棘くんといっしょ
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さわさわと木の葉が揺れる音を聞きながら遠くを眺める。青い空、白い雲。そして叫びながら飛んでいく野薔薇ちゃん。うん、今日も平和だ。
京都校との交流会の後も、一、二年合同の戦闘訓練は続いていた。虎杖くんも加わってより賑やかになって、真希ちゃんなんかは特に楽しそうだ。そんなことねぇよ、って言いそうだけど、あの顔は絶対楽しんでいる。
野薔薇ちゃんが受け身の練習をする一方で、恵くんと虎杖くんは交替で真希ちゃんと組手の練習をしていた。けれど私の知る組手には程遠く、特に虎杖くんの時は激しくて、怪我をしないか見ているこっちがヒヤヒヤする。
「あ」
一瞬虎杖くんのガードが下がる。その隙に真希ちゃんが思い切り彼を蹴り飛ばした。虎杖くんの身体はそのまま勢いよくこっちに飛んできて、受け止めるのは無理なので慌てて避ける。
「大丈夫?」
「っテテ、何とか」
土埃を払いながら虎杖くんが身体を起こす。受け身もちゃんと取れてたし、ぱっと見大きな怪我もなさそうだ。
遠くで真希ちゃんが恵くんを呼んでいて、どうやら交替らしい。集中を解き、ふぅと長い息を吐いた虎杖くんが私の隣に腰を下ろした。
「先輩も休憩?」
「うん。野薔薇ちゃんと交替で」
向こうに目をやると、ちょうど野薔薇ちゃんが華麗に着地するところだった。しかしすぐに追撃がきて、再び投げ飛ばされる。
「よく飛ぶなぁ釘崎」
「でもだいぶ受け身は上手になったと思うよ」
「そっか」
俺も頑張ろ! とまっすぐ前を見る虎杖くんの横顔はキラキラと眩しかった。まだ知り合ってそう時間は経っていないけど、人懐っこくて夏の太陽みたいな子だなと思う。
「げ」
「どうかした?」
「いや、スポドリ空だったの忘れてて」
「私のでよかったら飲む? 飲みかけで申し訳ないけど」
この気温の中、しかも激しい訓練をした後で水分補給ができないのはかなり辛い。真希ちゃんのチームの方が交替までの時間が短いし、私は今のうちに新しいのを買いに行けば大丈夫だ。そう言って半分も飲んでいないペットボトルを差し出すと、虎杖くんが驚いた顔をして身を乗り出してきた。
「え、いいの⁈」
「だって、倒れられたほうが困るし」
「アザーッス‼︎」
ペットボトルを受け取って、虎杖くんは「助かった」と声を漏らしていた。大げさだなぁと思いつつ、素直な後輩に頬が緩む。よっぽど喉が渇いていたのか、虎杖くんは早急にペットボトルの蓋を開けて、
「すーじこ!」
後ろから割り込んできた棘くんに、それを奪われていた。
「え……ええ⁈」
「棘くんいつの間に⁈」
さっきまで野薔薇ちゃんたちの所にいたはずなのに。棘くんは驚く私たちにVサインをして、虎杖くんに渡した水を一気に飲み干した。ごくごくと、CM依頼が来そうなくらい喉を鳴らして。
「あー! 俺の水‼︎」
「こんぶ」
「そんなに喉渇いてたの?」
「しゃけ」
ぎゅむ、と私と虎杖くんを掻き分けて、棘くんが狭いそこに収まった。
「いやいやそこは狭いだろ」
「おかか」
「気にしなくていいよ虎杖くん。棘くん狭いとこが落ち着くらしくて、よく割り込んでくるんだよね。この前も恵くんと話してた時に……」
「はぁ、はぁ、先輩……交替……」
話を遮って這いずるようにして木陰にやって来たのは野薔薇ちゃんだった。恵くんと真希ちゃんの組手はなかなかに白熱していて、私のほうが先に交替の時間になってしまったらしい。
「ごめん、もう行くね。野薔薇ちゃんはゆっくり休んで。行こ、棘くん」
「しゃけ」
青い空、白い雲。そしてここに投げ飛ばされる私も加わって。うん、今日も平和だ。
***
「なあ釘崎、スポドリちょーだい」
「は? 持ってないの?」
「空になっちゃって」
「ったく、仕方ないわね」
ほらよ、と投げられたペットボトルを受け取って、蓋を開けた。こういうの、気にするべきかもしれないけど、俺の周りには気にしない奴ばっかりで。先輩も気にしてなかったんだと思う。
でも、狗巻先輩は。
『すーじこ!』と明るい声が頭の中で再生される。意味はわからなかった。多分『もーらい!』とかそんな感じだと思う。
一見いつもと変わらなく見えた。けど、Vサインしながら俺を見る目は笑っていなくて。
