保科宗四郎
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不意に目の前が真っ暗になって、耳元で「だーれや?」と囁かれる。聞き覚えのある声、しかも関西弁となればほとんど答えを言っているようなもので、私は「えっと……」と控えめに口を開いた。
「保科……隊長ですよね」
私の答えに、両目を覆っていた掌がぴくりと反応する。
「えー、何でわかったん?」
驚きの声とともに、ゆっくりと両目が解放される。眩しさにしばらく目を眇めていると、視界の端にさらりとした髪が揺れた。特徴的な色合いの前髪に、肩から前へと流れる長い三つ編み。髪型は全然違うけれど、面立ちはやはり、あの人によく似ている。
そんなことを考えていると、三つ編みが大きく揺れた。私がなかなか答えないのを不思議に思ったらしい。こちらの様子を窺うように、私に目隠しを仕掛けた張本人が首を傾げていた。
「宗四郎の声真似、結構自信あってんけど。もしかして似てへんかった?」
「? そっくりでしたよ?」
「なら引っかかってや。即バレは自信なくすわ」
「それは、すみませんでした」
わざとらしく凹まれてぺこりと頭を下げると、その人はけらけらと笑った。第六部隊隊長、保科宗一郎。彼は私の上司である保科副隊長のお兄さんだ。
「珍しいですね。第三に来るの久々じゃないですか?」
「せやねん。こっちに用あったからついでにと思って寄ったんやけど、宗四郎はおらんの?」
「亜白隊長に報告書を提出しに行ってるだけなので、もうすぐ戻ってくると思いますよ」
「ならもうちょいここで待たせてもらおかな。なぁなぁ、何べんも訊いて悪いんやけど、何でさっきのわかったん?」
何で、と訊かれても。何となく違う気がしただけだから、言葉にするのは難しい。けれど保科隊長に「後生やから」と頭を下げられては、わかりませんと一蹴するわけにもいかなかった。
「悪いとこ直して今後に活かさんと!」
できれば今後はご遠慮頂きたいところだ。
私はうーんと唸って、違和感を思い出す。手の大きさだとか、体温だとか、豆の位置だとか。思い返せば細かな違いはいくつもあった。あとあんな風に甘さを含んだ声は聞いたことがない。そして何より、
「保科副隊長だったら、あんなことしてきませんね」
「……嘘やん。君ら仲良いんやないの? あれくらいのスキンシップ、普通やろ」
「第六では普通なんですか? 保科副隊長は部下にそんなことしませんよ。たまに頭わしゃわしゃされることはありますけど」
「わしゃわしゃ……」
「妹とかにする感じならまだわかるんですけど、どっちかというと近所の犬にやる感じで」
「あー、なるほど。そら、あいつがびびっとるだけやな」
保科副隊長がびびる? どういう意味かと首を傾げると、保科隊長はにやりと愉しげに目を細めた。
「君をどう扱ったらええのかわからんくてびびっとんのや。したいようにしたらええのに」
「え、私噛みついたりしませんよ?!」
犬は犬でも狂犬扱いされていたということだろうか。それはちょっと、知りたくなかった。
「ど、どうしたら噛まないって信じてくれますかね。ついでに犬から妹くらいには昇格したいんですけど」
「いや、いっそ君が噛みつく勢いで迫ったれば下手な照れ隠しもできんようになると思うけど……。あ、でも義妹 も捨てがたいな。君みたいな義妹 やったら大歓迎」
保科隊長に妹扱いされたいわけではないのだけど。とりあえず、保科副隊長にびびられない存在に昇格できれば何でもいい。私はぐっと拳を握って力強く頷いた。
「頑張ります!」
「おん。そん時はお義兄 ちゃんって呼んでな」
「ふふ、お兄ちゃんですね。了解です」
「いやいやいやいや、呼ばんでええから!」
割り込むように飛んできた声に思わず振り返ると、そこにはいつの間に戻ってきたのか、息を切らした保科副隊長がいた。急いで走ってきたのだろう、顔が真っ赤だ。
やっと兄弟が揃い積もる話もあるだろうと席を外そうとするも、なんだか保科副隊長の様子がおかしい。わなわなと震えてどうしたのだろう。心配に思っていると、突然保科副隊長が声を荒げた。
「二人して何の話してんねん!」
「何て、この子がうちの義妹 になってくれるって話」
「は……はぁ?!」
「狂犬よりは妹のがいいかなって」
「いやいや、君も何言うてんの? 意味わからんと言うてるやろ」
「宗四郎、もしかして義姉 さんのが欲しかったんか。それならそれもええけど」
「あ? んなわけないやろ! それだけは絶対あかん!」
