炎炎その他
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朝食でトーストが出たときは当たりの日だ。こんがり焼いたトーストにバターを塗って、その上にたっぷりとイチゴジャム。
サクッと音がしそうな頬張りっぷり。もぐもぐと動く小動物のような頬が可愛らしい。そしてその姿を後ろからこっそり覗く。タイミングよく後ろを通るのがコツだ。
「ふふっ」
齧られたトーストに見事な歯形がついている。誰よりもくっきりと漫画みたいな歯形がつくものだから、面白くてついつい見てしまうのだ。
「何を笑っている」
「いえ、失礼しました」
危ない危ない。バレるわけにはいかない。これは私だけのささやかな楽しみなのだから。
*
お風呂上がりにこっそりと冷凍庫から週に一度の『特別』を取り出す。誰もいない食堂で、小さな明かりだけを灯して、時間も時間だがカロリーなど気にしたら負けだ。
今週はバニラアイスを長方形の最中に挟んだ逸品。パリッとしたチョコレートも挟まれていて溶けたアイスでしなっとする最中との食感の違いが堪らない。
「何をしている」
「ひょわっ⁈」
突然部屋全体の電気が点いて危うくアイスを落とすところだった。落ちても三秒までなら、いや最中だしいくらでもセーフ、最中だし。
「団長、こんな時間にどうして……」
「水を飲みに来ただけだ。貴公こそ夜更けにそんなもの、虫歯になるぞ」
カロリーではなく虫歯を気にするところが団長らしいというか、年相応というか、すこしほっとする。
「ちゃんとあとで磨きます。一週間頑張った私へのご褒美なので止めても無駄ですからね」
「止めはしないがせめて髪を乾かしてからにしろ。子どもじゃないのだから、もうすこししっかりしてくれ。風邪を引かれては困る」
これくらいなら自然乾燥でもと思ったが、団長が頑なに私の手を掴んで離してくれないので渋々食べかけのアイスを渡した。
「食べちゃダメですよ。ダッシュで戻りますから」
言葉通り全速力で乾かして食堂に戻る。
「団長、食べましたね?」
「何のことだ?」
「しらばっくれないでくださいよ。ちょっと減ってるじゃないですか」
「さっきハウメアが……」
「嘘ですね。私にその手の嘘は通じませんよ。正直に言ってくれたらアイス半分あげます」
「……何故わかった」
何故ってそれは、最中に可愛らしい歯形がついていたからなんて。教えるわけにはいかないので「団長のことなら何でもわかりますよ」と約束のアイスを半分渡しながら言った。
*
ゆっくりと食い込む感覚に、背中に電撃が走るようだった。鋭い歯に噛み付かれた肩はじんじんと熱をもって痛むのに、脳は甘く痺れて麻痺していくのがわかる。
ぼんやりとした頭でトーストや最中アイスもこんな気持ちだったのかと考えて、いやいやそんな馬鹿なと頭を振る。
この感覚を知っているのは紛れもなく私一人だ。
流されてはいけないと思うのに、ショウの笑みや言葉に思考が止まる。考えることを止めてしまえば押し寄せるのは醜い願望だらけで恐ろしい。
緩い寝間着の首元を引っ張って彼は先程付けた歯形を指でなぞった。血が滲んでいるのかもしれない。ひりりとした痛みに掴みかけた快楽を思い出して目を伏せた。
「悪くないものだな。貴公はこれを見るのが好きなのだろう?」
「どうしてそれを……」
「何年の付き合いだと思っている。貴公の視線を辿ればさすがにわかる」
私からは見えないところに付けられた跡に、うっとりと熱が注がれる。
「一目で俺のものとわかるのは、存外悪くない」
その熱が彼の付けた跡以外に向けられるのを、心のどこかで待ち望んでいる私がいた。
サクッと音がしそうな頬張りっぷり。もぐもぐと動く小動物のような頬が可愛らしい。そしてその姿を後ろからこっそり覗く。タイミングよく後ろを通るのがコツだ。
「ふふっ」
齧られたトーストに見事な歯形がついている。誰よりもくっきりと漫画みたいな歯形がつくものだから、面白くてついつい見てしまうのだ。
「何を笑っている」
「いえ、失礼しました」
危ない危ない。バレるわけにはいかない。これは私だけのささやかな楽しみなのだから。
*
お風呂上がりにこっそりと冷凍庫から週に一度の『特別』を取り出す。誰もいない食堂で、小さな明かりだけを灯して、時間も時間だがカロリーなど気にしたら負けだ。
今週はバニラアイスを長方形の最中に挟んだ逸品。パリッとしたチョコレートも挟まれていて溶けたアイスでしなっとする最中との食感の違いが堪らない。
「何をしている」
「ひょわっ⁈」
突然部屋全体の電気が点いて危うくアイスを落とすところだった。落ちても三秒までなら、いや最中だしいくらでもセーフ、最中だし。
「団長、こんな時間にどうして……」
「水を飲みに来ただけだ。貴公こそ夜更けにそんなもの、虫歯になるぞ」
カロリーではなく虫歯を気にするところが団長らしいというか、年相応というか、すこしほっとする。
「ちゃんとあとで磨きます。一週間頑張った私へのご褒美なので止めても無駄ですからね」
「止めはしないがせめて髪を乾かしてからにしろ。子どもじゃないのだから、もうすこししっかりしてくれ。風邪を引かれては困る」
これくらいなら自然乾燥でもと思ったが、団長が頑なに私の手を掴んで離してくれないので渋々食べかけのアイスを渡した。
「食べちゃダメですよ。ダッシュで戻りますから」
言葉通り全速力で乾かして食堂に戻る。
「団長、食べましたね?」
「何のことだ?」
「しらばっくれないでくださいよ。ちょっと減ってるじゃないですか」
「さっきハウメアが……」
「嘘ですね。私にその手の嘘は通じませんよ。正直に言ってくれたらアイス半分あげます」
「……何故わかった」
何故ってそれは、最中に可愛らしい歯形がついていたからなんて。教えるわけにはいかないので「団長のことなら何でもわかりますよ」と約束のアイスを半分渡しながら言った。
*
ゆっくりと食い込む感覚に、背中に電撃が走るようだった。鋭い歯に噛み付かれた肩はじんじんと熱をもって痛むのに、脳は甘く痺れて麻痺していくのがわかる。
ぼんやりとした頭でトーストや最中アイスもこんな気持ちだったのかと考えて、いやいやそんな馬鹿なと頭を振る。
この感覚を知っているのは紛れもなく私一人だ。
流されてはいけないと思うのに、ショウの笑みや言葉に思考が止まる。考えることを止めてしまえば押し寄せるのは醜い願望だらけで恐ろしい。
緩い寝間着の首元を引っ張って彼は先程付けた歯形を指でなぞった。血が滲んでいるのかもしれない。ひりりとした痛みに掴みかけた快楽を思い出して目を伏せた。
「悪くないものだな。貴公はこれを見るのが好きなのだろう?」
「どうしてそれを……」
「何年の付き合いだと思っている。貴公の視線を辿ればさすがにわかる」
私からは見えないところに付けられた跡に、うっとりと熱が注がれる。
「一目で俺のものとわかるのは、存外悪くない」
その熱が彼の付けた跡以外に向けられるのを、心のどこかで待ち望んでいる私がいた。