きっとあれはそういうことだ、と恋愛ごとに鈍い俺でもわかるくらいには、あからさまだった。
京都校との交流会の後も、一、二年合同の戦闘訓練は続いていた。虎杖くんも加わってより賑やかになって、真希ちゃんなんかは特に楽しそうだ。そんなことねぇよ、って言いそうだけど、あの顔は絶対楽しんでいる。
野薔薇ちゃんが受け身の練習をする一方で、恵くんと虎杖くんは交替で真希ちゃんと組手の練習をしていた。けれど私の知る組手には程遠く、特に虎杖くんの時は激しくて、怪我をしないか見ているこっちがヒヤヒヤする。
「あ」
一瞬虎杖くんのガードが下がる。その隙に真希ちゃんが思い切り彼を蹴り飛ばした。虎杖くんの身体はそのまま勢いよくこっちに飛んできて、受け止めるのは無理なので慌てて避ける。
「大丈夫?」
「っテテ、何とか」
土埃を払いながら虎杖くんが身体を起こす。受け身もちゃんと取れてたし、ぱっと見大きな怪我もなさそうだ。
遠くで真希ちゃんが恵くんを呼んでいて、どうやら交替らしい。集中を解き、ふぅと長い息を吐いた虎杖くんが私の隣に腰を下ろした。
「先輩も休憩?」
「うん。野薔薇ちゃんと交替で」
向こうに目をやると、ちょうど野薔薇ちゃんが華麗に着地するところだった。しかしすぐに追撃がきて、再び投げ飛ばされる。
「よく飛ぶなぁ釘崎」
「でもだいぶ受け身は上手になったと思うよ」
「そっか」
俺も頑張ろ! とまっすぐ前を見る虎杖くんの横顔はキラキラと眩しかった。まだ知り合ってそう時間は経っていないけど、人懐っこくて夏の太陽みたいな子だなと思う。
「げ」
「どうかした?」
「いや、スポドリ空だったの忘れてて」
「私のでよかったら飲む? 飲みかけで申し訳ないけど」
この気温の中、しかも激しい訓練をした後で水分補給ができないのはかなり辛い。真希ちゃんのチームの方が交替までの時間が短いし、私は今のうちに新しいのを買いに行けば大丈夫だ。そう言って半分も飲んでいないペットボトルを差し出すと、虎杖くんが驚いた顔をして身を乗り出してきた。
「え、いいの⁈」
「だって、倒れられたほうが困るし」
「アザーッス‼︎」
ペットボトルを受け取って、虎杖くんは「助かった」と声を漏らしていた。大げさだなぁと思いつつ、素直な後輩に頬が緩む。よっぽど喉が渇いていたのか、虎杖くんは早急にペットボトルの蓋を開けて、
「すーじこ!」
後ろから割り込んできた棘くんに、それを奪われていた。
「え……ええ⁈」
「棘くんいつの間に⁈」
さっきまで野薔薇ちゃんたちの所にいたはずなのに。棘くんは驚く私たちにVサインをして、虎杖くんに渡した水を一気に飲み干した。ごくごくと、CM依頼が来そうなくらい喉を鳴らして。
「あー! 俺の水‼︎」
「こんぶ」
「そんなに喉渇いてたの?」
「しゃけ」
ぎゅむ、と私と虎杖くんを掻き分けて、棘くんが狭いそこに収まった。
「いやいやそこは狭いだろ」
「おかか」
「気にしなくていいよ虎杖くん。棘くん狭いとこが落ち着くらしくて、よく割り込んでくるんだよね。この前も恵くんと話してた時に……」
「はぁ、はぁ、先輩……交替……」
話を遮って這いずるようにして木陰にやって来たのは野薔薇ちゃんだった。恵くんと真希ちゃんの組手はなかなかに白熱していて、私のほうが先に交替の時間になってしまったらしい。
「ごめん、もう行くね。野薔薇ちゃんはゆっくり休んで。行こ、棘くん」
「しゃけ」
青い空、白い雲。そしてここに投げ飛ばされる私も加わって。うん、今日も平和だ。
***
「なあ釘崎、スポドリちょーだい」
「は? 持ってないの?」
「空になっちゃって」
「ったく、仕方ないわね」
ほらよ、と投げられたペットボトルを受け取って、蓋を開けた。こういうの、気にするべきかもしれないけど、俺の周りには気にしない奴ばっかりで。先輩も気にしてなかったんだと思う。
でも、狗巻先輩は。
『すーじこ!』と明るい声が頭の中で再生される。意味はわからなかった。多分『もーらい!』とかそんな感じだと思う。
一見いつもと変わらなく見えた。けど、Vサインしながら俺を見る目は笑っていなくて。
きっとあれはそういうことだ、と恋愛ごとに鈍い俺でもわかるくらいには、あからさまだった。