初めてをきみと
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人生初めての告白は、放課後の教室で。
その日私は日直当番。劇的なことなど何もない平和な一日で、日直日誌の自由記入欄もなかなか埋まらず、どうしたものかと考えていた時のことだった。
「ツナマヨ」
二人きりの教室におにぎりの具がやたら大きく響く。
聞き間違いかと思って顔を上げると、向かい合わせに座る狗巻くんが真っ直ぐに私を見つめていて、その顔は夕日を浴びて赤く染まっていた。
何故か少しだけ下げられたジッパーのせいで、いつもは隠れている口元の呪印がよく見える。
狗巻くんが普段口元を隠しているのは術式が周りに与える影響を考えてのことだ。ジッパーを下げるのは、自分の声を、言葉を、相手に届かせる必要がある時だけ。下げているのは彼がその必要があると判断したからで。
ーーじゃあ、さっきのは聞き間違いじゃない?
狗巻くんが私に届けようとした言葉の意味を理解して、ぶわりと顔に熱が集まるのを感じた。
『好きです』と。あの時、確かに狗巻くんは私に向けて言ったのだ。
「えっと……」
突然のことにどうしていいのかわからない。まさか狗巻くんが私のことをそんな風に思ってくれているなんて、夢にも思わなかったから。
ちゃんと言わなきゃ。そう思うのに私の口からは情けない音しか出てこなかった。思ったことを口にする、ただそれだけなのに。今はそれがすごく難しい。
「あの、わ、私も……狗巻くんのことが好き、です」
喉に張り付いた声を無理やり剥がして紡いだ言葉は、聞くに堪えない悲惨なものだった。でも狗巻くんは静かに耳を傾けて、私の言葉を最後まで聞いてくれた。そして、
「……しゃ、しゃけ?」
「ほ、本当だよ! 嘘じゃないって。狗巻くんこそ嘘じゃない、よね?」
「しゃけ!」
狗巻くんは私のことが好き。私も狗巻くんのことが好き。
お互いに信じられなくて、何度も嘘じゃないよねと確かめ合って。
「明太子」
「こちらこそ、不束者ですがよろしくお願いします」
向かい合わせのまま、二人して深々と頭を下げた。
今日この時から、私と狗巻くんは恋人同士。ふわふわしていて、まだ夢を見ているみたいだ。
劇的なことなど何もない平和な一日の終わりに、突如起こった劇的な出来事。
さすがに「恋人ができました」なんて日誌に書くことはできなくて、ページの下の方は未だに真っ白のままだった。
その日私は日直当番。劇的なことなど何もない平和な一日で、日直日誌の自由記入欄もなかなか埋まらず、どうしたものかと考えていた時のことだった。
「ツナマヨ」
二人きりの教室におにぎりの具がやたら大きく響く。
聞き間違いかと思って顔を上げると、向かい合わせに座る狗巻くんが真っ直ぐに私を見つめていて、その顔は夕日を浴びて赤く染まっていた。
何故か少しだけ下げられたジッパーのせいで、いつもは隠れている口元の呪印がよく見える。
狗巻くんが普段口元を隠しているのは術式が周りに与える影響を考えてのことだ。ジッパーを下げるのは、自分の声を、言葉を、相手に届かせる必要がある時だけ。下げているのは彼がその必要があると判断したからで。
ーーじゃあ、さっきのは聞き間違いじゃない?
狗巻くんが私に届けようとした言葉の意味を理解して、ぶわりと顔に熱が集まるのを感じた。
『好きです』と。あの時、確かに狗巻くんは私に向けて言ったのだ。
「えっと……」
突然のことにどうしていいのかわからない。まさか狗巻くんが私のことをそんな風に思ってくれているなんて、夢にも思わなかったから。
ちゃんと言わなきゃ。そう思うのに私の口からは情けない音しか出てこなかった。思ったことを口にする、ただそれだけなのに。今はそれがすごく難しい。
「あの、わ、私も……狗巻くんのことが好き、です」
喉に張り付いた声を無理やり剥がして紡いだ言葉は、聞くに堪えない悲惨なものだった。でも狗巻くんは静かに耳を傾けて、私の言葉を最後まで聞いてくれた。そして、
「……しゃ、しゃけ?」
「ほ、本当だよ! 嘘じゃないって。狗巻くんこそ嘘じゃない、よね?」
「しゃけ!」
狗巻くんは私のことが好き。私も狗巻くんのことが好き。
お互いに信じられなくて、何度も嘘じゃないよねと確かめ合って。
「明太子」
「こちらこそ、不束者ですがよろしくお願いします」
向かい合わせのまま、二人して深々と頭を下げた。
今日この時から、私と狗巻くんは恋人同士。ふわふわしていて、まだ夢を見ているみたいだ。
劇的なことなど何もない平和な一日の終わりに、突如起こった劇的な出来事。
さすがに「恋人ができました」なんて日誌に書くことはできなくて、ページの下の方は未だに真っ白のままだった。
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