野火丸
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「お、終わったー!」
野火丸さんに頼まれていた資料を漸くまとめ終えデスクに伏せていると、「お疲れ様でした」と子どもの声が聞こえてきた。ぷしゅーっと空気が抜けたようでもう起き上がれないと思っていたのに、その声に反射的に飛び起きる。
「の、野火丸さん」
「おや、別にそのままでもよかったのに」
そんな訳にはいかない。この人は私の上司だ。それにそのまま寝てたら何されるかわかったものじゃない。
「これ頼まれてた資料です」
「もう終わったんですか。さすが仕事が早いですねー」
背筋を伸ばして、手元にあった資料を野火丸さんに渡す。要点をまとめたものだがそれなりに分厚いそれを野火丸さんはぺらぺらと捲り、ふむ、と一つ頷いた。
「手、出してください」
「へ?」
「ほら早く」
言われるがまま右手を差し出す。すると野火丸さんはどこから取り出したのか赤ペンを手にしていて、それをきゅきゅーっとペン先を私の掌に滑らせた。
「え、ちょ……⁈」
くすぐったくて手を引きたいのにびくともしない。ものすごい力で掴まれている。けれど野火丸さんは至って涼しい顔で鼻歌混じりにペンを動かしていた。
「これでよし!」
何がいいのかはわからないけど、どうやら満足したらしい。解放された手を見てみると、そこにあったのは大きな花丸。
「あの、これは……?」
どういうことだろうと首を傾げると、野火丸さんはむぅっと頬を膨らませて「見てわからないんですかー?」と不満を漏らした。
「ご褒美です。頑張った貴女に花丸をあげたんですよ。よくできました、の花丸です」
「はあ」
「なんですかその顔は。もしや僕からの花丸のありがたみをわかっていませんね」
「いや、そんなことは」
こんなことで上司の機嫌を損ねる訳にはいかない。咄嗟に思いつく限りのお礼と褒め言葉を並べようとすると、それより先にひょいと身体が宙に浮いた。
「貴女も贅沢なひとですねぇ。僕からのご褒美が足りないなんて」
「え」
「たっぷりあげますよ、ご褒美。まあ、貴女がいらないって言ってもやめませんけど」
野火丸さんが私を抱えたまま部屋を出た。
あの時大人しくお礼を言っておけば赤い花が咲くのは右掌だけで済んだのかもしれないけど、今更だ。
野火丸さんに頼まれていた資料を漸くまとめ終えデスクに伏せていると、「お疲れ様でした」と子どもの声が聞こえてきた。ぷしゅーっと空気が抜けたようでもう起き上がれないと思っていたのに、その声に反射的に飛び起きる。
「の、野火丸さん」
「おや、別にそのままでもよかったのに」
そんな訳にはいかない。この人は私の上司だ。それにそのまま寝てたら何されるかわかったものじゃない。
「これ頼まれてた資料です」
「もう終わったんですか。さすが仕事が早いですねー」
背筋を伸ばして、手元にあった資料を野火丸さんに渡す。要点をまとめたものだがそれなりに分厚いそれを野火丸さんはぺらぺらと捲り、ふむ、と一つ頷いた。
「手、出してください」
「へ?」
「ほら早く」
言われるがまま右手を差し出す。すると野火丸さんはどこから取り出したのか赤ペンを手にしていて、それをきゅきゅーっとペン先を私の掌に滑らせた。
「え、ちょ……⁈」
くすぐったくて手を引きたいのにびくともしない。ものすごい力で掴まれている。けれど野火丸さんは至って涼しい顔で鼻歌混じりにペンを動かしていた。
「これでよし!」
何がいいのかはわからないけど、どうやら満足したらしい。解放された手を見てみると、そこにあったのは大きな花丸。
「あの、これは……?」
どういうことだろうと首を傾げると、野火丸さんはむぅっと頬を膨らませて「見てわからないんですかー?」と不満を漏らした。
「ご褒美です。頑張った貴女に花丸をあげたんですよ。よくできました、の花丸です」
「はあ」
「なんですかその顔は。もしや僕からの花丸のありがたみをわかっていませんね」
「いや、そんなことは」
こんなことで上司の機嫌を損ねる訳にはいかない。咄嗟に思いつく限りのお礼と褒め言葉を並べようとすると、それより先にひょいと身体が宙に浮いた。
「貴女も贅沢なひとですねぇ。僕からのご褒美が足りないなんて」
「え」
「たっぷりあげますよ、ご褒美。まあ、貴女がいらないって言ってもやめませんけど」
野火丸さんが私を抱えたまま部屋を出た。
あの時大人しくお礼を言っておけば赤い花が咲くのは右掌だけで済んだのかもしれないけど、今更だ。