炎炎その他
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尊敬している人がいる。
人一倍正義感が強くて、仕事ができて、かっこよくて、優しくて。前に立つ大きな背中に少しでも近付きたくて、毎日必死に追いかける。
私もいつか、あんな風になれたら。隣に並び立てるくらい強くなれたら。
そんな淡い憧れを抱くその人に、私はとんでもないことを言ってしまった。「お兄ちゃん」と。
言ってから慌てて右手で口を覆った。小声だったし、滝義先輩には聞こえてないかもしれない。恐る恐る様子を窺うと面食らった顔をした先輩が固まっていた。
「あの、滝義先輩……?」
「はっ、すまない。君がそういう間違いをするのが珍しくて少し驚いただけだ」
がっつり聞かれていた。穴があったら入りたい。滝義先輩に見合うよう頑張ってきたのに、よりにもよって本人の目の前でやらかしてしまった。先輩の前では完璧な後輩でありたかったのに。
「すみません、できれば忘れてください」
「謝るようなことじゃないだろ。誰だって間違えることくらいあるさ。それにしても君、お兄さんがいたんだな」
「いえ、その……一人っ子です」
キョトンとする先輩に「一人っ子なんです」と言い直す。
「一人なので兄弟に憧れてて、滝義先輩みたいなお兄ちゃんがいたらな、と思っていたらつい口に出てしまいました」
言いながら顔に熱が集まっていくのがわかる。何だこの羞恥プレイ。
しばらく静かに聞いていた先輩はふむ、と考え込むように腕を組み直した。
「君にとって俺は兄みたいな存在なのか」
「そう、ですね。頼りになる方だなと」
「そうか。今まで全く意識されてなかった訳か。悪いが俺は君にお兄ちゃんと呼ばれるのはごめんだ」
「それは当然です。悪いのは私で。嫌な思いをさせて本当に申し訳ありま……」
「兄妹だと結婚できないからな」
下げかけた頭に思いもよらぬ言葉が降ってきた。聞き間違いかと顔を上げると滝義先輩は悪戯っぽく笑っていて、私の顔を見るなり「少しは意識してくれたみたいだな」と心なしか嬉しそうに言った。
人一倍正義感が強くて、仕事ができて、かっこよくて、優しくて。前に立つ大きな背中に少しでも近付きたくて、毎日必死に追いかける。
私もいつか、あんな風になれたら。隣に並び立てるくらい強くなれたら。
そんな淡い憧れを抱くその人に、私はとんでもないことを言ってしまった。「お兄ちゃん」と。
言ってから慌てて右手で口を覆った。小声だったし、滝義先輩には聞こえてないかもしれない。恐る恐る様子を窺うと面食らった顔をした先輩が固まっていた。
「あの、滝義先輩……?」
「はっ、すまない。君がそういう間違いをするのが珍しくて少し驚いただけだ」
がっつり聞かれていた。穴があったら入りたい。滝義先輩に見合うよう頑張ってきたのに、よりにもよって本人の目の前でやらかしてしまった。先輩の前では完璧な後輩でありたかったのに。
「すみません、できれば忘れてください」
「謝るようなことじゃないだろ。誰だって間違えることくらいあるさ。それにしても君、お兄さんがいたんだな」
「いえ、その……一人っ子です」
キョトンとする先輩に「一人っ子なんです」と言い直す。
「一人なので兄弟に憧れてて、滝義先輩みたいなお兄ちゃんがいたらな、と思っていたらつい口に出てしまいました」
言いながら顔に熱が集まっていくのがわかる。何だこの羞恥プレイ。
しばらく静かに聞いていた先輩はふむ、と考え込むように腕を組み直した。
「君にとって俺は兄みたいな存在なのか」
「そう、ですね。頼りになる方だなと」
「そうか。今まで全く意識されてなかった訳か。悪いが俺は君にお兄ちゃんと呼ばれるのはごめんだ」
「それは当然です。悪いのは私で。嫌な思いをさせて本当に申し訳ありま……」
「兄妹だと結婚できないからな」
下げかけた頭に思いもよらぬ言葉が降ってきた。聞き間違いかと顔を上げると滝義先輩は悪戯っぽく笑っていて、私の顔を見るなり「少しは意識してくれたみたいだな」と心なしか嬉しそうに言った。
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