野火丸
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ピンポーン、とチャイムを鳴らすと、彼女は深夜にも関わらず笑顔で僕を出迎えた。
「お久しぶりです、野火丸さん」
嬉しそうに目を細める姿に、この人間は本当に僕のことが好きなんだなと内心嗤ってしまう。
彼女とは興味本位で、また何かに使えるかもしれないと思ってそういう関係になった友人だ。
けれど友人と呼べるほど親しくはないし、互いの連絡先も知らない。ただ僕が気まぐれに彼女の家に来ては欲を満たしているだけの関係だ。
なのに僕を見る彼女の目はいつも愛しさに溢れていて、いっそのこと僕の正体が化狐だとバラしてしまおうか、とさえ思うこともある。そうしたら、もうそんな目で僕を見ることもないだろうに。
「野火丸さ……っ」
玄関に入るなり後ろ手で鍵をかけ、何か言いたげな彼女の口を唇で塞ぐ。僕がここに来たということはやることはわかっているだろうに。
呼吸する間も与えずキスを繰り返すと、彼女の身体からくたりと力が抜けた。つっと彼女の口端を伝う唾液を舐めとろうとすれば、「待って」と小さく抵抗される。
「せっかく久々に来てあげたのにつれないなー。あなたもしたくないってわけじゃなさそうですけど」
わざとらしく腰を撫でれば彼女が顔を真っ赤にしてびくりと震えた。けれどそれでも頑なに首を横に振る。
「今日はだめです」
「どうしてです?」
「だって野火丸さん、寝てないでしょう?」
真っ直ぐな目でそう問われ、一瞬でも固まってしまったのがよくなかった。「やっぱり」と確信を得た彼女が僕の手を引いて寝室へと向かっていく。
なんだ、やっぱりするんじゃないか。
そう思い先にベッドに乗り上げた彼女に覆い被さろうとすれば、そうじゃないとムッとされてしまった。
「野火丸さんは隣に寝てください。そうそう。で、目を瞑って……」
これじゃあただの添い寝じゃないか。だったらホテルで仮眠を取るのと変わらない。
彼女に言われるがまま横になってそんなことわわ考えていると、ぽん、ぽんと彼女がゆっくりと僕の身体を揺する気配がした。それから聴いたことのない歌を口ずさみ始める。
「……何の歌ですか」
「子守歌です。子どものころにお母さんに歌ってもらいませんでした? 私、これ聴くとすぐ寝ちゃって」
残念ながら、僕には彼女のように母親にそんなことをしてもらった記憶はない。だからその感覚はわからなかったが、彼女の穏やかな歌声が耳に心地よくて、その日は腕の痛みで起きることも悪夢を見ることもなかった。
「お久しぶりです、野火丸さん」
嬉しそうに目を細める姿に、この人間は本当に僕のことが好きなんだなと内心嗤ってしまう。
彼女とは興味本位で、また何かに使えるかもしれないと思ってそういう関係になった友人だ。
けれど友人と呼べるほど親しくはないし、互いの連絡先も知らない。ただ僕が気まぐれに彼女の家に来ては欲を満たしているだけの関係だ。
なのに僕を見る彼女の目はいつも愛しさに溢れていて、いっそのこと僕の正体が化狐だとバラしてしまおうか、とさえ思うこともある。そうしたら、もうそんな目で僕を見ることもないだろうに。
「野火丸さ……っ」
玄関に入るなり後ろ手で鍵をかけ、何か言いたげな彼女の口を唇で塞ぐ。僕がここに来たということはやることはわかっているだろうに。
呼吸する間も与えずキスを繰り返すと、彼女の身体からくたりと力が抜けた。つっと彼女の口端を伝う唾液を舐めとろうとすれば、「待って」と小さく抵抗される。
「せっかく久々に来てあげたのにつれないなー。あなたもしたくないってわけじゃなさそうですけど」
わざとらしく腰を撫でれば彼女が顔を真っ赤にしてびくりと震えた。けれどそれでも頑なに首を横に振る。
「今日はだめです」
「どうしてです?」
「だって野火丸さん、寝てないでしょう?」
真っ直ぐな目でそう問われ、一瞬でも固まってしまったのがよくなかった。「やっぱり」と確信を得た彼女が僕の手を引いて寝室へと向かっていく。
なんだ、やっぱりするんじゃないか。
そう思い先にベッドに乗り上げた彼女に覆い被さろうとすれば、そうじゃないとムッとされてしまった。
「野火丸さんは隣に寝てください。そうそう。で、目を瞑って……」
これじゃあただの添い寝じゃないか。だったらホテルで仮眠を取るのと変わらない。
彼女に言われるがまま横になってそんなことわわ考えていると、ぽん、ぽんと彼女がゆっくりと僕の身体を揺する気配がした。それから聴いたことのない歌を口ずさみ始める。
「……何の歌ですか」
「子守歌です。子どものころにお母さんに歌ってもらいませんでした? 私、これ聴くとすぐ寝ちゃって」
残念ながら、僕には彼女のように母親にそんなことをしてもらった記憶はない。だからその感覚はわからなかったが、彼女の穏やかな歌声が耳に心地よくて、その日は腕の痛みで起きることも悪夢を見ることもなかった。
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