棘くんといっしょ
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テレビに映るのはふわっふわの仔猫たち。よちよち歩いて揺れる猫じゃらしを追いかけている。
「か、かわいい〜!」
共有スペースのソファに体育座りして観ていたのは動物番組だ。画面から溢れんばかりの可愛さに、疲れた心が癒される。
「まあまあじゃね? 一番はパンダだろ」
かわいい、かわいい、しか言わない私の隣で、パンダくんが下唇(でいいのかな?)を突き出して、拗ねたように言った。たまにパンダくんはめんどくさい時がある。一体何と戦っているのか。
「パンダもかわいいけど、パンダくんでは癒されないかな」
ゴツしい、ちょっとおじさんっぽいとこあるし。癒し系とは言い難い。そして私のこの一言は、パンダくんのよくわからない闘志に火をつけてしまったらしく。
「お? 言ってくれるじゃねーの。じゃあ俺がパンダの本気ってやつを見せてやるよ」
立ち上がった彼は私の前へとやって来て両手を広げた。テレビが観たいのに白黒の体に阻まれて何も見えない。
どいてよ、と私が言いかけたところで、
「こんばんは。私はパンダックス。あなたの健康を守ります」
あまりに聞き覚えのあるフレーズに、どこのケアロボットだよ! と思わずツッコんでしまった。
「君にパンダとしてのプライドはないの⁈」
「一番になるために手段は選ばない主義だ。それよりいいのか。今なら俺抱き放題」
パンダくんがぽんと胸を叩くと、ふかっとやわらかそうな毛並みが揺れた。学長はとんでもないものをこの世に生み出したなと思う。
自分より大きなぬいぐるみをぎゅっとしてみたい。そんな夢を子どもの頃に抱いたのは確かで。
相手はパンダくんだけど。あの頃の叶わなかった夢が向こうからやって来た。
私はどうするか迷いに迷って、目の前のふかふかの毛並みに手を伸ばした。
***
鼻歌が聞こえた。棘くんの声だ。お風呂から上がってご機嫌なのが声のトーンでわかる。
「しゃけぇいくらこんぶ〜……高菜ぁ⁈」
何してるの⁈ と突然悲鳴が上がった。パタパタと駆けてくる音がして、強めに肩を連打される。もふもふの毛並みから顔を上げると、そこにはお風呂上がりのはずなのに、青い顔をした棘くんがいた。
「棘くん、おかえりー」
「おかっ、おかか! おかかぁ」
「浮気じゃないよ。パンダックスに癒してもらってたの」
「すじこ⁈」
「安心しろよ棘。俺は人間の女に興味ない」
そう、これは大きなぬいぐるみをぎゅっとしてるのと一緒。でも棘くんからしたらそうではないようで、そういう問題じゃない! と私とパンダくんは無理やり引き剥がされた。
「ああ、私の癒しが」
「やっぱパンダが一番だろ?」
「うん、見くびってた。恐るべしもふもふ」
「わかったならよし。じゃ、俺は寝る」
パンダくんにお礼とおやすみを言って振り向くと、ふくれっ面をした棘くんが待っていて。
「あの、棘くん?」
「おかか。こんぶすじこ」
俺というものがありながらパンダと浮気なんて、とまだ言っていた。
「ごめんごめん。でももふもふの誘惑には勝てなくて」
「いくら?」
「うーん。ちょっと疲れてる、かな」
「しゃけ」
棘くんがひとつ頷いて、バッと両手を広げる。
「明太子!」
私は棘マックス。どーんと来い!