掴みかかろうとする保科副隊長を、保科隊長がひらりと躱す。あれ、積もる話は? 困惑する私をよそに保科兄弟は立川基地内でしばらく逃走劇を繰り広げ、約一時間後、二人して亜白隊長に捕まりこってり絞られたのだった。
「保科……隊長ですよね」
私の答えに、両目を覆っていた掌がぴくりと反応する。
「えー、何でわかったん?」
驚きの声とともに、ゆっくりと両目が解放される。眩しさにしばらく目を眇めていると、視界の端にさらりとした髪が揺れた。特徴的な色合いの前髪に、肩から前へと流れる長い三つ編み。髪型は全然違うけれど、面立ちはやはり、あの人によく似ている。
そんなことを考えていると、三つ編みが大きく揺れた。私がなかなか答えないのを不思議に思ったらしい。こちらの様子を窺うように、私に目隠しを仕掛けた張本人が首を傾げていた。
「宗四郎の声真似、結構自信あってんけど。もしかして似てへんかった?」
「? そっくりでしたよ?」
「なら引っかかってや。即バレは自信なくすわ」
「それは、すみませんでした」
わざとらしく凹まれてぺこりと頭を下げると、その人はけらけらと笑った。第六部隊隊長、保科宗一郎。彼は私の上司である保科副隊長のお兄さんだ。
「珍しいですね。第三に来るの久々じゃないですか?」
「せやねん。こっちに用あったからついでにと思って寄ったんやけど、宗四郎はおらんの?」
「亜白隊長に報告書を提出しに行ってるだけなので、もうすぐ戻ってくると思いますよ」
「ならもうちょいここで待たせてもらおかな。なぁなぁ、何べんも訊いて悪いんやけど、何でさっきのわかったん?」
何で、と訊かれても。何となく違う気がしただけだから、言葉にするのは難しい。けれど保科隊長に「後生やから」と頭を下げられては、わかりませんと一蹴するわけにもいかなかった。
「悪いとこ直して今後に活かさんと!」
できれば今後はご遠慮頂きたいところだ。
私はうーんと唸って、違和感を思い出す。手の大きさだとか、体温だとか、豆の位置だとか。思い返せば細かな違いはいくつもあった。あとあんな風に甘さを含んだ声は聞いたことがない。そして何より、
「保科副隊長だったら、あんなことしてきませんね」
「……嘘やん。君ら仲良いんやないの? あれくらいのスキンシップ、普通やろ」
「第六では普通なんですか? 保科副隊長は部下にそんなことしませんよ。たまに頭わしゃわしゃされることはありますけど」
「わしゃわしゃ……」
「妹とかにする感じならまだわかるんですけど、どっちかというと近所の犬にやる感じで」
「あー、なるほど。そら、あいつがびびっとるだけやな」
保科副隊長がびびる? どういう意味かと首を傾げると、保科隊長はにやりと愉しげに目を細めた。
「君をどう扱ったらええのかわからんくてびびっとんのや。したいようにしたらええのに」
「え、私噛みついたりしませんよ?!」
犬は犬でも狂犬扱いされていたということだろうか。それはちょっと、知りたくなかった。
「ど、どうしたら噛まないって信じてくれますかね。ついでに犬から妹くらいには昇格したいんですけど」
「いや、いっそ君が噛みつく勢いで迫ったれば下手な照れ隠しもできんようになると思うけど……。あ、でも
保科隊長に妹扱いされたいわけではないのだけど。とりあえず、保科副隊長にびびられない存在に昇格できれば何でもいい。私はぐっと拳を握って力強く頷いた。
「頑張ります!」
「おん。そん時はお
「ふふ、お兄ちゃんですね。了解です」
「いやいやいやいや、呼ばんでええから!」
割り込むように飛んできた声に思わず振り返ると、そこにはいつの間に戻ってきたのか、息を切らした保科副隊長がいた。急いで走ってきたのだろう、顔が真っ赤だ。
やっと兄弟が揃い積もる話もあるだろうと席を外そうとするも、なんだか保科副隊長の様子がおかしい。わなわなと震えてどうしたのだろう。心配に思っていると、突然保科副隊長が声を荒げた。
「二人して何の話してんねん!」
「何て、この子がうちの
「は……はぁ?!」
「狂犬よりは妹のがいいかなって」
「いやいや、君も何言うてんの? 意味わからんと言うてるやろ」
「宗四郎、もしかして
「あ? んなわけないやろ! それだけは絶対あかん!」
掴みかかろうとする保科副隊長を、保科隊長がひらりと躱す。あれ、積もる話は? 困惑する私をよそに保科兄弟は立川基地内でしばらく逃走劇を繰り広げ、約一時間後、二人して亜白隊長に捕まりこってり絞られたのだった。