野火丸
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お酒って美味しいものだと思っていた。うん、実際に美味しいと思う。
迎えた二十歳の誕生日、初めて飲むならこれがいいと選んだのは、アルコール度数三パーセントのパッケージの可愛い桃の缶チューハイ。甘くて、しゅわしゅわ、パチパチ。それをちびりと口に運ぶと「あれ、まだ飲んでたんですかー?」と聞き慣れた声が飛んできた。
顔を上げればそこにいたのは野火丸さん。お風呂上がりの彼はわしわしと濡れた髪をタオルで拭いていて、私と目が合うなりゆるりとその金色を細めた。
「見惚れちゃいました?」
「いえ、今日はちゃんと服着てるなって思っただけです」
と言っても、履いてるのは下だけで上半身は裸なのだけど。全裸で歩き回るなんてこともざらだから、今日はまだマシなほうだ。野火丸さんは私の返しがつまらなかったのか一度ムッと唇を尖らせた後、椅子を引いて隣へと座った。ふわりとシャンプーの香りが漂ってくる。この人、また私の使ったな。
「それ、僕がお風呂に入る前から飲んでませんでした?」
「ゆっくり味わってるんです」
「炭酸苦手ならやめておけばいいのに。バカですねぇ」
「ちびちびならいけます。ほら、あと一口」
そう言ってくいと最後の一口を呷ったら、ちょっと量が多くて舌と喉がピリピリと痛んだ。うぇ、と刺激に顔を顰めると、くすりと隣から笑う気配がした。何とか飲み切ったけど、締まらなかったなぁ。二十歳になったからといって、いきなり大人っぽく振る舞えるわけではないらしい。
「お酒、美味しかったですか?」
「はい」
「どんな風に?」
突然感想を求められて戸惑う。
「甘くて、えっと、なんかしゅわしゅわで……」
「うわぁ。食レポ、残念すぎますね。びっくりするほど美味しさが伝わってこない」
失礼な! そう文句を言おうとしたら、ちゅ、と先に唇を塞がれてしまった。それからゆっくりと離れていく金色の瞳が意地悪く歪む。
「あー、これは確かに甘いですね」
人のことを散々バカにしておきながら、自分だって残念な食レポじゃないか。私は「おやすみなさい」と言って去ろうとする野火丸さんの手を掴んで、軽く引き寄せた。
「……今のだけじゃわからないでしょう?」
私の言葉に、野火丸さんが目を丸くする。それからすごく彼らしいずるい笑みを浮かべて、私の頬に手を添えた。
「もしかして誘ってます?」
「さあ、どうでしょう?」
私も野火丸さんみたく、ずるく笑ってみせる。きっとそれだけで彼はわかってくれるはずだ。
今日から二十歳。もう大人だから、触れるだけのキスでは物足りないのだ。
迎えた二十歳の誕生日、初めて飲むならこれがいいと選んだのは、アルコール度数三パーセントのパッケージの可愛い桃の缶チューハイ。甘くて、しゅわしゅわ、パチパチ。それをちびりと口に運ぶと「あれ、まだ飲んでたんですかー?」と聞き慣れた声が飛んできた。
顔を上げればそこにいたのは野火丸さん。お風呂上がりの彼はわしわしと濡れた髪をタオルで拭いていて、私と目が合うなりゆるりとその金色を細めた。
「見惚れちゃいました?」
「いえ、今日はちゃんと服着てるなって思っただけです」
と言っても、履いてるのは下だけで上半身は裸なのだけど。全裸で歩き回るなんてこともざらだから、今日はまだマシなほうだ。野火丸さんは私の返しがつまらなかったのか一度ムッと唇を尖らせた後、椅子を引いて隣へと座った。ふわりとシャンプーの香りが漂ってくる。この人、また私の使ったな。
「それ、僕がお風呂に入る前から飲んでませんでした?」
「ゆっくり味わってるんです」
「炭酸苦手ならやめておけばいいのに。バカですねぇ」
「ちびちびならいけます。ほら、あと一口」
そう言ってくいと最後の一口を呷ったら、ちょっと量が多くて舌と喉がピリピリと痛んだ。うぇ、と刺激に顔を顰めると、くすりと隣から笑う気配がした。何とか飲み切ったけど、締まらなかったなぁ。二十歳になったからといって、いきなり大人っぽく振る舞えるわけではないらしい。
「お酒、美味しかったですか?」
「はい」
「どんな風に?」
突然感想を求められて戸惑う。
「甘くて、えっと、なんかしゅわしゅわで……」
「うわぁ。食レポ、残念すぎますね。びっくりするほど美味しさが伝わってこない」
失礼な! そう文句を言おうとしたら、ちゅ、と先に唇を塞がれてしまった。それからゆっくりと離れていく金色の瞳が意地悪く歪む。
「あー、これは確かに甘いですね」
人のことを散々バカにしておきながら、自分だって残念な食レポじゃないか。私は「おやすみなさい」と言って去ろうとする野火丸さんの手を掴んで、軽く引き寄せた。
「……今のだけじゃわからないでしょう?」
私の言葉に、野火丸さんが目を丸くする。それからすごく彼らしいずるい笑みを浮かべて、私の頬に手を添えた。
「もしかして誘ってます?」
「さあ、どうでしょう?」
私も野火丸さんみたく、ずるく笑ってみせる。きっとそれだけで彼はわかってくれるはずだ。
今日から二十歳。もう大人だから、触れるだけのキスでは物足りないのだ。