胸を張って言う棘くんに、これは飛び込んだほうがいいのかなと考えていると、向こうから私に飛びついてきた。そのままぎゅーっと抱きしめられて、ちょっと苦しい。
「すじこ、こんぶ」
「うん。今度からはパンダくんじゃなくて棘くんにお願いするね」
「明太子?」
「すごく癒された。でももう少しこのままがいいな」
「しゃけ」
棘くんの背中に腕を回す。いつもより少し高い彼の体温と、石けんの香りが心地良い。
ごめんね、パンダくん。私の一番の癒しは断トツで棘くんだったみたいだ。
「か、かわいい〜!」
共有スペースのソファに体育座りして観ていたのは動物番組だ。画面から溢れんばかりの可愛さに、疲れた心が癒される。
「まあまあじゃね? 一番はパンダだろ」
かわいい、かわいい、しか言わない私の隣で、パンダくんが下唇(でいいのかな?)を突き出して、拗ねたように言った。たまにパンダくんはめんどくさい時がある。一体何と戦っているのか。
「パンダもかわいいけど、パンダくんでは癒されないかな」
ゴツしい、ちょっとおじさんっぽいとこあるし。癒し系とは言い難い。そして私のこの一言は、パンダくんのよくわからない闘志に火をつけてしまったらしく。
「お? 言ってくれるじゃねーの。じゃあ俺がパンダの本気ってやつを見せてやるよ」
立ち上がった彼は私の前へとやって来て両手を広げた。テレビが観たいのに白黒の体に阻まれて何も見えない。
どいてよ、と私が言いかけたところで、
「こんばんは。私はパンダックス。あなたの健康を守ります」
あまりに聞き覚えのあるフレーズに、どこのケアロボットだよ! と思わずツッコんでしまった。
「君にパンダとしてのプライドはないの⁈」
「一番になるために手段は選ばない主義だ。それよりいいのか。今なら俺抱き放題」
パンダくんがぽんと胸を叩くと、ふかっとやわらかそうな毛並みが揺れた。学長はとんでもないものをこの世に生み出したなと思う。
自分より大きなぬいぐるみをぎゅっとしてみたい。そんな夢を子どもの頃に抱いたのは確かで。
相手はパンダくんだけど。あの頃の叶わなかった夢が向こうからやって来た。
私はどうするか迷いに迷って、目の前のふかふかの毛並みに手を伸ばした。
***
鼻歌が聞こえた。棘くんの声だ。お風呂から上がってご機嫌なのが声のトーンでわかる。
「しゃけぇいくらこんぶ〜……高菜ぁ⁈」
何してるの⁈ と突然悲鳴が上がった。パタパタと駆けてくる音がして、強めに肩を連打される。もふもふの毛並みから顔を上げると、そこにはお風呂上がりのはずなのに、青い顔をした棘くんがいた。
「棘くん、おかえりー」
「おかっ、おかか! おかかぁ」
「浮気じゃないよ。パンダックスに癒してもらってたの」
「すじこ⁈」
「安心しろよ棘。俺は人間の女に興味ない」
そう、これは大きなぬいぐるみをぎゅっとしてるのと一緒。でも棘くんからしたらそうではないようで、そういう問題じゃない! と私とパンダくんは無理やり引き剥がされた。
「ああ、私の癒しが」
「やっぱパンダが一番だろ?」
「うん、見くびってた。恐るべしもふもふ」
「わかったならよし。じゃ、俺は寝る」
パンダくんにお礼とおやすみを言って振り向くと、ふくれっ面をした棘くんが待っていて。
「あの、棘くん?」
「おかか。こんぶすじこ」
俺というものがありながらパンダと浮気なんて、とまだ言っていた。
「ごめんごめん。でももふもふの誘惑には勝てなくて」
「いくら?」
「うーん。ちょっと疲れてる、かな」
「しゃけ」
棘くんがひとつ頷いて、バッと両手を広げる。
「明太子!」
私は棘マックス。どーんと来い!
胸を張って言う棘くんに、これは飛び込んだほうがいいのかなと考えていると、向こうから私に飛びついてきた。そのままぎゅーっと抱きしめられて、ちょっと苦しい。
「すじこ、こんぶ」
「うん。今度からはパンダくんじゃなくて棘くんにお願いするね」
「明太子?」
「すごく癒された。でももう少しこのままがいいな」
「しゃけ」
棘くんの背中に腕を回す。いつもより少し高い彼の体温と、石けんの香りが心地良い。
ごめんね、パンダくん。私の一番の癒しは断トツで棘くんだったみたいだ。