野火丸
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小柄なその身体の一体どこにそんな力があるのか、私は野火丸くんに抱きかかえられ、寝室のベッドへと放り投げられた。
「痛っ」と呻くも野火丸くんはお構いなしで、こちらを見向きもせずヘッドフォンを外す。
「嘘はよくないですよー。本当は?」
「……痛く、ないです」
「はい、よくできました」
野火丸くんの言うとおり、本当はちっとも痛くなかった。でもそう言っておけば、ちょっとくらい優しく接してくれるんじゃないかと思ったのだ。まあ、全く意味はなかったようだけど。また今日もあの長い説教が始まるのかと思うと涙が出そうだった。
くるりとこちらを向いた野火丸くんの耳がぴょこりと立つ。ふわふわの狐耳に、にこにこと愛くるしい笑顔。一見純粋無垢な可愛らしい少年だが、纏うオーラは「怒ってます」と言わんばかりにピリピリとしたもので、これはやばいと私さ慌ててベッドの上で姿勢を正した。
「の、野火丸くん」
「はい」
「ごめんなさい」
「それはもう聞き飽きました」
ベッドに乗り上げた野火丸くんが、四つん這いのままじりじりと近づいてくる。
「門限破るの、これで何度目ですか?」
「……三、くらい?」
「四度目です。僕、優しいんで会社の飲み会自体は許してあげてますけど、門限は守るようにって何度も言いましたよね。この前、次はないですよーって言ったの、忘れちゃいました?」
ふるふると首を横に振り、少しでも彼から距離を取ろうと後退する。けれどすぐにベッドボードにぶつかって、それ以上下がれなくなってしまった。
「おやー、どこに行くおつもりで?」
その声にびくりと肩を震わせると、野火丸くんがニコッと私にいい笑顔を向けた。でもその目は全然笑っていなかった。いつもと同じ笑顔を貼り付けて、全く違う雰囲気を纏う彼が怖い。怖くて逃げ出したいのに、身体が竦んで動けなかった。
野火丸くんが一歩、また一歩と、ゆっくりと迫ってくる。その度にベッドが軋んで、深く、深く、沈み込んだ。
ああ、気のせいじゃなかった。
彼がベッドの端から私の元にやって来れば、遠近感で大きく見えるのは当たり前。けどこれはそういう次元の話じゃない。野火丸くんは文字通り、私に近づくにつれて大きく、本来の青年の姿に戻っているのだ。
その意図に気づいて思わず息を呑むと『野火丸さん』は妖艶に微笑んだ。そこにさっきまでの怖くも可愛らしい少年の姿はどこにもない。
まるで、今からすることは子どもの姿ではできないと思い知らされているようだった。
「あーあ、捕まっちゃいましたね。僕としてはもっと逃げ回ってくれてもよかったんですけど」
私を押し倒して、本来の姿に戻った野火丸さんが楽しげ言った。
嘘ばっかり。逃がす気なんてないくせに。
ギラリと光る金色の瞳は完全に捕食者のそれで、私はただ彼に食べられるのを待つしかなかった。
「では、言うことの聞けない悪い子にはお仕置きです」
飢えた獣が獲物を前に舌なめずりをする。
覆い被さる野火丸さんを受け入れながら、きっと彼は満足するまで離してはくれないだろうけど、どうせなら余さず食べて欲しいと、そんなことを思った。
「痛っ」と呻くも野火丸くんはお構いなしで、こちらを見向きもせずヘッドフォンを外す。
「嘘はよくないですよー。本当は?」
「……痛く、ないです」
「はい、よくできました」
野火丸くんの言うとおり、本当はちっとも痛くなかった。でもそう言っておけば、ちょっとくらい優しく接してくれるんじゃないかと思ったのだ。まあ、全く意味はなかったようだけど。また今日もあの長い説教が始まるのかと思うと涙が出そうだった。
くるりとこちらを向いた野火丸くんの耳がぴょこりと立つ。ふわふわの狐耳に、にこにこと愛くるしい笑顔。一見純粋無垢な可愛らしい少年だが、纏うオーラは「怒ってます」と言わんばかりにピリピリとしたもので、これはやばいと私さ慌ててベッドの上で姿勢を正した。
「の、野火丸くん」
「はい」
「ごめんなさい」
「それはもう聞き飽きました」
ベッドに乗り上げた野火丸くんが、四つん這いのままじりじりと近づいてくる。
「門限破るの、これで何度目ですか?」
「……三、くらい?」
「四度目です。僕、優しいんで会社の飲み会自体は許してあげてますけど、門限は守るようにって何度も言いましたよね。この前、次はないですよーって言ったの、忘れちゃいました?」
ふるふると首を横に振り、少しでも彼から距離を取ろうと後退する。けれどすぐにベッドボードにぶつかって、それ以上下がれなくなってしまった。
「おやー、どこに行くおつもりで?」
その声にびくりと肩を震わせると、野火丸くんがニコッと私にいい笑顔を向けた。でもその目は全然笑っていなかった。いつもと同じ笑顔を貼り付けて、全く違う雰囲気を纏う彼が怖い。怖くて逃げ出したいのに、身体が竦んで動けなかった。
野火丸くんが一歩、また一歩と、ゆっくりと迫ってくる。その度にベッドが軋んで、深く、深く、沈み込んだ。
ああ、気のせいじゃなかった。
彼がベッドの端から私の元にやって来れば、遠近感で大きく見えるのは当たり前。けどこれはそういう次元の話じゃない。野火丸くんは文字通り、私に近づくにつれて大きく、本来の青年の姿に戻っているのだ。
その意図に気づいて思わず息を呑むと『野火丸さん』は妖艶に微笑んだ。そこにさっきまでの怖くも可愛らしい少年の姿はどこにもない。
まるで、今からすることは子どもの姿ではできないと思い知らされているようだった。
「あーあ、捕まっちゃいましたね。僕としてはもっと逃げ回ってくれてもよかったんですけど」
私を押し倒して、本来の姿に戻った野火丸さんが楽しげ言った。
嘘ばっかり。逃がす気なんてないくせに。
ギラリと光る金色の瞳は完全に捕食者のそれで、私はただ彼に食べられるのを待つしかなかった。
「では、言うことの聞けない悪い子にはお仕置きです」
飢えた獣が獲物を前に舌なめずりをする。
覆い被さる野火丸さんを受け入れながら、きっと彼は満足するまで離してはくれないだろうけど、どうせなら余さず食べて欲しいと、そんなことを思った。
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