呆れながらも笑いかけてくれて。そうして始まる、恋人と過ごす休日の朝が、私は好きだった。
だから目はすっかり覚めているけれど、寝返りを打って私はもう一度目を瞑った。宗四郎に起こしてもらうための狸寝入りだ。それから程なくして、寝室のドアがコンコンと二回ノックされる。
「朝やで〜。いつまで寝とんねん。ほら、早よ起き」
ギシリと背中側のベッドが沈んだ。宗四郎がベッド脇に腰を下ろしたらしい。それからゆさゆさと布団を揺さぶられる。
「朝飯冷めてまうで〜」
「ん〜」
まだ目は開けない。もう少しこのまま。
「……ごはん、なに?」
「ハムチーズトーストとサラダ、あとヨーグルト」
「ジャム……」
「うんうん、ヨーグルトにいちごジャム入れよな」
「やっぱ蜂蜜がいい」
「それもあるから安心しい」
まさに至れり尽くせりとはこのことだ。実家のお母さんもここまではしてくれない。もう起きてもよかったのだけど、寝起きなのをいいことに私はもう少しだけ宗四郎に甘えることにした。
「コーヒーは? あれがなきゃ起きれない」
コーヒーがすでに準備されていることは、漂ってくる匂いでわかっている。けれど寝起きでそれすら気づいていないとアピールするのが重要だ。ふにゃふにゃと言葉を紡げば、「いっつも用意してあるやろ」と呆れつつも甘さを含んだ声が返ってくるはずでーー。
「ほーん。つまりうちの眠り姫は目覚めの一杯をご所望ちゅーことやな」
「へ? ……っ?!」
突然布団を剥がされた私は、それはそれは間抜けな顔をしていたことだろう。そしてそんな私の視界いっぱいに、意地悪く笑う宗四郎の顔が映る。「あっ」と声を上げる暇もなかった。
唇が触れる。……だけならまだよかった。
「ん、っぅ……」
宗四郎の舌が私の口の中に入ってくる。まさか朝からそんなことになるとは微塵も思っていなかった私は完全に無防備且つ無抵抗で、侵入はさぞ容易かったことだろう。私はされるがまま、宗四郎を受け入れることしかできなかった。
堪らずぎゅっと目を閉じてやり過ごそうとすれば、宗四郎が押さえつけるように私に体重をかけ、両手で私の耳を塞いだ。暗闇の中で、熱っぽい水音と息遣いが響く。ぞくりと背中が震えたのは、昨夜の情事が頭をよぎったからだ。宗四郎のことだから、多分わざと昨日の出来事をなぞるようなことをしているのだと思うけど。
「んぅ、ふぁ……」
最後に上顎をねっとりと舌先で撫で上げて、宗四郎が離れていく。
「そうしろ、なんで……?」
いつもはこんなことしないのに、一体どこでスイッチが入ったのか。肩で息をしながら彼を見上げると、宗四郎はすっと目を眇めて言った。
「君が言うたやんか。目覚めの一杯が欲しいって」
「言ってない! 私はコーヒーあるって聞いたの」
「せやったっけ? 僕はてっきりいーっぱい、チューして欲しいんかと思ったわ。眠り姫はキスで起きるもんやろ。けどうちのおひいさんは寝起き悪いからあれくらいせんと。ま、今日は珍しく起きとったみたいやけど」
「気づいてたの?!」
「そりゃあんだけ流暢に喋っとったらなあ。君は知らんかもしれへんけど、いつもはもーっと支離滅裂なこと言うとるで」
ーーしてやられた。自業自得なのはわかってるけど、悔しすぎる。私の企みがバレてたのも、宗四郎にまんまと乗せられたのも、全部悔しい。
私はムッと頬を膨らませて、布団を被り直した。
「あれ、起きへんの?」
「……」
「それとも、もっとして欲しかったん?」
「…………」
「なら朝飯食うたら、続きしよか。眠り姫のご所望とあらば」
私は頭まですっぽり被っていた布団を少しだけ下げて、ジトリと宗四郎を睨んだ。
その気にさせたのはそっちじゃん。絶対にわざとだ。
そんな思いを込めて睨んでいるのに、宗四郎から返ってくる眼差しはどこまでも優しい。
「……半熟のゆでたまごも食べたい」
「ん、了解。ほな起きて。今日はおひいさんのしたいことだけしよな」
無言のまま両手を伸ばすと、宗四郎が当たり前のように私の背中に腕を差し込んでそのまま抱き上げた。
「なんや、今日はいつもより甘えたさんやなあ」
「嫌?」
「ぜーんぜん。けど甘えんのは僕の前だけにしたってな」
宗四郎の甘い声が耳をくすぐる。私は返事の代わりにぐりぐりと彼の肩に頭を擦り付けて、もう少しだけ甘えたでわがままな眠り姫でいることにした。