灰島重工
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あの日もらったクッキーのことを、今も、時々思い出す。
彼女が「よかったら」と差し出してきた、いかにも手作りですといった装いのクッキーだ。甘い香りを漂わせながら彼女は作りすぎてしまったのだと笑って話し、俺は適当に流して受け取ったそれをデスクの引き出しにしまった。しまって、どうしたんだったか。全く味を思い出せないから食べていないのは確実だ。
今日もまた彼女が甘い香りを纏って、俺の前を横切っていく。遅れて届いたその香りはいつかのものよりずっと甘かった。彼女はあの日と同じように可愛らしくラッピングされた、手作り感のあるクッキーを持っていて。
「優一郎くん、クッキー焼いてきたよ」
「やわらかいやつか?」
「今日はスノーボールクッキーだから前のよりは硬くないかな」
「そうか、ならいい」
彼女の手作りクッキーが黒野の手に渡る。いつしか彼女の笑顔もクッキーも、全部、あいつのところに行ってしまって、彼女から俺に与えられるものは何一つとしてなくなった。
俺は彼女の楽しげな横顔を眺めながら、あの日のクッキーは一体どんな味がしたのだろうか、と無意味なことを考えていた。
彼女が「よかったら」と差し出してきた、いかにも手作りですといった装いのクッキーだ。甘い香りを漂わせながら彼女は作りすぎてしまったのだと笑って話し、俺は適当に流して受け取ったそれをデスクの引き出しにしまった。しまって、どうしたんだったか。全く味を思い出せないから食べていないのは確実だ。
今日もまた彼女が甘い香りを纏って、俺の前を横切っていく。遅れて届いたその香りはいつかのものよりずっと甘かった。彼女はあの日と同じように可愛らしくラッピングされた、手作り感のあるクッキーを持っていて。
「優一郎くん、クッキー焼いてきたよ」
「やわらかいやつか?」
「今日はスノーボールクッキーだから前のよりは硬くないかな」
「そうか、ならいい」
彼女の手作りクッキーが黒野の手に渡る。いつしか彼女の笑顔もクッキーも、全部、あいつのところに行ってしまって、彼女から俺に与えられるものは何一つとしてなくなった。
俺は彼女の楽しげな横顔を眺めながら、あの日のクッキーは一体どんな味がしたのだろうか、と無意味なことを考えていた。